奇跡が残した傷み
彼は彼女を太陽と言い
彼女は彼を月だと言った
互いに違う世界で
生きていくはずだった
夕闇に消えていく太陽と
妖艶な輝きを放ち始める月
一瞬の出逢いが
たった一度の奇跡になる
運命と呼ぶべきいたずらが
惹かれあい、翻弄し、引きずり合う
一生消えることのない強烈な傷跡を残す
月に触れるたびに
彼女は許されない世界に思いを馳せる
今日も出逢えたと幸福を感じて
今日も囚われていたと
絶望が押し寄せる
涙の雨が
心に深く染み込んで
傷を広げていく
ゆっくりと、確実に
時が癒していくとしても
時に癒されていくとしても
互いの世界に還って
何事もなかったかのように
輝き生きていく運命
奇跡は彼方に残されたまま
彼女の記憶も残されたまま