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幽霊不動産『ホーンテッド』  作者: まいずみスミノフ
4/11

悪徳幽霊不動産屋と孫一の正体

■数日後・夜・とある建設中のマンション前

 芽絵子と孫一、外回りからの帰り道。

芽絵子「そういうわけだからあんたは明日から店舗業務に移ってもらう あたしとのコンビも今日までーーってきいてる? 孫一?」

孫一 「…芽絵子見ろ この間の霊だ」

 前方建設途中のマンションの前で幽霊3とガラの悪い中年男・地上げ屋が立っていた。

孫一 「一緒にいる男は何者だ? カタギには見えんな」

芽絵子「嫌な予感がする…追いかけましょう」

 男たちがマンションの中に入って行く。

 芽絵子そのあとを追いかける。

孫一 「待て芽絵子!」

  ×  ×  ×

 マンションの中は暗くひと気がない。

 地上げ屋と霊3が薄明かりの下で話す。

地上げ屋「元々ここは処刑場の跡地でお前のように未練を持った連中が地下に埋められとる おれはどーしても奴らを弔ってやりたいんやけど一旦工事を中止させへんとできんやろ? ほやから自分の不思議な力でな ちーっとばかし業者を脅かしてくれへんか?」

霊3 「そうだったんえすか… ぼくで良ければ力になります!」

地上げ屋「それが済んだら女見つけて地縛させたる なんぼでも怨み晴らしたらええ」

霊3 「はい!」

芽絵子「…思った通り」

孫一 「なんだ?」

芽絵子「先輩から聞かされたことがある… 

一部同業に霊を使って悪どく儲けている連中がいるって アイツがそうよ!」

地上げ屋「しっかし幽霊不動産『ホーンテッド』だったか?

芽絵子「ーーっ!」

地上げ屋「聞く所にその女ゼニのことしか頭にないんやろうなあ 悪どい連中やでホンマ」

芽絵子「聞き捨てならないわね!」

 芽絵子は二人の前に躍り出る。

芽絵子「ゼニのことしか頭にないのはアンタの方でっしゃろ!」

霊3 「こ この人ですよ!」

芽絵子「あなたも利用されているだけだって気づきなさい! 霊障を使って地上げをする悪どい連中よ! 処刑場の跡地なんて嘘八百なんだから!」

霊3 「…え?」

芽絵子「上に報告させてもらいます! 業務停止命令なんて生ぬるい処罰で済むと思わないことね!」

地上げ屋「えらい威勢のいいお嬢ちゃんやな」

霊3 「あの人がいってることって本当なんですか…?」

 霊3に詰め寄られて地上げ屋は少し考える。

地上げ屋「ああほんまや」

霊3 「そんな…」

地上げ屋「だがあいつらはお前の怨みを晴らさせてくれへんぞ 一方でおれらはこの仕事さえ終わればお前の力になる 単純なギブアンドテイクやないか」

 霊3考える。そして

霊3 「…約束ですよ」

地上げ屋「モチのロンや! 先生!」

 孫一と芽絵子は小声で会話をする。

孫一 (おいメスヤギ…貴様はアホなのか)

芽絵子(だって! だって だって!)

地上げ屋「そういうわけやさかい お嬢ちゃんおっちゃんと楽しことしよかー」

芽絵子「馬鹿も休み休み言いなさい!」

 芽絵子は逃げようとする。

地上げ屋「先生! あの女を逃したら面倒ですよ!」

霊3 「はい!」

 霊3のポルターガイストで資材が飛んできて芽絵子の行く手を阻む。

芽絵子「きゃああああああ」

孫一 「芽絵子! 今助ける!」

芽絵子「駄目! 無闇に力を使えば取り返しのつかないことになる! ーーあなた! 今からでも遅くない そんな男と手を組むのはやめなさい!」

霊3「ぼくの復讐に協力してくれますか?」

芽絵子「…それは できない」

 ビルの一部が弾け飛ぶ。

地上げ屋「先生 あんまり壊さへん方向で…」

芽絵子「ーーぐっ!」

 芽絵子の体が持ち上がり首が締まる。

霊3「もう一度尋ねます 不動産屋さん ぼくの復讐に協力してください 協力しろ!」

芽絵子「でき… ない…」

霊3 「そうですか… さようなら」

 直後バサッと芽絵子が地面に落ちる。

 激しくえづく。

芽絵子「…はあ …はあ だから言ったのに」

孫一 「…消えた?」

 そこに霊3の姿はなかった。

芽絵子「生きている時と違って霊は回復する手段を持たない …単純な話よ 電池が無くなったから消えた」

孫一 「……」

芽絵子「消滅と成仏との違いはわからない だけど力尽きて消えていくのと満足して消えていくのでは大きな違いだわ」

地上げ屋「…去んでしもたか 中々見込みのあるやつだったんやけどなあ」

芽絵子「どうするのまだやるつもり?」

地上げ屋「二ぃ対一でやりあうほど愚かもんやない」

芽絵子「そう」

地上げ屋「ほなお嬢ちゃんおれはガラかわす」

 直後一台のハイエースが乗り込んでくる。

 ドアが開いた瞬間地上げ屋が押し込まれる。

 助手席の窓が開いて二十代後半ぐらいの美女が現れる。

 孫一が目を見開く。

孫一 「大室奈々おおむろななみ…」

奈々美「今回は見逃してあげるけど次邪魔したらあなたにも補填してもらうことになる」

 自動車は急発進する。

 残された芽絵子はしばし呆然としていた。

芽絵子「なにが… 起こ… って…孫一?」

孫一 「芽絵子 さようならだ」

芽絵子「え?」


■ 同日・深夜・不動産屋

芽絵子「ちょっと先輩きいてくださいよ!」

  ×  ×  ×

芽絵子「というわけで孫一が車を追いかけていなくなっちゃったんです!」

浅倉 「おそらくそれは千馬せんば組だ」

芽絵子「せんばぐみ…?」

浅倉 「この辺りでは有名な武闘派ヤクザだ  組長の千馬鉄二せんば てつじを筆頭に表向きは貿易会社を経営している 以前から一部幽霊不動産屋と結託しているという噂はあったんだ ーーだから孫一くんは千馬組の本邸にいるはずだよ」

芽絵子「本邸…」

浅倉 「とりあえず芽絵子くん よく頑張ったね 怖かっただろう」

 芽絵子泣きそうになるのをこらえる。

浅倉 「でもおてんばもほどほどにしないと死ぬよ?」

芽絵子「ごめんなさい…」

浅倉 「しかしこの場に孫一くんがいないのはある意味好都合かな」

芽絵子「?」

浅倉 「ぼくの方で独自に調べたんだけど 奇しくも彼のいっていたことは本当のようだ 結論から言おう 宗方孫一という男は生きている ーーつまり『生霊』だ」

 間。

芽絵子「…は?」

浅倉 「あこれ孫一くんについての調査書ね 目え通しておいて じゃあ今日はお疲れ様」

芽絵子「ちょっと待ってください! えと えーっと 頭が追いつかない つまりあたしはどうしたら良いんですか?」

浅倉 「いつもどおり霊にとって最良の地縛物件を紹介してやればいい」

芽絵子「でも生霊って! 生霊って…なんですか?」

浅倉 「強い感情が勝手に抜け出して一人歩きしている状態だ」

芽絵子「…分身のようなものですか?」

浅倉 「ああ だが記憶をなくす理由がわからない 本来生霊は明確な目的を持っているはずだ 記憶を失えば目的を失ってしまう」

芽絵子「つまり孫一には記憶をなくす理由があった? そういえばあいつ女を見て大室奈々美って言ってました…」

浅倉 「知らない名だな 調べておこう」

芽絵子「お願いします」

浅倉 「いずれにせよこの事実を伝えるかどうかは芽絵子くんきみに任せるよ」

芽絵子「…はい」



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