タイムストーン
雷がグランドキャニオンの間にある赤い石に当たった。砂や石をお土産として持ち帰ろうとする観光客もいたにも関わらず、その赤い石は1万年もの間ずっと同じ場所にあった。赤い石は重くて、そこから動かすことはできなかった。しかし、雷が石に当たった後、ある老人の男性がそれを拾うことができた。老人の男性の手の中で石は急に軽くなった。この老人の男性は色んな才能を持っていた。空手ができる。大学生の頃からずっと続けている。
老人の男性はこの石を孫のサミュエルにあげた。サミュエルはサムというあだ名で好奇心旺盛な男の子だった。この石を祖父から受け取った時、手の中に何かとても強いものを感じた。彼は木のビーズやひもを石につけて、ネックレスにした。赤い石は美しく輝いた。
老人の男性はサムを小さな洞窟に連れて行き、「見よ、サム。鳥が風にのって飛んでいる。風で木々も揺れている。空を見よ、太陽を見よ。これまでもこれからも何百万年と存在し続ける同じ空と太陽だ。」
老人の男性はサムにネックレスの赤い石を握るようにさせた。「これを持って、目をつむって、過去か現在か未来のある時代を思い浮かべるのさ。石はどこへでもあなたを連れていく。この石はタイムストーンというのだ。」
サミュエルは赤い石を強く握り、目を閉じ、恐竜の時代に自分がいるのを想像した…
恐竜が大きく鳴いて、サムの後を追いかけてきた。サムは小さな洞窟に逃げ込んだ。洞窟の中に老人の男性と犬のマットがいた。
「これはあなたの想像ではない。本当に起きていることだ。この犬を連れて行きなさい。彼があなたの仲間である。」
そう言って老人の男性は消えた。
マットは吠えて、洞窟の外へ行った。
「マット、ダメ!」
サムは走ってマットを捕まえた。恐竜の口がサムとマットに近づき、サムには恐竜の歯まで見えた。
サムはタイムストーンを握り、目を閉じて、急いで中世のヨーロッパの時代を思い浮かべた。
サムは豪華なパーティーに自分がいることに気づいた。部屋は絹の赤いリボンのようなカーテン、磨かれた床と天井からの大きなシャンデリアで飾られていた。
「犬は入場禁止です。更衣室で着替えてきてください。」パーティーの管理人は言った。
サムは更衣室に行き、マットのための首輪と革ひも、そして洋服までも見つけ、自分用のタクシードとスーツも見つけた。彼はマットの革ひもを外の木につなぎ、パーティーの中へと入っていった。
彼は何人もの美しい女性と踊った。それぞれピンク、青、エメラルドや紫のドレスを着ていた。とても楽しかった。彼は腕が痛くなり、足が疲れてくるまで踊った。
やっと彼は外に出てきて、マットのひもをほどき、タイムストーンをつかんだ。目を閉じて日本での侍の時代を想像した。
侍は大声を上げながら、互いに戦っていた。剣が音を立てながらぶつかり合い、多くの者は馬から落ちた。
サムとマットは高い丘の上からこの戦闘場面を見ていた。
「迫力あるね」サムはマットに言った。
「でも一体何のために争っているんだろう?より高い地位?国をコントロールするため?」
「出血したり、傷つけられるのは嫌だけど、自分の信じるもののために戦うのはすごいことだと思う。ただ、僕にはその勇気がない。もっと平和に静かに生きたいな。」
そうは言っても、マットはタイムストームを握り、目を閉じると、今度は第二次世界大戦中のハワイのことを思い浮かべた。
パールハーバーは日本からの空襲を受けていた。空から爆弾が飛んでくると、恐怖の悲鳴が聞こえた。
ハーバーに座りながら、サムとマットは空を見た。爆弾が彼らに向かって飛んできた。
サムは日本でも同じであろうと思った。アメリカが日本に復讐の空襲をしているであろう。
「復讐の何がそんな大事なのか?」
サムはタイムストーンを握り、目を閉じて、2075年のアフリカにいることを想像した。
2075年にはアフリカの町は、2050年に発明された太陽光サテライトによって明るくなっていた。
学校では、黒人の男の子や女の子は素直に先生の言うことを聞き、教科書を読んでいた。
サムはより多くの子どもたちが学校で授業を受けられているのを見て安心した。
明るい未来を期待できるかもしれない。
彼はタイムストーンを握り、目を閉じて、2200年の南アメリカの未来を想像した。
サムとマットは高いビルの中にいた。車やバス、電車や船がビルの周りを飛んでいた。
「わぁ、すごい。」サムは叫んだ。「カッコイイ。」
するとある男性が突然彼らの前に現れた。「こんにちは。私は即時ワープシステムについて広告しに来ました。このボールを握り、目を閉じて、どこに行きたいか想像すれば、あっという間にそこに連れていってくれる。」
次に、ある女性が現れ、「こんにちは、私はアナウンサーです。人々がたったの10万円で月や火星に旅行に行っていること、ご存知でしたか?」と話しかけてきた。
もう一人男性が現れ、「私は市長です。あなたがたはこの町の住民ではない。どこから来て、ここで何をしているの?」と聞いてきた。
そして、次から次と男の子や女の子、男性や女性が現れ、みんな一斉に叫んでいた。
このカオスに耐えられず、サムはタイムストーンを握り、アメリカ合衆国での現在を思い浮かべた。
次に目を開けた時、彼は祖父と話をした小さな洞窟に戻っていた。
「おじい様!」
老人の男性は小さな洞窟の丸太の上に座っていた。彼は立ちあがり、「タイムストーンを渡してくれ。」と言った。
サムは従順にタイムストーンのついたネックレスを外し、老人の男性に渡した。
老人の男性はサムとマットを洞窟から連れ出し、グランドキャニオンの下まで連れて行った。彼はネックレスからタイムストーンを外し、元の位置に戻した。
「この石は千年の間きっと動かないだろう。洞窟に来なさい、そこでもう少しお話をしよう。」
老人の男性とサムとマットは再び小さな洞窟の中に入った。サムとマットはまだ中世ヨーロッパの服を着ていて、少しおかしかった。
「聞いてくれ、サム。私の話を聞いてくれ。過去は変えられない。恐竜や中世ヨーロッパ、侍やパールハーバーでの空襲。これらの時代は過ぎ去っていて、もう二度と戻ってくることはない。しかし、未来は変えられる。今何をするかによって未来は変わる。それなので、タイムストーンの内容の半分は絶えず変わっている。覚えておいてほしい。タイムストーンは半分変えられて、半分変えられないことを。」
「正直に生きるのさ。他の人に経験したことを伝えるといい。趣味を見つけるといい。私は日本が好きだから、空手というスポーツを練習している。どの国が好きだったかい?その文化のどんなところが好きだったのかい?」
サムは答えた。「分かりました、僕は自分の経験したことを他の人に話し、正直に生きます。僕は中世ヨーロッパやダンスパーティーが好きだった。もしかしたら社交ダンスを趣味にするかも。」
「それはいいことだ。」老人の男性はそう言って微笑み、目のふちに皺が寄った。
赤い石はグランドキャニオンの間に残った。そこに残り、雷がまた落ちてくるのを延々と待った。またいつか、冒険者に拾われ、その人の存在する価値をその人に教えてあげるために。