3
納品も無事終わり、並行して行政への渡航申請も受理され、
翌月、まだまだ雪が降る2月頭、賢一は故郷にいた。
祝日、有給と合わせて約10日休みをとり親戚とも状況を確認。
捜索は【失踪者調査対策研究機関】の支部に申請依頼してくれていたため、
なんとなく普段母が辿りそうな場所を一通り見て回る。
そこまでアクティブではない母、丸一日を使い、
よく会っていたと思われる限られた友人宅を訪れたり、
当時の話を伺いいそうな場所を見て回ったりしたが結局一日で回り切ってしまった。
久々に帰った実家はどこか懐かしいながらも、
他人の家という相反する感覚を賢一に感じさせた。
部屋の景色を見渡しながらも思考は失踪者について巡らす。
【失踪者調査対策研究機関】での公式な発表でも、
失踪者の原因究明は難航しており、
また失踪してから見つかった者はいない。
一部のメディアやSNSでは某国に拉致されたとか、
病原体研究機関に人体実験用として秘密裏に誘拐されたなんていう、
マユツバな情報が飛び交っていたが、
どれも信憑性がなく裏付けもないため、
真相は闇の中のままである。
元自分の部屋で今は物置の部屋から、
布団を引っ張り出し横になると疲れてたのか倒れる様に微睡んだ。
翌日、特にやれることもなく、久々に故郷に戻ったこともあり、
地元の友人孝純と呑む約束をしていた。
「久しぶりだなサトケン!連絡もらって、まじかよ。と思ったが、災難だったな。」
「まぁな。幸い仕事もひと段落だったこともあるし探しには来れたんだけどさ。
1日で心当たりなんて回り切ってしまったよ。
そもそも失踪してから見つかった人っていないんだよな。。。
個人で探すにしても限界があるし。
まだ1週間くらいは時間があるんだが、もう手詰まりでな。」
「悩んでも見つかるものじゃないしお前の母親とは面識あるから、俺も心当たり当たってみるよ。
地元連中にも声かけておく。なんかわかるかもしれないからな。」
「ははは。助かるよ。ありがとう。」
なんだか手間をかけてしまったと苦笑しつつも、
「気にすんな。とりあえず今日くらいはまぁ呑め。久々だし話したいこともある。
そうそう、この間・・・・・・」
10年来だからこその歯に衣着せぬ話し方。
砕けられる感覚に心地よさを感じつつ、
昔話から近況まで耐えることなく語り明かした。