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18・こいびとの条件

28日が仕事納めで29日は休日だったのですが、年末の追い込みの疲れが出たのか爆睡しすぎて毎日更新にギリギリ間に合いませんでした。

今日中にもう一話投稿する予定ですので許してください。

―# ハルタside #―


自分の部屋に戻り、俺は家計簿をつけたり、ネットで料理のレシピを調べてメモったりといった日課の作業をし始めた。

しかしどうにも今日はそれらの作業に身が入らない。


あまり変化のなかった今までの三姉妹との関係・・・変化はないと言ってもハチャメチャではあったけど、それでもやはり幼馴染という関係がそれ以上になることはなかった。

それを今日、サツキに引っ掻き回された。

優柔不断に先延ばしにしていた関係をそろそろ変える時期が来ているのかもしれない。


俺は身にはいらない作業をやめて、ベッドに軽く横になって考え事を始めた。

横になってはいるが寝る気はない。楽な体制で考えたいだけだ。


いい機会だし久しぶりに少しだけ、三姉妹のことを真面目に考えてみるか。


見た目が美少女フィギュアの半人半機械人形(ハーフドール)


コンピューター上で演算された電脳世界にしか存在しない少女。


そんな姉妹を普通に人間として扱う普通の妹。


トンデモ設定ではあるが、俺はこの三姉妹と今まで幼馴染をやってきていた。


この中から恋人にする相手を選ぶとすれば、悩むことなく選べるのは三女のアキだろう。

彼女は普通の人間だ。難をあげるとすれば家族関係が複雑な上に常軌を逸していることくらいだが、その点に目をつぶれば可愛くて何でもそれなりにこなせるいい子だ。

まあ、目をつぶっている部分がデカすぎてアレだが、性格も、容姿も、能力も申し分ない。


だが、アキしか恋人にする相手として選べないかと言えばそんなことはない。

俺はナツもユキ姉も恋人として考えていいと思っている。


まずユキ姉。

恋人として考える上でまず考えないといけないのは彼女の見た目だろう。

まるでアニメから飛び出してきたかのような萌え美少女な見た目。

明らかに人間とは違う見た目だ。人間を模してはいるが、決して人間ではない見た目。


前になぜユキ姉の顔や身体をあんな見た目にしたのかと音成父に聞いたことがある。

聞いてみればよくぞ聞いてくれたと言わんばかりになんだか色々語っていたがまとめると、将来のことを考えてのことだそうだ。


もしもユキ姉、ハーフドールが全く人間と同じ容姿をしていれば、ハーフドールは人間の中に完全に紛れてしまうことができる。

人間として偽って生きて、人間に紛れて生きていくことで、ハーフドールはその数を徐々に増やしていく。


しかし、ハーフドールは半分人間だが、人間とはやはり違う存在なのだ。

もし隠れて数が増えていってしまえば、それに対して人間は恐怖を覚えるだろう。

人間と違う存在が、人間に紛れて数を増やし、人間社会を乗っ取ろうとしていると。

あるいは、野心を持ったハーフドールが現れて実際にそれをなそうとしてしまうかもしれない。


意志があろうがなかろうが、その先にあるのは戦争や弾圧だ。

きっかけがあればお互いの不信感は瞬く間に不安となって燃え広がり、殺し合いになってしまいかねない。


だからひと目で違う存在なのだとわかり、その上でやはり人間なのだと分からせるために音成父が選んだ容姿が萌えアニメのデフォルメされた人間の姿だった。


人間は古来より、情報を伝えるために文字や絵を使った。

それは時間とともに進化し、今も変化し続けている。

萌えアニメの美少女の見た目は人間そのものの見た目ではない。

表情や感情の表現をわかりやすくするために目を巨大化させたりしているし、身体の骨格や頭身も動きが目立つ作りに変えてある。

その上で娯楽としての可愛いを追求するためにその線の細微をミリ以下の単位で追求している。

何度もたくさん書くために書きやすさを追求してデフォルメされ、記号化された人間を書いていたのが、時代とともに可愛いや綺麗を求められ、変化していった最終的な形。萌え美少女。


明らかに人間ではない容姿なのに、アニメの上で、あるいは多くの視聴者から人間として認識され、その上で可愛いや綺麗を求められた結果の形。

その姿は音成父の追求する人間の進化の形の先の形にふさわしい形であるとして、思想が合致したわけだ。


・・・つくづく言ってることは分からなくはないけど、本当にそれをやってしまうのはどうかしているとしか思えない変人である。

そもそもユキ姉が産まれた理由が、いずれあるかもしれない機械と人間の戦争を回避するために、機械を人間の子どもが作れる相手にしておこうという突飛すぎる発想だからな。

思考が未来に行き過ぎてて幼馴染の父親なのに馬鹿だとしか思えない。


それにユキ姉を産んだはいいけど、それを世間に公表すれば逆に世界で機械が進化する速度が早まりそうだって正体を隠しているわけだしな。

結果公表する前提で作った容姿なのに、公表できないという今の状況が生まれている。

さらに言えば、容姿が他人と違いすぎることでユキ姉の羞恥心はどんどんでかくなってるしな。


パンツと同じだ。

普段からパンツを他人に見せていれば人はそんなにパンツを恥ずかしがらないだろうし、見る側も価値のあるものだとは思わない。

しかし、パンツは普段ずっと隠して他人に見せないようにしているので、パンツを見ることには価値が産まれ、また容易に人に見せるものではないのだと恥じらいが生まれる。


ユキ姉は顔をずっと隠していることで顔がパンツ化しているのだ。

つまりユキ姉の顔を見ることというのはユキ姉のパンツを見ることに等しい。

つまり、ユキ姉の顔を見るというのはエロい行為なのだ。


・・・なんか話が脱線してる気がするな。

何の話だったっけ・・・そうだ、ユキ姉を恋人とする上で容姿をどう考えるかだ。


・・・まあ、これは一言で終わるよな。

人間見た目だけで恋人を選ばない。それは人間が恋人を選ぶ上で人によって容姿の割合の過多はあるだろう。

あるいは許容範囲とかか。流石にこういう容姿の人は恋愛対象にできないという許容範囲は人によって違うかもしれない。


逆もあるな。フェチズム。ある一定の容姿がたまらなく好きな人。

まあこれについては深く語ると業が深いのでやめておく。

深淵を覗くとき深淵もまたこちらを覗いてるという。人間には知らなくていい世界というものがたくさんあるのだ。


ユキ姉の顔や身体はその範囲の中でも特殊な部類になるだろう。

なんたって他にほとんどいない。

許容範囲の外だという人間も多いかもしれない。

でも、誰もが絶対にユキ姉の容姿を拒否するかと言えばそれはないだろう。

それに慣れれば大丈夫という人も多い気がする。

これはユキ姉に限らずどんな容姿の相手でも言えることだ。


要は結局、人間慣れと性癖なのだ。

容姿だけで語るのであれば、俺の性癖はユキ姉をジャストミートしているし、問題も全くない。

寧ろウェルカムだ。


まあ、それでもやはりユキ姉を容姿だけで恋人に選ぶかと言えばそれは違う気がする。

それを言えばまるでユキ姉が美少女アニメみたいだから恋人に選ぶみたいだしな。

そうではない。俺はユキ姉の持つ優しさだとか、たまに甘えてきてくれる可愛さだとか、そういうものも評価している。


他にも色々ユキ姉の抱える問題はあるが、とりあえず俺はユキ姉を恋人に選べる。

これだけは確かだろう。




次に考えるのはナツだ。

彼女にもまた、恋人として選ぶのであれば悩んでしまいそうな問題をいくつか抱えている。


まあ、何と言ってもナツの最大の問題は身体がないことだろう。


恋人と恋人が愛を確かめ合う行為というのは接触を伴うものが多い。

手をつなぐ、抱きしめる、キス、セックス・・・。

触れ合うことでできる愛を伝えるための行為というのは多い。


そして触れ合うことは、子作りのためにも必要な行為だ。

寧ろ、愛を伝える行為に触れることが多いのは、子作りという人間が子孫を残す上で必要な欲求と行動が接触を伴って行うからなのかもしれない。



だがナツとは、それができない。



ナツは情報上だけの存在だ。

肉体情報は持つが、実際の肉体はない。

ナツの情報が入っているコンピューターに触れることはできる。

しかしそれはナツに触れているというのとは少し違うだろう。

触れられたところでナツ自身なにも感じないわけだしな。それで愛を伝えてると言ってもピンとこない。


ではナツとは絶対に愛をかわせないかと言えばそれは違うとおもう。

セックスしなければ相手を愛していないとは思わないからだ。


例えば言葉だ。人は言葉で相手を思いやり、気持ちを伝える。

これだって愛の行為だろう。

それに視線。相手の姿を見つめたり、相手の写真を大事に持ち歩くこと。

これだって愛だ。


無論だからと言ってキスやセックスが愛として下等であるとは言わないし思わない。

だが、それができなければ愛を伝えられないということには否を答えたいのだ。


無論、愛を伝えるためにセックスをすることは重要だ。

さっき言った、子どもを作るための行為でもあるし、人間には性欲がある。

相手が触れられずに性欲を満たせない存在であるということは重要かもしれない。


だけど、俺はそれを我慢してもいいと思っている。

まあ、性欲はあるが、発散しなければ死ぬ欲求というわけでもない。

それにだ、音成父とナツの母もセックスなどしていない・・・と思う。話を聞く限り多分そうだろうという推測でしかないけども。


だけどもナツは産まれている。

極論であるかもしれないけど、セックスをして肉体を持った子どもを生むことが愛として絶対の行為であるというのなら、ナツという存在そのものを否定してしまうのでないかと俺は思えてしまうのだ。


音成父とナツの母が子としてナツを残せたことを考えると、俺の遺伝子情報を使えばナツと俺の子どもだって作ることができるのではないかと思える。

子どもを残すことだけが家族の形、夫婦の形とはいえないだろうが、重要なことであるのは確かだ。


まあ、色々言ったが結論として、俺はナツを恋人として選べる。


・・・つまり結局、三人共恋人として選ばない理由はないのだ。

三人共恋人に選べる。だけど誰を選ぶかを考える時、消えたはずの選ばない理由がチラついてしまう。


選ばない理由があったから選ばなかったわけでないし、もしくはその理由に同情して選んだわけでもない。

しかし三人との関係を変えることを考えると、どうしてもそれが頭を過るのだ。



だから俺は優柔不断に悩み続けている。


そして今日も、やはり結論は出ないのだ。

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