宗方孫一と大室奈々美
■ 翌日・昼・千馬邸前
芽絵子「孫一あなたの弱点を教えて」
孫一 「塩に弱い この間の宴会で酒のあてにしようとして消えかけたぞ」
芽絵子「んなナメクジレベルの話はしてない」
間。芽絵子は疑惑の目で孫一を見る。
芽絵子「取引をしましょう」
孫一 「…きいてやらんことはない」
芽絵子「あなた本当は記憶が戻ってるんじゃない?」
孫一 「根拠を示せ」
芽絵子「強いていうなら大室奈々美の名前だけ思い出すなんてむしが良すぎるから」
孫一 「要するに勘か」
芽絵子「交渉材料として残してるんでしょ? あたしが大室奈々美を救うと約束したらあなたはそのカードを切る?」
間。
孫一 「はは! 全てお見通しか! 正直記憶に関しては未だ曖昧な部分が多い だがおそらく貴様の欲しい情報は持っている」
芽絵子「やっぱり…」
孫一 「約束だぞ芽絵子 力を貸してくれ」
■ 翌日・昼・警察署
孫一(人)「まさか昨日の今日で訪ねてくるとは思ってもみませんでしたよ…」
芽絵子「昨日の言葉は訂正させてください 恋なんて言葉でお二人の関係を片付けようとしたことをお許しください」
孫一(人)「ほう…」
芽絵子「生霊の孫一が全部喋ってくれました」
孫一(人)「ふーん何をですか?」
芽絵子「孫一さんの不正入学に関してです」
孫一の顔が青ざめる。
孫一(人)「誰からきいた!?」
芽絵子の眼前に孫一が迫る。
芽絵子「孫一さん本人からです」
孫一(人)「嘘だそんな話信じられるか!」
芽絵子「でも本来お二人しから知らないはずですよね?」
孫一(人)「ーーっ! あれは大室さんが勝手に…っ! ぼくは無関係だ!」
芽絵子「…しかし彼女を救い出したい」
孫一(人)「……」
芽絵子「協力してやるから全部喋れっつってんだよ!」
孫一は力なく椅子に座り喋り始める。
孫一(人)「ぼくが大室さんと再会したのは 警部補としてここに配属された後だった」
× × ×
※ 回想 奈々美と孫一の再会
満開の桜の木の下で。
奈々美「久しぶり宗方くん おぼえてるわたし大室奈々美」
孫一(人)(M)「十年ぶりに会う大室さんは恐ろしいまでに美しくなっていました」
奈々美「ねえ宗方くん おかしいと思わなかった?」
孫一(人)「え?」
奈々美「どうしてあなたがT大学に受かったのか 本当のことを教えてあげようか?」
孫一(人)「…本当のこと?」
奈々美「あなたの受験票盗んだのわたし」
孫一(人)「……」
奈々美「それで宗方くんの代わりに試験を受けた 結果は見事合格 会心の出来だったわ」
孫一(人)「…うそ だ」
奈々美「あー わたしが勝手にやったことだと思ってる? でもそれで大学に行って公務員試験まで受かってるんだから同罪よね?」
孫一(人)は膝から崩れ落ちる。
奈々美「宗方くんわたし今ね ヤクザの愛人やってるの」
孫一(人)「…え?」
奈々美「今日あなたに会ったのは一応釘を刺しておこうと思って 万が一この事実が明るみに出たらお互いのためにならないでしょう? キャリアさん」
※ 回想 終了
× × ×
孫一(人)「ぼくが大学に入れたのは彼女のおかげだったんです…」
芽絵子「なんのためにそんなことを…」
孫一(人)「…さてね …気まぐれじゃないですか? もしくは暴力団の愛人として未来の官僚の弱味を握っていたかったか…」
芽絵子「…孫一は奈々美さんを助けたいといっています」
孫一(人)「あなたの妄想には付き合いきれない それに大室さんを救うということはぼくの人生を棒に振って彼女を逮捕するということだ …誰も幸せにはならない」
芽絵子「なにうじうじしてんのよ! 本心は違うでしょ!?助けたいっていいなさい!」
孫一(人)「大室さん本人がいってたんです …もう関わらないで欲しいと」
芽絵子「…あんた生き霊の方が全然男前だわ」