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17/25

17・ぷりんさまの効果

―# ハルタside #―


夕飯が終わった。

やはりというかなんというか、今日の夕飯は会話も少なく、ギスギスした雰囲気だった。

ユキ姉はなんだかそわそわしてたし、アキはまだ機嫌が悪いオーラを出していた。


それにサツキが向かいのアパートに住んでいるというのも不安が残る。

俺の家の隣の家の表札に音成と書いてあるのを目ざとく見つけて悪い笑みを浮かべていたし、何かする気なんじゃと思えてならない。


・・・プリン様の効果はそれなりだった。


可愛い器に乗せてきっちりバッチリホイップクリームやフルーツによるかわいい盛りつけもやったし、プリンもコーヒー、ミルク、ノーマルの三色用意した。

写真の投稿サイトにアップすればいいねがたくさんもらえるだろう出来栄えだし、素材や味にもかなりこだわった。

俺が今作れる最高のプリン様を作れたと思う。

これならばアキの機嫌も治り、ユキ姉のそわそわも少しは収まってくれるのではないだろうかと思って出した。


が、その結果得られたアキのコメントは『・・・ホントマジで太るから作り過ぎはやめて』だった。

ホーリーシットッ!

そうだった! つい美味しいものを作ろうという意識が先行しすぎて量を考えずにやってしまった!


パフォーマンスのために大量のエネルギーが必要なハーフドールのユキ姉がいるせいで、俺の作る料理の量は狂いがちだ。

ユキ姉は食べすぎても胸しか膨らまないなんてトンデモ設定だけど、アキは普通の人間だからな。

高校生なんて多感な時期に太りそうな案件というのは避けないといけないのに、熱中するとそれを忘れてしまう癖はなんとかしないといけない。


まあ、文句を言いつつもアキは出した分のデザートは完食している。

それに出されたデザートを見た瞬間から、怒りオーラはだいぶ収まった気がする。

やはりプリン様の力は偉大だ。毎度これだけに頼るとそれさえやれば許されると思ってると言われそうだが、やはり甘い物は世界に平和をもたらしてくれる。

プリン様、今後もよろしくお願いします。


さて、ユキ姉の方だが、なんだかそわそわした様子が収まらない。

美味しいものを食べれば持っている不安なんて飛んじゃうんじゃないかと思っていたけど、そんなことはなかったようだ。

プリン様も万能ではなかったか。しかし一体何をそわそわしてるんだか。

聞いた方がいいのだろうか・・・しかし多分原因は俺かサツキのことだろうからな。

その原因の人に聞かれて答えられるものではない気もする。

聞きにくい。放置するしかないのかな・・・。


あとは気になるのはナツだ。

帰ってきてすぐにスマホの充電をはじめて会話用のパソコンなんかもつけてたのに、今日は帰ってきてからまだ一度も喋っていない。


ナツは電脳空間にしか身体がないから料理でなんとかするみたいなことはできないしな。

ナツは知らないけど一応電脳空間内でナツが自分で選び出して食べる料理のデータなんかは俺の料理データだったりはする。

だけど、俺はその日の食べる人の様子を見て味付けとか料理を出す順番を変えるし、盛り付け方とかで遊び心を演出したりもする。

マメに親父さんに頼んで料理データは更新してるけど、それは毎日その場で変えれるというほど万能なものでもない。

つまりは今日の件を食べ物でご機嫌取り的なのは無理なのだ。


普段おしゃべり好きでたいしたようがなくてもくだらないことを喋りかけてくるナツが今のところ音沙汰なしなのだ。

そういう日もないではない。夢中でアプリ作ってたとか、動画やら楽曲やら作ってたりとか、マイケルを始めとしたガチャ廃人量産に苦心していたりする事もある。

しかし今日の場合もそれとは限らない。

たまにはこちらからアプローチを掛けてみようか。

・・・それをした時の反応がわからずに怖い。

よほどのことがなきゃこっちからナツに何かするってのはないからなぁ。


・・・えっ?

なんでユキ姉とナツの正体を知ってるのかって?

それはまああれだ。寧ろ俺としてはユキ姉とナツ、そしてアキがなんで俺が正体を知らずにいると思ってるのかが不思議だったりする。


ユキ姉は昔から迂闊なので、俺は何度かユキ姉の顔をバッチリ目撃している。なんなら今朝も暴走状態時に普通に顔隠してなかったしな。

あれを見て、いつまでも疑問のままにしておける訳がない。

あと、よく見れば体型もアニメ体型なので、近くで暮らしていればそれは違和感として気づく。


本人が恥ずかしがり屋のあんな性格なので本人に聞かずにこっそり親父さんに聞けば、君にはとても世話になってるからと普通に教えてくれた。

・・・聞いてからこれは本当に本人が言い出すまで待たずに聞いていい内容だったのかと思わなくもなかったが、聞いてしまったものはしょうがない。


いや、こういう謎って恋愛物の漫画なんかだと、ヒロインとかが意を決して自ら明かすまでは知ってちゃダメな設定な気がするんだよな・・・。

というか、ユキ姉本人とかがそう思ってそうな気がする。教えちゃってよかったのかよ親父さんと思うが、聞いてしまった俺も俺で責任がある気がするのでこの件は置いておこう。


ナツの方もだ。

アイツは引きこもりと言っても家事をやってる俺からすれば違和感がありすぎた。

いくら無菌じゃないとダメだと言っても、食事を運び込んだり、トイレの処理とかしなきゃじゃないのかと思っていたのにそんなのが殆ど無い。

あと、ナツの入ってるコンピューターの電気代が毎月ヤバイからな。家計簿も管理している俺がその理由を気にしない訳がない。

これも親父さんがあっさり教えてくれた。

聞いた俺もなんだけど、普通ここは娘が自分で話すまで待ちなさいみたいな対応をするところなんじゃないかと思う。

まあ、それを喋っちゃうような性格だから、たまに帰ってきても最愛の娘たちにウザがられてるんだろう。


ちなみに正体を知ったのは中学に入ってすぐだ。

かれこれ5年位秘密を知ったまま過ごしている。

知っていることをこちらから話すのもなんか違うと思うので話してないけど、3人共なんで俺が気づいているとわからないのかが逆にきになる。


俺は二人の秘密を知ってから、色々なことをこっそり支援していたりする。

例えばさっきチラリと話したナツの食事用データとかだ。

定期的に姉妹の報告を兼ねて親父さんと連絡をとって、そういう支援をできるようにさせてもらっている。


例えばナツ本体のコンピューターの清掃兼メンテナンスをしているのは俺だったりする。

制服やマスク、防塵ゴーグルなんかをつけて、親父さんの関係者の職員のふりをしてナツの部屋に入って掃除してる。

俺がいない隙きを見計らって入れてるつもりなんだろうが、寧ろ俺がそれをやりたい時にわざと予定を入れているふりをしている。


ユキ姉の私服の裁縫とかもやってる。

体型がアニメ体型だし、胸のサイズ的に着れる服が少ないユキ姉は、恥ずかしがり屋で頭を隠している事もあって、基本的にお店で服を買うことはない。

基本は通販だ。

だけどもユキ姉が昔からよく使ってる洋服サイトは音成家父の作ったサイトで、注文した服の情報は俺のところに来る。俺はその注文情報からなるほどこういう服が欲しいのかとユキ姉の体型に合わせて注文した服のデザインのユキ姉用サイズの裁縫を始めるのだ。

・・・実際そうでもしないとユキ姉の動きに着いていける生地の服なんて売ってないからな。

自作してるなんて言ったら気にしそうだから言わないでいる。


下着はどうしてるって?

企業秘密だ。




・・・まあ、俺もなんだかんだ言って、いずれ自分からその秘密を言い出してくれるのを待ってたりはする。

それは2人の正体を聞いた時、最初は驚いた。

だけど驚いたのは最初だけだ。だって、それらの正体を知ったところで、何かが変わったわけではなかったからだ。

もともと正体を聞く前からユキ姉もナツも変な奴だったし、・・・その、可愛い人たちだと思っていた。

正体を聞いて変である理由のいくらかはわかったけど、理由がわかっただけで2人がなにか変わったわけではないことに割りとすぐ気づけたからだ。


あとは二人の正体を知っているのに普通に姉妹やってるアキを見ていたせいもあるかもしれない。

正体を知っても、音成ユキと音成ナツが別の誰かになったわけじゃない。それに気づいたら、別に可愛いと思っていた気持ちも変わってないことに気づいた。

寧ろ前よりも愛おしく思えたくらいだ。当たり前のように家族愛を貫いているアキも含めて。


ユキ姉の顔とか最初は驚いたけど、見慣れてくるとそうでもなくなった。

もともと日本はデフォルメ顔のキャラがたくさん出てくるアニメやら漫画やらで溢れているしな。

俺はそんなのに忌避感はなかったし、ユキ姉の恥ずかしがる仕草を含めて可愛さを感じて癒やされるくらいだ。

体型もすごく綺麗な上に、デカイ胸。寧ろ最高だとすら言えるだろう。


ナツの方だってたまにウザイと感じるが喋っていて面白い。

アイツがよく喋るのは、どうやったって、誰と喋ったって画面越しで誰かと喋っているという感覚になってしまうからなんじゃないかなと思っている。

まあ、直接それを指摘なんてことはしないけど、構ってちゃんだということをキチンと理解して関わっていくと、可愛さを感じてくる。


だから、もっときっちり仲良くなりたいから、秘密を話してほしいとは思う。

だけど、話したくないって気持ちもなんとなくわかってしまうから、俺には触れられなかった。


やっぱり俺は優柔不断なのだろう。


サツキは自分が当て馬になることで状況が変わるなんてことを言っていたが、それもどうなるかわからん。

はたしてこれからどうなってしまうんだろうな・・・。


あんまり平穏じゃない事態になっては欲しくないが・・・。




―# ナツside #―


アキ、ユキ姉と話し合った結果、私達が本格的にハルタ籠絡に向けて動き出すのは、私とユキ姉の秘密を話してからということになった。

やっぱり、ハルタとの関係を変えるにあたっていちばん重要なのはそこだ。

秘密を隠したまま付き合うみたいなことができるような秘密じゃない。

アキは私達を気にせずにハルタにアプローチを掛けることもできるだろうに、私達が秘密を話すのを待ってくれると言った。


本当にできたいい妹だ。寧ろ私が嫁にほしい妹だ。

まあ、そんないい妹の要請に答えるためにも早めに秘密を話してしまう必要がある。


突如現れた転校生によるプロポーズという脅威。

男の格好はしてたけど、相当美形な子だった。

あの子は普通に女性の格好したらモデルみたいな美人に化けるだろう。

そんな子が私達三人に明らかに喧嘩を売ってきたのだ。

あまり悠長に秘密を開かせずにいれば、ハルタも落とされてしまうかもしれない。

それは嫌だ。急いでなんとかしよう。




・・・さて、秘密を明かすにあたり、私は作戦を考えている。


それも、ハルタが今晩使うと言っていたあの『アプリの代わりに私本人を使え!』作戦だ。


今朝、ハルタのスマホに入れていた全ての女性画像の顔が、私の顔にすげ替えられるというアプリ。

私の持て余す強烈な魅力にメロメロなハルタは、そのアプリを今晩使うと話していた。

本人に言っちゃうとかどうかと思うけど、まあ、使いたいというのは仕方ないだろう。私の魅力がなせる技だ。


実のところ、スマホからはすでにアイコラアプリは消している。

いやだって、私の顔になるとはいえ、他の人の身体をみてハルタがアレするとかなんか嫌だし。

で、多分ハルタは直にその事実に気づいて、世界の終わりが来たと言った感じで落胆するだろう。

そこで、満を持してバニーガールコスプレをした私がハルタのスマホに登場するわけだ。


『使いたいなら私本人を使え!』って言って。


流石にハルタもそれを見てアレをしだすような男じゃないはず。

たぶん・・・あるいは・・・。うん。たぶん。

でもハルタ、結構むっつりだし、だいぶ頭おかしいからなぁ。


まあ、想定通り困惑してアレはしださないという前提で話をすすめる。

多分ハルタはここで何かおもしろコメントをするはずだ。

バニーガールよりもナース服希望とか、そんな感じのやつ。

そのトークに付き合いつつ、ハルタに最終的に『なんでこんなことをするんだ?』とか『画面越しじゃなくてこういうのはキチンと面と向かってしたい』的なことを言わせる。

そこで満を持して私は、『私が画面から出れない二次元嫁だって言ったらどうする?』って言うわけだ。


ハルタの反応を見ながら、私はそこで自分の秘密を語る。

そういう作戦。






うん。










我ながらアホか! 痴女か! ド変態かぁっ!




秘密を話そうと思ってまず思いついた作戦がこれだった。


いやさ、それはさ、ハルタがアイコラアプリ使うって言ったときは、私もハルタを興奮させれるのかってちょっと考えちゃったりはしたよ?

転校生のときも思わずそのことを口走っちゃったし、ハルタの私をオ〇〇ットにする的意味のあの発言は、私の中でだいぶ印象に残ってしまっている。


仕方ないじゃないか。私はハルタに触れられないのだ。

ハルタがそういうことに使うって言って意識しちゃうのは。


だけど自分でも、それをネタにして秘密を話そうとするのはどうかと思う。

だけど、そのくらいふざけてテンションを上げないと、私は秘密を話せない気がするのだ。


うぐぐ・・・我ながらアホみたいなことだとは思う。

でも、だけど、これが一番私らしい秘密の話し方の気がしてならない。




もうバニーガールには着替えちゃってるし・・・あとはハルタがスマホを見ているタイミングでそれをするだけなんだけど・・・本当に私はこれをするのか? しちゃうのか?




・・・ハルタが夕食とその片付けを終えて、自室に戻ってきた。

き、緊張してきた。ど、どうしよう・・・。

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