その2
僕は広い校舎内を、迷うことなく進み、会場に無事にたどり着くことができた。
もうすでに、なかなかの人数が集まっていた。会場内は緊張をしている人も多くシーンとした雰囲気かと予想していたのだが、そんなことはなくガヤガヤとしていて、全員が、というわけでもないが大半の人は笑顔を浮かべながら楽しそうに会話していた。
どうやら知り合いと話しているのだろうか。数人が固まって話をしている様子が多く見受けられた。僕は知り合いが一人もいないため現在人間観察に徹している最中だ。
僕は観察中に一人の女の子を発見した。しかも彼女は昔に出会った女の子に雰囲気が似ていて、余計に僕は気になってしまった。
それから、一人でいる彼女を観察していた僕であったが、どうにも確かめたい欲が出てしまい、気力を振り絞って声をかけに行った。
「すいません、お一人ですか?」
僕は声のかけ方に後悔してしまった。これでは完全にナンパじゃないか。だが、そんな心配をよそに彼女は普通に応えてくれた。
「え?あぁ一人です。って慎くん?うそ、久しぶり!ずっと会いたかったんだから。」
案の定、彼女はあの時に公園で結婚を誓いあった人だった。僕は体のうちからこみあげてくる嬉しさを抑えながら返事を返した。
「あ、やっぱり真澄だったんだね。雰囲気がどことなく似ていたからダメもとで話しかけてみたんだけど、間違ってなくてよかったぁ。」
僕は嘘偽りない本心を彼女、西渕 真澄に話した。
「え、そんな雰囲気でてた?自分じゃ分からないや。実はね、私もオリエンテーションに来た時に慎くんに似た凄く大人びたイケメンを見かけて、もしかしたら、とは思ってたんだけどやっぱり本人だったんだね。私また慎くんの身近にいれるなんて嬉しいよ。これからは二人で過ごそうね?」
まじかぁ、オリエンテーションの時に見られてたのか。この学校に興味津々で人なんて気にしてなかったけど、彼女がいたなんてビックリだ。
っといつの間にか周りは静かになっていて、僕たちが注目されてしまっていた。どうやら興奮してたため自然と声が大きくなってたらしい。隣の彼女に目を向けると、彼女も恥ずかしかったのか赤く頬を染めてうつむいていた。
それに大学の先生方もぞろぞろと入室してきた。僕は声のボリュームを落として静かに彼女に耳打ちをした。
「積もる話もあるだろうし、もしよければだけど式が終わったら僕の家に遊びに来ない?」
下心の欠片もなく僕は言った。
「うん、分かった!楽しみだなぁ。」
彼女は昔と変わらない満面の笑みで応えてくれた。
「良かったぁ、断られたらどうしようかと思ってたよ。」
「あはは、慎くんの誘いを私が断わるわけないよぉ」
僕らは、大学の先生方の話をしり目に、こそこそ話続けた。
そして、気づけば式は終わっていた。そして外に出ると、サークル勧誘があちこちで行われていた。あいにくと、僕は興味もなかったし所属する気もなかった。
ちらっと、彼女を見たが彼女もこちらを見ていたらしく、目があった彼女は慌てて顔を背けてしまった。
僕は彼女のことを小動物みたいで可愛いな、と思ってしまったのと同時に、そんな僕と目が合うのが嫌なのかと思ったが、よく見ると彼女の耳は真っ赤になっており、照れて顔を背けただけだとわかった。