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4・おとこたちの天敵

-#-


8時。

ユキ姉が家を出たあと、皿を洗ったり、真中家、音成家両家の家事をできる範囲で軽くやったりしてから家を出た。


『ハルタがスマホの充電しばらく忘れてたせいで、のこりの電池残量少ないじゃん。これじゃ1時間も持たないよ』


家を出たタイミングを見計らったかのように、ナツがスマホをハッキングしてそう言った。

もはや慣れたことなので、俺はそれに普通に返す。


「いや、お前が勝手にスマホをハッキングしなきゃ丸一日十分に持つ量は充電できてるだろ。というかマジであんま電池使いすぎるなよ? 緊急の連絡が電池切れでできなかったりしたらまずいんだから」


『ぶー。一緒に通学してくれてる可愛い幼馴染に対してその態度はどうなの? そこは充電を犠牲にしてでも泣いて感謝してしかるべきでしょ?』


「いや、これ一緒に通学っていえないだろ。お前は家にいてスマホをハックしてるだけなんだから」


『細かいことでうっさいなぁ。そういう細かいことばかり気にしてると、将来ハゲるよ?』


「おまっ! 思春期の男の子に将来ハゲるとかいうのは戦争だろうが!」


『ほほう? もしかしてハルタくんは、ただでさえオジサンの髪の毛が薄くなってきているのを見てるから、将来自分もハゲるかもしれないと怖いとかかなぁ?』


「ぐぬぬぬぬ・・・っ!!」


たしかに親父の頭皮はここのところ激しく後退しだしている。

親父だけじゃない。父方母方問わず、祖父も両方が結構ハゲてたりする。

まあだけど親戚一同男共は全員ハゲているというわけでなく、おふくろの兄貴は結構おふくろより結構歳だと聞いているのにふさふさだったりするので、遺伝子的に必ずハゲることが確定しているわけではない。

しかし俺の顔はかなり親父似だ。かなりの確率でハゲてしまう可能性があるのだ。


だからこういうふうに将来ハゲるなんて言われてしまうと、本当にそうなるのではと思ってしまう。

こういうふうに悩んでいることがストレスになって髪の毛が抜けてしまいそうなのであまり考えたくない。

だからハゲるなんて安易に言ってほしくないのだ。切実に。


『まあ、大丈夫大丈夫。ハルタがハゲ始める頃には科学も進歩してハゲに効く特効薬とかできてるかもしれないからさ! 気にすることはないよ』


「・・・親父の若い頃もそういう話はよくあったらしいけど、結局親父がハゲだしても薄毛の特効薬なんて開発されなかったんだよ・・・」


『・・・まあ、それはほら・・・最近だとカツラとかって地毛と見分けがつかないようなのも多いし、大丈夫だって!』


「安易にカツラっていうけどな、もしお前が急にハゲだしてしまったとして、それでカツラを被る勇気があるか? いくら見分けがつかないって言ったって、身近な人とか家族が見ればハゲだしていた頭に何かやったっていうのはバレバレなんだぞ? その時なんと言われてしまうか考えると怖くならないか?」


『・・・そ、そこは家族の理解を得るとか・・・』


「じゃあそこをクリアできたと仮定しよう。だけどな、カツラだって治療だってタダじゃないんだ。深刻な病気でハゲたとかじゃなきゃ保険だって使えない。髪の毛の治療費を稼ぐために必死こいて働いたら、そのストレスでハゲかねない。病院なりカツラ屋なりに行くのも時間や手間もかかる。忙しい大人の男にそんな暇があると思うか? つまり結局、現代も大多数の男がハゲに対しては抵抗する事すら難しいんだよ。男はまだハゲに対して敗戦の歴史を歩んでいるんだよ」


『・・・・・・』


「いいか、男にとってハゲというのは・・・」


『ごめん、私が悪かった。もう言わないから許して。聞いててこっちがツライよ・・・』


「わかってくれたならいいんだ・・・念のため言っておくけど、間違っても親父の前でハゲの話したらダメだからな?」


『さすがにそれはわかってるよ。ネタですむ人とすまない人の区別はつくよ』


「頭頂部をチラチラ見ちゃうとかもなしだからな? ああいうのは見られてる本人の方は意外と気づいてるものらしいから」


『そうだね。ハルタがユキ姉の胸をよく観察してるのもユキ姉にはバレバレだからね。私も気をつけるよ』


「・・・えっ?」


そんなバカな。あの芸術的肉曲線を見るときはできるだけ顔に視線を向けて全体を観察するように眺めたり、ユキ姉の注意が他に向いてる時にとどめていたはずだ。

いや、というか、ユキ姉は基本的に人に顔を見せないよう心がけているよな?

その状態で俺の視線に気付けているわけが・・・。


『ユキ姉ほどの達人になると、人が自分に向けている視線の位置を感覚として感じるらしいよ? 最近ハルタが胸やお尻を舐め回すように見てくるんだけど、性欲を持て余してるのかなってよく相談受けるし』


「・・・この世の終わりだ」


ユキ姉の前ではいつまでも可愛いハルちゃんでいるままに視姦し続けたいという願望を持っていたのに、まさかそういう目で見てしまっていることを感づかれてしまうなんて・・・。


『いや、終わってるのは世界じゃなくて、ムッツリなハルタの人格の方だから』


「失敬な! ユキ姉の身体はエロじゃない。あれは耽美な美術、耽美術なんだ! 芸術に昇華されたハイエロチズムなんだ! つまり俺がやってることは視姦じゃなく芸術鑑賞だ! そこに下心なんて存在しない。あるとすればそれは下心を超越した真下心、真心こもった下心なんだ!」


『ホンキでそう思ってるならそれをそのままユキ姉に報告すればいいんじゃ? と言うか私がこの録音データ聞かせようか?』


そうナツが言った後にスマホからこんな音声が流れてきた。


『俺がやってることは視姦じゃなくて芸術鑑賞だ!』


「・・・・・・録音された音声を第三者的に聞いてみると、何言ってんだコイツ頭おかしいんじゃねぇのってなるな。すいませんナツ様、俺の負けです。それをユキ姉に聞かせるのはマジやめてください」


『ま、ハルタが頭おかしいのは今に始まったことじゃないしね。今回だけは勘弁してあげよう』


「へへー。ありがたやー」


俺はスマホを頭上高く掲げながら頭を下げて、ナツに感謝を示す。


『まあ今後そういう下心こもった目線向けるのは私にしときなよ』


「え、いやお前ぺったんこじゃん。下心の向けどころないじゃん」


ただの壁に欲情できるやつがいたら、それはかなりの上級者だろう。

だが、壁を見るたびに興奮していたら、日常生活が大変そうだ。俺はそんな人間ではない。


『はぁ!? ぺったんこ違うし! 少しはあるし!』


「と言うかお前はそれ以前にたいてい画面越しでしか見ないから、液晶画面の極平面でしかないしな。まあ、画面越しでなくてもそう変わらないけどな」


『ああん゛!? そこまでいうなら私も本気だすよ! 今アプリいじってスマホに表示される私の胸をバインバインで常にたぷたぷ揺れるよう加工して表示されるようにしてやるから!』


「・・・いや、それは別にいいけど、お前それ自分でやってて虚しくならないのか?」


そんなアプリを使ってもそれは虚構だ。ハゲを隠すカツラと同じ。見た目はフサフサになっても、本質的にハゲが治ったわけじゃないのだ。

俺がそう言った時にはもう遅く、スマホの画面にはボインボイン揺れまくる巨乳を持ったナツが映っていた。


『・・・・・・もうちょっと早く止めてよ。自分でやってて虚無感がヤバイ。自分の姿見て何やってんだろ私って気分になる』


「・・・まあ、なんだ。大丈夫、見た目が100満点中15点分くらいは面白くなってると思うぞ?」


『そんなリアル低評価の面白さなんていらないから! これじゃ巨乳じゃなくて虚乳だよ!』


「今のコメントいいな。よし、3点追加してやろう」


『低評価なの変わんないじゃん! ハルタのバカ! もう知らない! 先に行くからね!』


そう言ってスマホからナツが消える。

うげ、スマホの電池残り10パー切ってるし。

これだと最悪夕方まで持たないかもな・・・まあ、緊急の連絡はないと信じておこう。


ちなみにナツとのこういうやり取りはいつものことだ。

ふざけあっているだけで、両方本気で怒ったりとかそういうのはない。

さっきのも電池が流石にヤバイから先に行ったというのが本音のところだろう。


学校には引きこもりのナツが学校生活を送るのに使う端末がいくらか配備されている。

今頃先に教室の端末に繋いで学友と話をしているんじゃないだろうか。


さて、ナツと馬鹿なやりとりをしていたせいでそろそろ急いで学校に向かわないと遅刻しそうだ。

残りの道のりは少しだし、走ってむか・・・ん?


急いで学校に向かおうとしていた俺は、道の端に何かデカイ物が落ちていることに気づく。

最初はゴミか何かかと思ったが、よく見ればそれは人型をしている気がする。

何事かと思い近づいてみると、それは学ランを着た長身の男だった。


何か急病とか事故とかか? 特に血が流れてるとか目に見えてわかる怪我はなさそうだ。

・・・最近はおかしな人も多いし、関わらないで放っておいたほうがいいかもしれない。倒れたふりをして声を掛けられるのを待ってるとか、実は動画の撮影をしてるとかそういうこともありうる。

いやしかし、もし本当に何か緊急事態で倒れていたら見捨てることになってしまう。


・・・悩んでいる時間で深刻な事態になる可能性もある。

俺は決心して、うつ伏せで倒れる学生服の男の肩を叩く。


「大丈夫ですか! 意識はありますか!?」


肩を叩かれた男はビクリと動いた。しかし返事はない。

とりあえず死んではいないようだ。


うつ伏せのままだと良くないかと思い俺は男を仰向けにひっくり返す。

ひっくり返した俺は驚いた。

学ランの男がメチャクチャなイケメンだったからだ。

すべすべの肌に、均整の取れた顔つき。まつげが長くて鼻筋や口元も整っている。

普通にテレビに出ててもおかしくないんじゃないかと思うくらいのイケメンが倒れている。


・・・これ、助け起こすの俺であってるんだろうか?

こういうのって普通女の子がイケメンを助けて物語が進むやつじゃないか?


いやいや、テレビで見るようなイケメンだからって現実逃避して変なことを考えている場合じゃない。

とにかく状況を確認せねば・・・。


「大丈夫ですか!?」


俺は再度男の身体を揺する。

これで起きなきゃ救急車を呼ぼう。


「・・・・・・ぃた」


そうすると、男が薄く目と口を開けて、何かすごく小さな声つぶやく。


「・・・! 意識あるんですか? 大丈夫ですか? 救急車呼びますか?」


俺がそう言うと、男から音が響いた。






ぐきゅうううううううううううぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・。


そしてイケメンが今度は俺にはっきりと聞こえる声でこう言った。


「お、お腹すいた・・・」


それを聞いた俺は思った。

やっぱりこのイベントはヒロインが起こすイベントだろうって。

一応言っておきますと、タグにつけてないですし寝取られ展開もBL展開もありません。

最後のイケメンはストーリーを進めるために必要なキャラなので出してます。

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