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2020年、ある日現れた病原体が世界各国を蹂躙。
老若男女問わず世界では防ぎ様の無い感染爆発がおきていた。
行政は感染拡大を食い止めるべく、世界規模で終わりの見えないロックダウンを実施。
情報・通信以外の物理的な流通は大半が止まり、
民間人は家庭で怯えながら日々を過ごすことを余儀なくされた。
経済では失業者が溢れ、
人口の多い主要都市では路上生活者が増え続け、
これが病原体感染に拍車をかけることが社会問題に。
更に情勢が回らず経済的にも世界は衰退し始め、
治安のいい国ですら、自殺、窃盗、恐喝etc…犯罪が蔓延。
また路上生活者を増やし感染を増やす。
治療法も確立されず、
四面楚歌の負のスパイラルに人々は疲弊し悪化の一途をたどる。
病原体発生から約一年後、不可思議な事件が多発し始める。
日本の失踪者が急速に増え始め、
年間約87,000人だった失踪者が月平均にまで上昇。
世界各国でも同様のペースで失踪者が増えていることが判明。
日本国民に対し、毎月100人に一人が失踪しているというペースである。
原因は不明。年齢性別問わず発生しており自体を重く見た政府は、
【失踪者調査対策研究機関】を設立し、全国民を対象に調査を開始する。
会社員として企業に勤める、
佐藤賢一(37歳)は日々の業務に忙殺されながら、
世界の危機的状況ですら他人事の様に毎日を送っていた。
「第二課の田中さんが失踪ねぇ。。。。」
今月に入って5人目。
中小企業でもちょっと大きめの企業に勤める賢一の周りでも、
失踪者がじわりと散見されていた。
顔見知り程度の同僚たちが失踪者となり、
明日は我が身。と薄っすらと感じながらも、
それでもどこか他人事。そんな感覚だった。
【多忙な業務が嫌で失踪している人もいるのかもな。】
ブラックでも、ホワイトでも無い業務量。人数がいれば一部にはしわ寄せが来る人もいる。
賢一の中ではなんとなく失踪に便乗してる人もいるかもなと、
邪推する程度だった。
ある日の夕方そろそろ帰宅するかとスマホに目をやる。
故郷で暮らしている母が失踪。
親戚からの一報である。