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11・てんこうせいの宣戦布告

―#―


ビクッ!


なんだろう・・・サツキとの話のあと屋上から教室に帰り、一人自分の弁当を食べていると背筋に寒気が走った。

なんだろうこの悪寒・・・風邪かな? 家事をひとしきりやっている俺が風邪でダウンしてしまったら大事だ。音成家でまともに家事をできるのはアキだけだからな。

そのアキも部活やら生徒会やらと色々忙しくやってるので、あまり家の雑事に手を煩わさせたくない。

まあ、あれだな。今日は精の付くものを食べて、暖かくして寝よう。


サツキは学食に向かったようだ。

今朝何も食べれずに倒れていたが、金は持っていたらしい。

住宅地に入り込んでコンビニ等をなかなか見つけられず、気づいたら朦朧として倒れたそうだ。

なんというか、サツキは確かに他人の支えがないと生きていけないタイプの人間に思えた。

口はデカイし行動力もあるが、大成するには他人の助けがいるタイプ。


・・・顔やら星の巡りがいいからか、たぶん今まで当たり前に他人から助けを受けれていたんだろうな。

そうでなければ自分の夢のために俺に結婚しろなんて、思いっきり他人を頼る気満々の要求をできるわけがない。

他人に助けを求められる人間というのは、他人から助けられ慣れている人間でもある。

他人の善意や親愛を信じられる人間でなければ、相手が助けようと伸ばす手は掴めない。

善意や親愛よりも、悪意や憎悪の感情を信じている人間は、助けの手を信じられずに払い除けてしまう。

助けを求めるという行為を取れるということは、相手の善意を信じているということの裏返しでもあるのだ。

そういうのも一種の才能だと思う。


まあ、あれだけ美形なら相手によくしようと近づいてくる人間は多いのだろう。善意に触れることが多ければ、人は善意を信じられるようになりやすい。

まあ、なんだかんだかくいう俺も、理由はともかくアイツにマイケルの弁当をあげて助けたわけだしな。

なんだかホント、人生ベリーイージーという印象だ。どちらかと言えば助けられることよりも助けるほうが多い気がする俺とは大違いだな。

まあ、人を助けることは嫌いじゃないからかまわないんだけども。


昼休みの終わる少し前に弁当を食べ終わり、片付けをする。

すると、教室にアキが帰ってきた。


「おう、アキ、さっきは弁当ありがとな!」


「別にいいよ。ただ、今日は手作りプリンが食べたい気分かも」


「・・・そうか」


・・・今夜のデザートに作れということだろう。

今日は買い物をして帰る予定だから、美味しいプリンの材料を揃えて帰ろう。

アキはこんな風に何か頼んだときくらいしかワガママを言ってくれないからな。

張り切って作ってやろう。


「・・・・・・・・・・・・」


メモ帳に忘れないようにプリンのことを書き込んでいると、視線を感じた。

見ればアキがなんだか意味深な目で俺をじっと見つめていた。


「・・・なんだよ」


「・・・・・・」


アキは何も言わずに意味深な表情で俺の目を見つめ続ける。


「・・・・・・ホントに何なんだよ」


「・・・べっつに~?」


アキがほんの少しだけ顔に笑顔を浮かべてやっと俺から視線を外す。

なんなんだ? もしかして顔にゴミとか目ヤニとかついてるのか?


そう勘ぐって顔を色々触っていると、アキが言った。


「・・・そういえばさ、転校生はどうしたの?」


「ああ、アイツなら・・・あっ」


噂をすればなんとやらで、タイミングよくサツキが戻ってきた。

戻ってきたサツキは俺を見つけてにこやかにこちらに歩いてくる。

が、一瞬表情が固まって足を止めた。

顔の方向から見てアキの方を見て足を止めたようだ。


なんだろうと思って横を向けば、いつもの無表情でサツキを見ているアキがいた。

なんだかちょっとだけ怒っているような印象を感じる気がする。いや、気のせいか?


足を止めていたサツキが再び動き出し、こちらに近づいてきた。


「今、2人で何の話をしてたんだい?」


まるで足を止めたことがなかったかのようにサツキが聞いてくる。


「・・・・・・」


サツキの方を見ているがアキが喋りだす様子がなかったので、俺が答える。


「ちょうど、お前の話をしようとしてたとこだよ。たぶん屋上でのことが聞きたかったんだろ?」


まあ、俺はアキにサツキからプロポーズまがいのことをされたことは話すつもりはなかったけどな。

断った話だし、あまりおいそれと人に話す内容でもないだろう。

まあ、盗み聞きしてたナツがアキに話す可能性はあるけど。

まあもしそれで内容を聞かれたら改めて断ったことを答える、くらいでいいだろう。


「ああ、その話か。実は僕がハルタにプロポーズして、ハルタがそれを断ったんだよ」


サツキのその言葉に、教室全体がザワっとなった。


・・・あれだな、クラスメイトの奴ら話には混ざってこないけどイケジェンのサツキが何を話すかは興味があって聞き耳立ててやがったな?


「それをお前が自分で言っちゃうのかよ」


「事実だしな。隠すことでもない」


「いや、普通に隠してほしかったんだが。めちゃめちゃ目立ってるし」


教室中でこちらをチラチラ見ながら皆がざわざわ喋っている。

面倒な噂が立ちそうな気配がBinBinじゃないか。

よしんば話すにしても、こんな人目の多いところじゃなくてよかっただろうが。


「ちなみに今回は振られたけど、僕は今後もハルタにアプローチをするつもりだ。彼を僕のものにしたいからね」


先程よりも少し声を張って、サツキがそう言った。

何故か、アキの方に爽やかなイケジェンスマイルを浮かべながら。


教室のざわざわが一層大きくなる。


俺は視線の流れでアキの方を見た。

一瞬ぎょっとしそうになった。

アキが今までに見たことのない顔でサツキを睨んでいた。


が、俺がそっちを見たのを一瞬見て、その表情が普段の無表情に戻る。

・・・いや、先程の表情を見た後だと、表情を抑えているだけの印象もある気がする。


アキが一息ふうと息を吐く。

それで一旦落ち着いた上で、アキはサツキに目線を向けた。


「それって宣せ・・・」


キーンコーンカーンコーン・・・。


アキの言葉は予鈴に阻まれた。


「おっと、予鈴がなってしまった! 早く授業の準備をしないと!」


芝居がかった仕草で移動を始めながら、サツキがそう言う。

対して言葉を阻まれたアキは、なんだか苦虫を噛み締めたような表情をしている。


去り際に急にサツキが踵を返して俺の耳元に口を持ってくる。


「(どうやらこっちの幼馴染も、楽しい反応をしてくれそうだな)」


それだけいうと、サツキは再び自分の席に移動を始めた。


「今、あの人なんて言ったの?」


アキが聞いてきた。


「いや、アイツは・・・」


「ハルタ!」


サツキが大声で俺を呼び止める。

声を聞いて俺がサツキの方を見れば、サツキはウインクをしながら口に爽やかなイケジェンスマイルを浮かべながら、そこに人差し指を一本立てて当てていた。


くそう、さすが美形、そんな仕草だけでもいちいち絵になりやがる。


ふと気になって見れば、アキはまた俺の見たことのない表情をしていた。

結構長いこと一緒にいたが、ここまで感情的なアキを見るのは初めてだ。

まだ見ていないアキの新しい一面を見れたことが少し嬉しい。いや、このタイミングでそれを感じるのはあれなんだろうけども。


教室は昼休みが終わる寸前だと言うのにざわざわが最高潮に達している。

これは、明日には校内中に噂が広まっていそうな気がする。

ただでさえアキは学校の有名人姉妹、音成シスターズの一角なのだ。

そして向井サツキの存在も、容姿、言動、そしてイケジェンと、話題に事欠かない。


多分サツキはイタズラ好きでもあるんだろうな・・・。

今のところ俺を手に入れるっていう目的よりも、姉妹たちをからかうというイタズラの方を優先している気がする。


しかしサツキよ。この千角野高校では、音成シスターズは取扱い注意で危険物指定がされていることがこの学校の不文律なんだぞ? その一角を2人もおちょくったことの意味を、お前は理解できているのか?

・・・理解できてないんだろうな。来たばっかりでそんなこと知らないだろうし。




・・・胃が痛くなってきた。

平穏を望む俺の生活に、また不穏なことが起きそうな気がしてならない。

三姉妹 vs イケジェン

ファイ!


今のところヒロインの人気って誰が一番あるんですかね?


あと数話ラブコメさせたあと、いい加減引っ張りすぎている姉2人の正体について触れるつもりです。

オモシロイと思ってもらえる正体ならいいんですけどね。正直なところ、どういう反応をされるか想像がつきません。


ジャンル別の週間ランキングで4位になれてました。

正直、タイトルやあらすじでは内容全然わからないし、なろうで流行ってるダダ甘系でも婚約破棄系でもないこんな作品がここまでたくさんの方々に見ていただけるとはホンキで思っていませんでした。

とても嬉しいですw


この御恩は面白いものを体力の持つ限り毎日お届けできるよう頑張ることで返そうと思っています。

今後もお付き合いいただけると幸いですw

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