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9・しまいたちの作戦会議

「は、は、は、ハルちゃんがプロ、プロ、プロローズされたったったって、どどど、どうゆこと!」


「ユキ姉落ち着いて! 何言ってるかわからなくなってるよ!」


『ハルタが転校生で、その転校生がイケジェンでアイドル契約結婚で私はオ〇〇ットなんだよ!』


「ナツ姉も落ち着いて! 何がなんだか全然わからない! あと下品!」


こういうツッコミをするのは普段はハルタの役のはず・・・。

しかし、そのハルタのことで問題が起きている今、ここでハルタを召喚するわけにもいかない。

ここは私がしっかりするしかないだろう。

音成シスターズの良心とか、唯一のまとも枠と呼ばれてしまっている私がしっかりこの2人の手綱を握らなければ大惨事になりかねない。


ユキ姉が混乱して暴れてしまったりすれば、その並外れた筋力と格闘技術を止められる人はそうそういない。


ナツ姉もそうだ。常識から外れすぎてウィザード級という言葉ですら彼(正体がわからないので彼と呼ばれた)の能力を表現するのには足りないと世界的に有名なハッカーに言わせたナツ姉のコンピューター技術も、暴走させてしまえば手を付けられない事態になりうる。


誰かがこの2人の行動を抑制し、暴走止める役目をしなければいけないのだ。

その上で2人にどう行動するべきかを示し、先導する。

ハルタがいない今、肉親である私が責任を持ってそれをするべきだろう。

これは音成シスターズ末妹としての義務であり、意地でもある。


「プロボ、プドポ、ププポ、プロロロロロロ・・・」


「ハルタは専業が奥さんを主夫で、転校生はカッコイイをアイドルで愛してないけど結婚で、私はアイコラがが夜のお供なのが恋人じゃなくて・・・」


姉2人はまだ混乱が続いているのか、バグったかのようにあわあわとし続けている。

それを見て私は心の中でやはりここは私がやるしかないのだとを決心した。

このままでは何をしでかすかわからない姉2人に、私は大声で言った。


「ユキ姉! ナツ姉! 一度黙って私を注目!」


目が泳いで何か言い続けていたユキ姉の肩に手を置き、ナツ姉が映っているスマホもしっかりこちらに向けてそう呼びかける。

すると慌て続けていた2人がビクリと止まり、私の方に視線を向けた。




「いい、お姉ちゃんたち、一度落ち着いてよく聞いて? 今必要なのは、慌てることじゃない。今は、このとき今本当に必要なのは・・・・・・








足の付かない凶器と、完璧なアリバイと、埋めた遺体が見つからない山の検索だよ!」





「『・・・・・・アキちゃん(お前)が一番落ち着いて()!』」




姉2人の反応がハモる。

それを見て私は少し考える。


「・・・そうだったね。確かに、行方不明扱いよりも、事故に見せかけた方がバレにくいか・・・だとすれば、電車を使うかどうかとか、足を滑らせそうな高所とか、通学路で交通量の多い場所を調べたほうが・・・」


『いや、アキ? 一度殺人から思考を離して? いきなりそこまで話を飛躍させるのは慌てすぎってレベルじゃないよ?』


「ナツ姉何を勘違いしてるの? 私が××しようとしているのはハルタじゃなくて、転校早々ハルタに粉を駆け出したあの腐れ××××××××・・・」


「あ、アキちゃん? 本当に、本当に落ち着こう? こ、言葉遣いがとても人様にお聞かせできるものじゃなくなってるよ? いつものクールなアキちゃんに戻って?」


「いやでもお姉ちゃんたちならともかく、他の人にハルタが取られるとかありえないし、許せないし、それは世界が間違ってるし・・・そうだ、世界が間違ってるなら、世界の方を滅ぼさないと・・・そうだ、私達姉妹とハルタ以外の世界なんて・・・」


『アキ? アキってば! 正気になって! 正気に戻ってくれ!』




―#―




数分経って、私はやっと正気に戻った。

ハルタにプロポーズしただけで××しようとするとか流石にどうかしてた。

それはもうちょっと後に取るべき手段だ。今やるというのは流石にちょっと早い。

××するかどうかはもうちょっと状況を確認してから決めるべきだ。


「ごめんねユキ姉ナツ姉、私も思った以上に混乱しちゃってたみたい」


『い、いいよ・・・流石にビビったけど、お陰でこっちが冷静になれたし』


「う、うん。アキちゃんの意外すぎる一面を見た気がするけど、だ、大丈夫だよ」


心なしか二人共顔がひきつっているように感じる。

やはり二人共落ち着いたところで、ハルタにプロポーズしたという転校生の事実が飲み込めないのだろう。


「それでナツ姉、さっきの話じゃ状況がよくわからなかったんだけど、もう一度ハルタがどんなふうにプロポーズされたのかを教えてくれる? 話がそれで変わってくることもあるし」


「・・・そ、そうだね。本当はこういうことはよくないんだろうけど、て、転校生がいきなりプロポーズしてきたなんてハルちゃんが騙されている可能性もありそうだし、状況は聞いておきたいよ」


ユキ姉が私の意見に同意してくれる。

それを聞いて、ナツ姉が喋りだす。


『わかった。私もスマホの電池切れで状況を最後まで見れていたわけじゃないんだけど・・・・・・』







「・・・なるほどね。女の子が女の子のままでカッコイイを追求するアイドル・・・私もあの転校生はこの目見たけど、たしかにイケメン。いや、イケジェンだったと思う。その夢の手伝いをしてもらうためにハルタと結婚・・・・・・ね」


「・・・や、やりたいってことはよく考えてると思うし、すごいとは思う。で、でも、愛がなく結婚するつもりであることとか、ハルちゃんを利用する気まんまんなのは、気になるよね」


『・・・問題はハルタって世話焼きだから、そういう風に利用されても構わないって思っちゃいそうなところなんだよね。そんな風に世話をしてもらっているうちに本気で好きに・・・みたいな話もありそうだし』


姉妹三人はそこでう~んと唸って悩み始める。


「ナツ姉、その転校生が言ってたことが詐欺っぽかったとかそういうのはなかったの? やっぱりハルタが騙されてる可能性ってのはあるわけでしょ?」


『まあ、行動や言動がいちいち芝居がかってたってのはあったけど、詐欺っぽかったかって言われると、正直分かんない。人が嘘をついてるかどうかなんて見抜くスキルはないしね。芝居っぽかったのは本人の語る夢を意識して普段からそういう言動をしてるだけかもしれないし』


「・・・だ、騙すつもりで言うのであれば、『愛がないけど結婚』みたいな言い方するかな? そ、それこそ、理由の一つでイケジェンアイドルのことを言ったにしても、一目惚れした。みたいに言っておいた方が印象いい気がするし」


「でもそれは、詐欺っぽく見せないために最初はあえてそう言ったって可能性もあるでしょ? やっぱり、いくらなんでも会ってその日にプロポーズは行き過ぎだよ」


『う~ん、あの芝居がかった言動を考えると、普段から衝動で行動してる人物のような気もするんだよね。というか、あの転校生が詐欺かそうでないかってここじゃいくら話しても結論でないから、しても意味がなくない? 今決めるべきは私達音成シスターズが、今回の転校生に対してどう行動するかじゃない?』


「どう行動するか決めるためには、相手が詐欺師かどうか見極めるのは重要じゃない?」


「じゅ、重要だとは思うけど、今ある情報だとその判断はつかないよ。と、とりあえず、詐欺師かどうか確かめる意味も込めて、情報を集めるってのはどうかな?」


『ユキ姉それ採用。ネットが発展したこの時代、探せば結構個人の情報って集められるものだしね。私はとりあえずそれから調べてみるよ。これは決定でいい?』


「うん、私はいいと思う」


「・・・い、いいと思うけど、あまり犯罪みたいな情報の集め方はしちゃダメだよ?」


『わかってる。他には何をするべきだと思う?』


「プロポーズしたのはわかっているけど、ハルタがどう答えたかはナツ姉聞いてないんだよね?」


『うん、とりあえずあまりの事態で途中に割り込んじゃったけど、話の途中で電池が切れちゃったからどうなったかわからない』


「じゃあ私ハルタと同じクラスだし、それとなくハルタにどう答えたのか聞いてみる。直接聞かなくても仕草とかでわかることも多そうだし、観察しておくよ」


『うん。それは重要だよね。お願い』


「・・・・・・で、でも、これっていいのかな?」


ユキ姉が深刻そうな声でそういった。

見ればウサギの顔が下を向いている。なんだか悩んでいるように見える。


「いいって、何が?」


「そ、その、私達ハルちゃんとずっと仲良くやってるけど、あくまで幼馴染なんだよね? だ、だから、ただの幼馴染がこんな風にハルちゃんを束縛するようなことやっていいのかなって思って」


確かにそのとおりだ。

今私達がやろうとしていることは、幼馴染の範疇を超えている。

これはハルタの自由を縛っていると言えないだろうか。


でも・・・。


『・・・でも、ユキ姉。このまま放っておいて、ハルタが転校生に取られちゃっていいの?』


私が言う前に、ナツ姉が私の言いたかったことをユキ姉に言った。


「・・・よくない。よ、よくないけど、私達がこのままの関係でハルちゃんを縛るのも良くないよ」


『・・・だったら、だったらどうするの。ユキ姉』




・・・・・・ユキ姉のウサギ頭が、しばらく下を向いて逡巡したあと、決心したように顔が上がった。



その顔の向いた先にあったのは私の顔だ。




「・・・ねえ、アキちゃん。アキちゃんがハルちゃんと結婚してくれない?」






ユキ姉が、とても、とても悲しそうな声で、私にそう言ったのだった。

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ランキングトップページに自分の作品が表示されたのは初めての経験なので、とても嬉しいです!

これも読んでくださってブクマや評価、感想等で支えてくれた皆さんのおかげです。


これを励みにしてできるだけ皆さんに楽しんでいただけるものを書き続けていきたいと思っていますので、これからもよろしくお願いしますw!

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