表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/10

第六話 「山小屋密室殺人事件」「ルシフィール」「竜神の庭」仲間外れはどれ?




 ここに三つのタイトルがあります。仲間外れはどれでしょうか?

 苦し紛れじゃないよ。今回はそういう話なんだ。本当なんだ!


 駄目エッセイはじまりますよ。





 最初に絵を描いたのは、いつだったか覚えていますか?

 保育園か幼稚園に通っていた頃ですか。もっと前ですか。ただ手を動かしてぐちゃぐちゃグチャ~っと紙に模様を描く抽象画的なアレではなく、具体的に何かを描こうと意識して絵を描く事は誰でも幼いころから経験していると思います。

 私は絵を描くのが昔から好きだったので図画工作の授業が毎回とても楽しみでした。ただ……私、もの凄いうっかりさんなので、しょっちゅう道具を忘れて先生に怒られていました!それなのに「楽しかった!」という思い出しか残っておりません。三歩くと他の事に気を取られて色々忘れる癖はこの頃から直っていないようです。

 でも気楽だしいいか!


 では初めて物語を書いたのは何歳だったか覚えていますか?

 私はちっちゃな頃から夢想家だったのですが当時は読専だったので、小学校五年生の国語の授業で四人組のグループを作り仲間と相談してオリジナル小説を作りましょう。というのがありまして、それが小説執筆初体験でした。子供の自由な発想力を伸ばす為の授業。それがまさか……こんなことになるとは誰も想像しなかった、遠い昔のお話しです。話を授業中に戻します。

 どうやってグループが決められたのかは、もう追憶の彼方ですが……私達はそのクラスで一番の読書家であるシマさんという女の子をゲットしました。これで安泰です。我々は勝利を確信しました。一人の力でこの課題を乗り切ろうというダメな集団が結成されたのです。


 さあ……地獄の時間の始まりです。





「ねえねえどんなお話しにする?」「全然思いつかないわ~」「私出来るだけ簡単に書けるやつがいいなあ」机同士をくっつけて相談を始めます。授業中に堂々とお喋りできるので女の子達は楽しそうです。私も楽しいです。ニコニコ笑いながら、「シマさんはどんなお話しが書きたいの?」そう言って水を向けると……

「そうね。私ならせっかくだしミステリーが書きたいと思う」サラリとハードルが高い事をおっしゃいます。

 私以外の二人の頭上に「?」マークがポコッと浮かびます。小学校の図書館には、高学年向けの本なら怪盗ルパンシリーズくらいしかありませんでした。少年探偵団シリーズは、確か置いて無かったと思います。なのにシマさんは「私、ミステリー小説が好きだから書くならミステリーモノがいい」と静かに答えたのです。


「ミステリーかぁ…私はあんまり読まないなあ。苦手なんだよね」


 母親が図書館から借りて来た小説をたまに拝借して読んでいた私は難色を示します。絶対無理だわ~と思ったのです。引き気味の私に対してシマさんは目を輝かせながら大丈夫だと言います。「私、赤川次●の本沢山持っているの!だから参考の為に読んでみる?面白いよ!」

 すっごく優しいです。フレンドリーです。しかし……私達がまともに話したのは、今日が初めてです。ちょっとイメージと……いや大分イメージと違うぞシマさん。そんな突っ込みを入れつつ、放課後はシマさんのお家にお邪魔しました。

 初めて入ったシマさんのお部屋は想像通りでした。

 本棚の一番目立つ位置に赤川先生のご本が入っております。漫画も少しありますが、圧倒的に文章系の比率が高こうございます。おまけに整理整頓が行き届いています。塵一つ落ちていません!頭が良い女子のお手本のようなお部屋でした。


「シマさん一人っ子?自分だけの部屋があるっていいね」

 当時私は三つ年下の弟と同じ部屋だったので、それが凄く羨ましかったのです。おまけに本棚がある!我が家では本棚はリビングです。二人部屋に机二つに洋服ダンス。それだけで一杯です。だから本を読むときは机についている本棚にあるものを読むか、リビングまで行くかしかない。でもここは、自分だけの本棚がある。羨ましいったらありません。

「私?上に兄貴がいるよ。年が少し離れているから一緒の部屋じゃマズいでしょ」

 シマさんは笑いながら、まあお茶でも飲みなよと麦茶を出してくれます。よそのお家の麦茶。なんか家のとは微妙に味が違ってて、当時私はそれを楽しみに色んな家に行ったものです。うん美味しい!ここの家は砂糖が入っていないバージョンだ。

 さあ、お茶も飲んだし相談の再会です。

 途中からシマさんによる赤川先生を褒めたたえる会に変わったことはもうどーでもいいです。結論は出たのですから。

 起承転結。物語の基本を実際にお話しを作ることによって理解しよう。という授業内容だったはずです。なのに何故かミステリー小説を書く事になったミステリー……なんて言っている場合じゃなかった!

 シマさんがさらっと「大まかなストーリは私が考えたから後は、それぞれのパートを書けば大丈夫よ」とおっしゃいます。

 おお!頼もしい!!じゃなくて……え!主人公は、ちょっと小金持ちのおっさん!?富豪なの?なにそれカッコイイ!!おっさんはいいよね。おっさんは好きよ私。

 私のおツムは、当時も出来がイマイチでしたわ。あっと言う間にシマさんの考えたストーリに引き込まれます。他二名も一緒に引きずりこまれます。小学校五年生が考えたにしてはストーリの破綻がそれほど大きくなくて、良くできたお話しだと思われます。これはきっと面白いお話しになると全員が思います。じゃあこれで行ってみるかと全員が頷きます。


「タイトルは山小屋密室殺人事件に決定しました!」


シマさんの声が高らかに勝利宣言を告げました。

こうして私達は小学校五年生にしてミステリー小説を書く事になったのでした。


 あとはそれぞれ分担を決めて、文章に仕上げればオッケーです。役割分担も当然シマさんが決めます。

 ちょっと待て!何故私の担当が謎解きなんだ!!

 流石に焦った私がその場面こそシマさんにお願したいんだけど!と抗議の声を上げるも、「大丈夫よ。私も一緒に考えるからね?」などと優しい言葉で封じられてしまいました。そこまで言われてゴネ続けることが出来ない私です。最初シマさんに丸投げして楽しようとしたツケがばっちり戻ってきただけです。トホホ。

 問題はシマさん以外全員が文章を書いたことが一度もない、(読書感想文とかは別な!)素人だということです。シマさんは将来は小説家になりたいのと、はにかみながら教えてくれた凄腕です。マジで小説家になるんじゃないかと思ってました。高校生の頃までは多少交流があったのですが、その後はちょっと疎遠になって今はどうしているのか……分かりません。

 それは置いておいて……想像以上に素人が小説を書くというのは大変でした。主にシマさんが。

 全員が少し書いては「これ大丈夫?これで分かると思う?」「わーん!全然思いつかないよ~シマさん助けて!!」「ねえ!窓に鉄格子なんてついてたら、絶対抜け出せないじゃん!あ!そうだ、関節外せるってことにしちゃってもいいかな!?」などなど。

 阿鼻叫喚地獄です。それでもシマさんは一度も怒りませんでした。

 すっごく丁寧に私達の面倒を見つつ、それぞれのパートを上手く繋げる作業までしてくれました。

 マジ天使。いや大仏如来並みの慈悲深さです。それでも……私的には地獄の閻魔大王並みに恐ろしい存在に思えました。

 そうです。シマさんがこよなく愛するミステリーその醍醐味は謎解きなのです!その一番大事な部分を任された私の責任は重大です。

 一切の妥協は許さないわという微笑みの恐さ。今思い出しても震えちゃいます。ですが、私も頑張った。小学生の頭で考えつく方法しか絞り出せなかったことが悔やまれますが。

 見た目が子供!の漫画が流行っている今なら、もっと凄いミステリー小説を書けるんじゃないでしょうかね。そんなささやかな後悔とともに懐かしい過去を振り返ってみると、懐かしい恩師の笑顔も一緒に思い出しました。


「まさか……この授業で本格ミステリー小説が読める日が来るとは思わなかったわ。本当はこう……もっとね……違うのを書いて欲しかったというのが気持ちにあるけれど。とっても面白かったですよ」と、わざわざ私たちのグループだけ呼び出されてお褒めの言葉をいただきました。心中お察しいたします。


 これが私の小説執筆初体験です。

 周りを見渡しても、ミステリー小説を授業で書いた人間はあまり見た事がありません。

 辛うじて短大時代の友人タキちゃんが「すっごく仲が悪い二人がいて、その内の一人が家中に罠を仕掛けて相手をひたすら殺そうとする話しを書いた」と恥ずかしそうに白状したのがインパクトあったくらいです。君達の心の闇も相当深いなと呟いたのも遠い過去のお話しです。


 これが今回のタイトルの謎解きになります。

「山小屋密室殺人事件」このタイトルだけが私が書いた小説ではありません。

 並べてみれば一目瞭然。分かり易くインパクトがある素晴らしいタイトルだと、つくづく感心してしまいます。センスは持って生まれたものなんでしょうね。きっとそうに違いない。

 後ろの二つは、私が短大時代に友人達の為に書いた短編小説のタイトルです。ルーズリーフにさささっと書いた自分の妄想を書き殴っただけのお話しですが、評判はそこそこでした。

 ちなみにそれを元に腐った絵をせっせと描いておりました。妄想の為の妄想を効率よくし始めた切っ掛けです。




 とまあ……今回は、小説を書くということに触れた懐かしい過去のお話しでした。

 私が腐るちょっと前のほのぼのとしたエピソードでなにを伝えたいかというと、小説は小学生でも書ける!ということです。

 小説は誰でも書けるという安心感をお伝えできていればいいんですが……どうなんだろう。

 次回はそれを踏まえた上で妄想を小説に変換する方法についてお話ししようと思います。

 妄想を小説に!このエッセイのタイトルを今更思い出したわけではありません。ちゃんと……覚えていますよ?

 妄想を糧に日々楽しく生きる腐女子のお話しは、もうちょっと続きます。暫しおつきあい頂けると幸いです。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ