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12・てんこうせいからのお願い

―#―


授業が終わって放課後。


午後の授業はなんだかずっとヒヤヒヤし続けてしまった。

隣りの席に座るアキが、いつも通りずっと無表情ではあったのだが呼吸だとかちょっとした仕草、いわゆるオーラ的なものから怒りがビンビンに感じられたからだ。


まあ、サツキにあれだけ煽られていたからな。

何かしらフォローを入れるべきだと休み時間などに話しかけてみたのだが、アキは『別に怒ってない』とか、『気にしないで』とあまりうまくなだめられず、結局放課後になってしまった。


「ハルタ、ちょっといいかい?」


放課後になってすぐにサツキが話しかけてくる。

それもわざわざ、俺とアキの机の間のポジションに陣取ってだ。

アキの怒りオーラが可視化できているのではないかというほどに感じてしまう。


「・・・・・・なんだよ」


アキのことは気になるが、無視をするというのも感じが悪いので答える。


「今日はこれから暇かい? 暇なら、できればこの街の買い物できるところを教えてほしいんだ。食料とかな。引っ越してきたばっかりだから、勝手がわからなくてな」


「最近はそういうのはネットで簡単にしらべられるだろ? というか、帰る方向とか住んでるところが近いとは限らないし。そういうのは家の近くの店のほうが便利なんじゃないか?」


「休憩時間に他のクラスメイトに聞いた話だと、僕の住んでいるあたりと君の住んでいるあたりは近いみたいだ。それにネットなんかよりも君の情報のほうが有用な気がする。なんたって君の夢は主夫だしな」


おい、クラスメイト共、簡単に住所がどのへんとか教えてるんじゃねえよ!

そういう個人情報は悪用されることもあるんだぞ! 美形だからってホイホイ求められるままに情報提供してるんじゃねえ!



ガタッ!



アキが大きめの音を立てて立ち上がった。


「・・・部活行く」


ギッと音を立てそうな視線で俺の方を向きながらそう言った。


「・・・ああ、試合近いんだよな? 頑張ってこい」


「部活・・・何の部活をしてるんだい?」


「・・・時間ないからハルタに聞いて」


そう言い残してアキは心なしか足音を強めに立てながら去っていった。

・・・もうこれは晩御飯に最高に美味しいプリンを出すしかあるまい。それだけで機嫌が治るとは思えないが、とりあえずまずはプリンだ。プリンしかない。


「それで、あの子の部活ってなんなんだい?」


「剣道部だ。何回か全国大会にも出てるから結構強いぞ」


「なるほど、だから姿勢が綺麗なのか。それに向けられる殺気も刀みたいに鋭かった」


「あまり俺の幼馴染を弄られるのはいい気分がしないんだが」


「先にいきなり威嚇してきたのはあっちだ。ほとんど面識すらないのにいきなり睨みつけられたんだから、からかうくらいいいだろう?」


・・・なるほど、先程教室に入ってきた時にサツキが足を止めたのは、アキが睨んだからだったのか。

なんでそんなことをしたんだか・・・まあとりあえず、これ以上この話を掘り下げても仕方ない気がするから話題を変えよう。


「お前は部活とか入らないのか? 芸能活動向きの部活とかあるだろう?」


「あー、この学校には演劇部とかダンス部とかあるらしいけど、そこまで本格的でなさそうだったし多分入らないな。それに今は例の痴情のもつれの関係で活動休止中だけど雑誌のモデルとかすることもあるし、あんまり時間が束縛されるようなこともできないんだ」


「・・・そんなにヤバイファンがついたのか?」


「まあ、家族の迷惑を考えて、転校して一人暮らしを始める決意をするくらいの被害はあったとだけ言っておく。正直思い出したくもない」


・・・飲まず食わずで引っ越しをしなければいけなかったくらいだしな。よほどヤバかったのだろう。


「そこまでの目にあったんだったら、もう男装とか辞めて普通にしようとは思わなかったのか?」


「バカ言え。僕はできるだけ長く、色んな人にチヤホヤされて、わーきゃー言われ、注目されて目立ちたいんだ! それをするためには僕のこのイケジェンフェイスを活かすのが一番効率的なんだ! だから、厄介な目にあった程度では僕はその欲望は抑えきれない!!」


「承認欲求強すぎだろ! ガチで私利私欲の塊みたいなヤツだな!」


女子がカッコイイを追求することで人々に意識革新を起こすみたいな理由じゃなく、単純に自分の欲求のためってのがデカイのかコイツ・・・。

まあでも、そっちの方がうまくいく気もするけどな。

大層ご立派な思想を持っていたところで、やはりそれをやりたいという強い思いがなければそれを貫き通すことは難しいだろうからな。


「イケジェンアイドルのことを考えれば、本当のところは転校せずになんとか収めたかったところだったんだがな。だけど、家族まで僕のワガママで被害を受けるというのは流石にダメだと思ってな。まあ、結果としてこうしてハルタみたいな便利物件・・・もとい、興味深い人物に出会えたんだ。結果オーライというべきだろう」


「おい、日本語はもといと言えば言葉にしてしまった本音がかき消せるほど便利にできてないぞ」


「あとでお姫様抱っこで学校中を練り歩かれたくなかったら忘れてくれ」


「脅迫して忘れさせようとするんじゃねぇ!」


「まあ、そんな些細な話はおいておいて、買い物場所を教えてくれよ、便利な踏み台野郎」


「さっきよりひどくなってるじゃねえか! ・・・はあ、まあ、今日は俺も買い物に行く予定だったしついででいいけどな」


これだけ色々言われても、言われた通り案内してやるあたり、俺はお人好しなのだろうか。

まあ、振り切って逃げるってほどのことをされてるわけでなし、頼まれていることも些細な事だからな。

寧ろ早く案内してやって話を終わらせたほうが手っ取り早いだろう。


俺はサツキを連れ立って学校から出ようと歩き出した。




校門前。

俺はやっぱりサツキを振り切っておくべきだったかと後悔した。

あの後ろ姿からでも分かる美巨乳、そしてウサギの頭を被った女生徒。

この校内であの美巨乳を持ち、顔をきぐるみで隠している女生徒は一人しかいない。

ユキ姉だ。


まさか転校した初日にサツキに音成シスターズとの遭遇をフルコンプリートさせることになるとは・・・。

今から引き返してサツキと遭遇させないでおこうと思ってももう遅い。

俺があの美巨乳を視認できるほど近づいたということは、ユキ姉が俺の足音を聞き分けて、俺の存在に気づく範囲内に入ったということだ。


そしてやはり、ユキ姉は不意に後ろを向いて、こちらを確認した。


「あ、は、ハルちゃ・・・」


可愛らしい声でこちらに呼びかけようとしていたユキ姉の動きが止まる。

たぶん、俺のとなりにいるサツキを見つけたのだろう。


サツキを見れば、俺の反応と目の前のきぐるみのユキ姉を交互に見て、悪い笑顔を浮かべる。

そんな笑顔でも様になる美形なのがムカつく。たまには不細工になりやがれ。


これ以上ややこしいことにならなければいいのにと思いつつ、遭遇したからには仕方ないので、俺はサツキを伴ってユキ姉のもとにすすんだ。

遅くなった上に少々短めですいません。

休日は爆睡しすぎてしまう癖をなんとかしたいです。


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