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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

雨の海

作者: 榊淑

 淡い空から、一滴、雨粒が零れ落ちた。少女の瞳からも、涙が伝い落ちた。


 地上に降り注ぐ悲しみ達は、川を作り、流れ出す。鼠色に汚濁したそれは、少女の心情のようだった。


 心の中が空っぽになって、何も考えられなくなる。ただ苦しくて、脳味噌が溢れてしまいそうになる。


 光を失った少女は、無限に続く闇に、一人置き去りにされていた。


 あの日何を成せば、貴方を救うことができたのだろうか。少女の中には、そんな気持ちが渦巻いていた。


 空に集いし黒雲は、激しい嵐を巻き起こす。硝子越しに眺める外界は、酷く荒れていた。


 かすれた記憶に僅かに残っているのは、懐かしい人の柔らかな微笑みだけ。


 あの素晴らしい日々が色褪せる前に。少女は残酷なまでに美しく輝く白銀を、自らに突き立てた。


 その刹那、辺りに鮮やかな赤が散った。少女の肌を裂いた刃は、鈍い紅を纏い、禍々しく光っている。


 この雨が上がる頃には、少女の苦悩は全て洗い流されているだろう。

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