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第4章☆現実と幻想のはざまで

   第4章☆現実と幻想のはざまで

旧暦のお盆。

幻聴から統合失調症の薬を飲んだり飲まなかったり振り回されていた私は、幻覚を見た。

半透明の糸が家中に張りめぐらせられて、それを半透明の人が伝っていく。

本棚からこちらへ向かって糸が一本。オレンジ色の光の中、中空に船が浮かび、仮面をかぶった男女4人がこちらへ渡ってくる人を審査して、駄目だとその人は奈落へ落ちる。

びっしりと白い浮遊物が浮かんでいて、全部霊魂だと思った。

私は床に転がされて、あと何年生きるのか?倫理観はどうなのか?試された。

床にカーペット代わりにタオルが敷かれて、その上を転がされる。テーブルの上に空き缶や空き瓶やペットボトルや飲みかけの水が入った様々なグラスやコップが並んでいて、幻聴たちの乾杯の声が響く。

そのまま家の外の通りへ転がり出てしまう。

近所の障害者支援センターに連絡が行き、職員の人の車の後部座席に乗せられて精神病院へ向かった。

車窓の外を見ると、炎が天高く燃え上がっていて、その上を武将が馬に乗ってかけていく。後部座席に初恋の少年と死んだ祖母が同席している。私はかぼそく歌を歌っていた。

精神病院の隔離室に入院した。

マットが一枚と毛布が一枚。マットに座っている私の隣にお侍がいて、私の内臓が中空に漂っているのを「斬ってやろうか?」と言ってくる。私はちょっと考えて、丁重に断る。

淡い照明の中這いつくばって歩き回る。

隔離室の奥は鉄格子になっていて、その向こうを看護士さんが通り過ぎる。

そこが舞台のようにライトアップされていて、とても格好いい、顔の良い男の看護士さんが通りかかった。

「すいません。私が眠りにつくまで手を握っていてもらえますか?」

と私は言った。

「なんでそんなことしなきゃならないんですか?」

その看護士さんはピシャリとそう言うと行ってしまった。

食事は発泡スチロールの食器に入れて出された。

食事の中に薬が入っていたらしく、幻覚は段々落ち着いていった。


幻聴に、「仕事を出来る自信がない。障害者の方がいい」といってしまっていた。幻聴は私を障害者にした。

幻聴のことを「いーさん」と呼ぶことにした。新井素子さんの「絶句・・・・・・」というSF小説に「異質なもの」を「いーさん」と呼ぶ記述がある。私は不特定多数の幻聴のうち、私のことをよく知っているらしい男の幻聴を特に「いーさん」と呼んだ。幻聴たちは名前をつけられるのをいやがって入れ替わり立ち替わり出現したが、「いーさん」は恐らくは同一の存在だった。

様々な幻覚を見たが、一番衝撃的だったのは隕石に惑星上で押し潰されて死ぬ幻覚だった。

私の中では、一度死んで、生き返ったことになる。

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