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第三話 やおい少女爆誕!!




 第三話も頭が悪いタイトルでお届けします。

 タイトルは内容がハッキリと分かる様にしなさい。と、友人から言われたので……素直に守ったらこうなりました。

 一応「センス良くね!」と注意も受けたのですが、私には荷が重かった。

 世間一般ではセンスは磨くものらしいですが、元々ない場合は歯でも磨けばいいのでしょうかね?とりあえずタイトルのダサさは後ろに置いておいて先に進みますよ~!





『妄想はどんな時でもやってくる。たとえ眠っている時も』


 どうやら私は天性の妄想野郎らしく、起きている時も眠っている時も常に妄想をし続けています。

 子供の頃は窓際のトッ●ちゃん的な、微笑みと共に受け入れてもらえるかわいい妄想だったのですが……中学三年生の時、友人に見せてもらった二次創作の同人誌が私の妄想を一変させました。


『なぜ……男同士?どうして男同士??いや……それ以前に……まだ子供じゃないの!?』


 アニメにもなった某少年漫画の主人公達が大変なことになっている……!いや、大変な事をしている薄い本を手に私は震えました。

 頭の中は、大混乱です。

 なにもかもが異常過ぎて意味が分からない。

 否定の言葉が脳内を駆け巡ります。

 なのにページをメクる手は止まらず目は物語を追い続けます。

 頭の中で激しい警戒音が響き始めました。これはキケン!!今すぐに引き返せ!!と理性が訴えかけます。

 それでも私はやめることが出来ません。


『おいおい!百歩譲って男同士は許せたとしても(?)なんでよりによって脇役のあなたがメインヒロインなの!?私は主人公の方が好きなんだけど!ちょっと無視するなんて酷いんじゃないのかなあ……あ、ほら!主人公泣いちゃったじゃん……ぐす。え!?なんで受け入れちゃうの?そこは「お前なに言ってんの?寝言は寝てから言え!」が正しい選択だ!!ないわ~そりゃないわ~!先に手を出しておきながらどうしてそこでソイツに転ぶんだ!「……ずっとお前だけを見ていた」って冒頭で切ない顔したのは誰だったんだよ!!……っ……!嘘なの?相手の心を試すため……だったのね?』


 気付けば私は心の中で突っ込み妄想を繰り広げていました。

 最初の衝撃が去ると、男同士なんて些細な事はどーでも良くなってしまったのです。

 そして一言一句取りこぼすことなく全てを読み終えると、まるで悪夢を見た後のような脱力感が私を襲いました。

 魂が身体から抜け出てしまったような浮遊感。激しく脈打つ心臓の音。指先が何故か震えて止まりません。今まで味わったことのない感動に瞼の裏が熱くなり涙が零れそうでした。


 それが私の腐った妄想の目覚めでした。



 その時私は自分が空想していた世界には……これが足りなかったのだとハッキリと分かったのです。

 それは自分の中に潜む欲望の存在でした。


 オタクの例にもれず奥手と呼ばれるほどに地味な私にだって恋愛に憧れる気持ちはありました。一応好きな男の子はその当時にもいましたし。

 それでも好きだと告白したり、されたり付き合ったりなんて……想像したことがなかったのです。

 どこか遠い世界の物語のような恋愛。

 誰かを愛し誰かから愛される。そんなごく当たり前の事を考えもしなかった自分に突きつけられた妄想の世界の倒錯的な愛のやりとり。

 素晴らしい!!!これこそ私が求めていた究極の妄想だ!!!

 世界の色さえ一変する衝撃に、その日の夕食は喉を通りませんでした。

 恋人と別れてもご飯だけは食べる私がそれほどのショックを受けたのはその時と、最高に感動したBL小説を読んだ時だけです。自分で言うのもなんですが、基本は図太いのでどんな時だってご飯だけは食べれるんです。

 だからその時の衝撃はそれ程凄まじかった。という事になりますね。


 そんな初心ウブな私でしたが、一度目覚めたモノはもう留まることを知りません。

 当時やおいと呼ばれた男同士の恋愛を扱ったモノは、ほぼ同人誌しかありませんでした。

 なので私がその妄想をより強く育てる為にはたった一つの方法しかありません。

 コミケに行こう!!そしてその妄想を形にしたものを家に持ち帰ってもっと凄い妄想に育て上げるんだ!!!


 これが当時高校受験を間近に控えた私の……腐った時代の幕開けでした。



 どうでしょう?

 自分で書いておきながら本当にアレですけど、この人大丈夫?って思いますよね。

 でもご安心下さい。私も友人達も無事に高校生になって、更なるオタクライフの充実を実現しましたよ!!



 高校って素晴らしい!!


 私が通った学校の図書館には、最新刊までずらっと揃えられた漫画が山のようにありました。今でいうところのラノベと呼ばれる文庫も勢ぞろいです。スニーカーとか朝日ソノラマがその当時人気でしたね。

 水木先生やはだしのゲ●しか置いてなかったそれまでの学校の図書館とは比べようもありません。

 私も片っ端から読んでいましたよ。

 後は海外SF小説。自分のお小遣いだけじゃ絶対に足りない量の本をただで読める!!もういっそここに住みたいと思っていました。


 放課後は友人を訪ねてアニ研の部室に連日入り浸りです。大体はその当時流行っていたアニメ談義に花を咲かせましたが、たまに絵を描いたりもしていました。

 その時に初めてイラストボードなるモノの存在を知り、カラーインクを使った彩色方法もその時に教えてもらいました。

 当時はこのイラストボードに絵を描いてコミケの新刊告知にしているサークルが多く、後にたった一か月でお別れすることになる……私の二人目にして初オタク彼氏に頼まれて、奴のブースに置く為の看板を描く時にも、ここで得た知識を存分に生かす事ができました。なにがどんな役に立つかわかりません。

 なんでもやっておくものですね!!


 そんな私ですが所謂お年頃になって……彼氏が欲しい。でもオタクってバレたら恥ずかしい!そんなジレンマに悩んだこともありました。

 誰でも通る道ですね。

 友人に聞いてみたところ、絶対バレないように家に呼ばないと言っていました。

 お前の部屋に一体なにが隠されているのだ?

 とっても気になる発言でしたが、もう昔の事だからそっとしておきましょう。


 そんな心配をしつつ私にも無事に彼氏が出来て、短大時代はそれなりに恋愛を楽しんでいました。

 学校の後アルバイトをして……その合間にデートをして、家では出された課題を徹夜でやっつける。今では絶対に不可能な二十四時間フル稼働の恐ろしいシフトを組んでおりました。


 そしてどんなに忙しくても、疲れていようとも妄想はやめられません。

 彼へのクリスマスプレゼントよりも画材のほうに圧倒的にお金をつぎ込み、コミケが近づくと彼氏よりも原稿を優先させる。そんな……ダメ彼女でした。

 その当時は、自分がオタクだという事を隠していたので、色んな言い訳を友達を巻き込んで一生懸命に考えてはデートを断った苦い記憶があります。

 結局バレていたのか騙し通せたのかは……もう確かめようもありませんけれど。


 ダメな話といえば、あの当時はコバルト文庫の某戦国時代転生BL小説が一世風靡しておりまして……当時はミラージ●聖地巡礼という名の歴史的建造物巡りが若い女性の間で大流行したことがあります。

 その作品の作者本人が川中島の合戦イベントに参加したりして、話題を集めました。

 今でいう歴女の走りといえますね。

 当然私も行きました。当時付き合っていた彼氏の車に友人二人を乗せて!!!

 しかも新車を買うという彼氏をソソノカして……小説の中に出てくる車種を選ばせたという極悪非道なこともやりました。

 もういい加減時効だろうと暴露してしまったけれど、改めて思い返すと絶対地獄行きだなという所業の数々に蒼褪めます。

 本当にあの時は申し訳なかった!!!


 そんな優しい彼氏ともいつの間にか(?)別れ、色々な出会いと別れを繰り返しながらも私は年二回のお祭りに参加し続けました。

 新作アニメと最新ゲームのチェックも怠りませんし、今では珍しくもなんともなくなったBL小説や漫画を会社帰りに物色する時間のなんと甘美なことか!!


 そう。私の妄想は二十歳を過ぎても全く衰えなかったのです!!!


 吃驚仰天。摩訶不思議。

 そんな言葉が思わず出てしまうくらいの驚きの事実。

 当時、チマタで囁かれていた腐った妄想は普通の恋愛をする事によって徐々に消えていくと言われていた話が、真っ赤な嘘だったと知った時は「一生このままだったらどうしよう!?」と頭を抱えた事もありました。ええ!泣きましたよ!!マジ泣きでした。


 結婚したら同人を卒業。

 そういう話しをよく耳にしていた頃です。

 それなら一生結婚したくない!!と叫ぶ友人の声にそうだそうだと力強く頷く私。

 その頃の私は自分の本性を隠して生きることに疲れていたので……オタク臭が香る男性を選んで付き合うようにしていました。

 嘘をつくことの辛さが身に沁みていたのです。

 どうしても外せない大切な用事があると口にした時に相手の目が……真っすぐ見れない切なさ!

「ごめんなさい!あなたのことは大好きだけど……それ以上にコミケが好き!!」なんて口が裂けても言えませんからね。


 だから私は同じ趣味嗜好を持つ同志を、彼氏にしました。一緒にコミケに行けばいいので楽だと思っていたのです。

 実際には、男性向けと女性向けは参加日が違う為に最低二日コミケに行くことになり、結構な体力を使うことになることをその時の私は気づかなかったのですが。


 そして更に年月は流れて、今現在も駄目人間のまま私はここにいます。

 妄想は決して罪ではない。

 妄想は悪いことじゃない。

 ずっとそう言い続けてきた私の心の闇を今回ここに公開してみましたがどうですか?


 澄ました顔で学校に来ているあの子も、スマイル0円のハンバーガー屋さんのお姉さんも、気さくに話しかけてくれる八百屋のおばちゃんも……心の中に、なにが隠れていてもおかしくないんです。


 当時腐女子は結構レアだったので、めったなことでは出会えませんでした。

 多分クラスに一人居たらラッキー!という確率だったと思います。

 だからせっせとコミケに通って本を売ったり買ったりすることで、友達を作ることに必死だったのだなあと思います。


 後で詳しくお話ししようと思いますが、同じ作品であっても誰推しかで友達になれるかどうかが問われる時代もあったんです。

 キャラクター同士の組み合わせが非常にシビアな時代でもあり、男役(攻め)と女役(受け)が自分の主張と逆。通称、ギャクカプが隣り合ってしまうと……血の雨が降ると言われる非常に神経を使う時代でもありました。

 今でもコミケの申し込み書には、「カップリング表記は必ず書いてください」という一文があります。

 当時の担当者の苦労が偲ばれます。

 話を続けますが、そんな時代でもすでに腐った思考をもつ人間が多数いたということがお分かりいただけたでしょうか。

 今の時代なら……誰でも簡単にころっとダークサイドに落ちる地盤が出来ている為に、すぐ傍に生息していることもあるでしょう。

 それに昔ほど隠すのが上手ではない腐った人が増えてきたので簡単に発見できるようになりましたね。

 私の会社にも普通に生息していました。

 ちょっと話しただけで簡単にボロが出るのでこっちが焦ります。

 もう少しうまく隠せよ!!と私が慌ててフォローすると「キョトン」とします。

 ……ちょっとイラっとします。

 次回はそんな私達の妄想の仕組みについてお話しできたらいいなと思います。

 ちょっと気持ち悪い妄想が出てくるかもしれませんので……ご注意ください。



 誰が得するんだ!?という突っ込みどころ満載のエッセイですが……妄想を小説に変換する方法に辿り着くまで続きます。


 気楽にお付き合い頂ければ幸いです。

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