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トモヒコ、小六の夏(1)

 もう遠い記憶だけれど、小学生最後の夏休みは、ちょっと忘れられない思い出がある。


 夏休みに入ってからは、近くの神社にいることが多かった。

 六年生にもなると、近所をうろうろしてその辺の大人に話しかけられるのがおっくうになってくる。なぜか犬とおばちゃんには好かれる子供だったから、なおさらだった。

『湯川君とこの智彦くんじゃない? 来年から中学生なの?』 『どっか旅行いくの?』

 ……そんなことを一方的に聞かれても、楽しい会話でもないし、答えたところでうちの親に会ったらまた同じ話が始まる。夏休みともなると、答えようのない質問が増える。

『夏休みは何してるの? 宿題は終わった?』 『お手伝いはちゃんとしてるの?』

 明らかにどうでもいいくせに、そんなことを聞いてどうするんだろう。学校は学校でうざったいところもあるけれど、家や近所をうろうろしているのもなんとなくうざったい。そんな時にはよく、家の裏手にある神社に行った。

 駅や国道が入り組んでいる、ごちゃごちゃとした住宅地にある小さな神社。国道周辺の街路整備で土地を掘り下げて整地したせいか、梅鷲町は坂道や段差が多く、取り残されたように小さく盛り上がった場所に、その神社はあった。

 正面側の鳥居や参道は緩やかな傾斜になっていたけれど、裏手側は落差が大きくて、三メートルほどの崖になっていた。崖っぷちには落下防止のための柵があって、その下には細い道が通っている。

 大きな神社と違って、ここは普段ひとけもなく、境内は静かだった。なんとなく苦手になってきているおばちゃん達もいない。大きな杉の木が重なるように立っていて、外から隔たれた別世界のようで居心地がよかった。日陰も多いので少しだけ涼しい。

 自分以外にもこの場所をお気に入りにしている子供がいたらしく、時々二人の女の子を見かけた。遠目にこっちを見ながら、なにやら楽しそうに二人で話している。

「お姉ちゃん、昨日の子かな、今日も来てるよ」

「ここ、いい場所だもんね」

 近所の子みたいだけれど、だとしたら学校も同じなんだろうか。二人とも覚えのない顔だから、学年が違うのかもしれない。

 お互いを邪魔するでもなく何日かを過ごし、なんとなく言葉をかわすようになった。

 『どっちに住んでるの』とか『なん年なん組』みたいな、どうでもいい質問にうんざりしていたのは自分だけではなかったらしく、二人の女の子も一切聞いてこなかった。

 二人の女の子は髪型も背の高さもほとんど同じで、おそろいのノースリーブのワンピースを着ていた。シンプルな白い服なので、深緑の背景によく映える。夏らしい格好をした二人が、半袖姿の自分に笑いかけた。


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