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幼馴染と隠しナイフ:原罪  作者: 氷ロ雪
蜜蜂と接合藻類
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右の靴

みつけたね。もう片方の軍靴と黄金の芳香。

 脱ぎ捨てられた彼女の右靴、そして血の付いたナイフ……普通なら、この通路の先に待ち構えているものは、杉村の傷ついた姿だが……彼女が僕の知るハニー=レヴィアンなら敵う人間等居るはずが無い。確か彼女のお父さんは裏社会では最強の元傭兵だとかで、その技能を完全に引き継いだのが彼女らしい(あくまで幼少期の本人談なので疑わしいが)。

 その実、近所の年長組にいじめられた時とか助けて貰っていた。大抵、一瞬で相手を病院送りにする事から近所では”黄金銃”と呼ばれていた気がする。ミリタリーマニアでもある彼女は、もしかしたらこの7年間を英国での特殊訓練にでも費やしたのかも知れない。勝手な推測だけど。


 さて、どうするか。


 彼女はもしかしたら入れ違いで教室に戻っている可能性もあるけど、さすがにこの僕の持っているジャングルブーツを置き去りにするとは思えない(仕掛けられているはずも無い罠を恐れている為)。


 僕はナイフをブレザーの胸ポケットにしまい、周りの物音に注意を払う。僅かだが人の声が聞こえて来る。


 「……はなんだ?!答えろ」


 「僕はただ……」


 男子生徒と女子生徒の声が聞こえてくる。恐らく一方は杉村蜂蜜のものだ。相変わらず澄んだ声だ。凄みはあるけど。そのまま階段を登って行くと、男子生徒を地面に叩きつけ、跨るようにしてナイフを相手の喉元に突き付ける杉村蜂蜜の姿があった。


 幸い相手の男子生徒に命の別状は無い。


 黒いスラックスの太腿の所が一直線に切り裂かれている位だ。血はほとんど出て無い。ナイフを突き付けられている男子生徒は黄色いネクタイを着用している事から1年生だと判る。顔つきもどこか幼さが残る。


 杉村蜂蜜の激が飛ぶ。


 「もう一度聞く!所属と氏名、目的を答えろ!」


 気の性か優位なはずの彼女の声は焦っているようにも思えた。


「だから、言ってるじゃないですか。剣道部所属の1年、鳩羽はとば 竜胆りんどう。貴女と話がしたいだけです!」


 杉村は何か躊躇しているように、ナイフを引っこめようとしない。


「敵か、味方か?」


「ファンなら、味方でしょ!?」


 半ば呆れ気味に答える少年。

 無駄だよ、その子には常識は通用しない。


 「ちょっといいかな?お2人さん?」


 僕が声を鋏むと、何かいけないものを見られた様に慌てて杉村が少年から身を離す。そしてスカートの裾を正しながら彼女がいつものお決まりの台詞を僕にも下す。


 「所属と氏名を答え……て」


 「僕は君のクラスメイトの石竹緑青。君は覚えて無いかも知れないけど、これで名乗るのは5回目。いや6回目かな?」


 「……目的は?」


 「君を教室までエスコートしに来た騎士だよ。お姫様?」


 その言葉になんだかよくわからない反応を示す杉村。気の性か頬が赤い。改めて視線を倒れている彼に合わせる。


 「……一年の鳩羽君だっけ?彼女のファンだからって、不用意に近付いちゃいけないよ?全校生徒に専門家からの勧告も出てるし」


 「いいんです、彼女に殺されるなら本望です」


 「……」


 「な、なんですか!先輩!その冷やかな目は!それに先輩はずるいですよ!いつも何かあれば先輩が彼女を連れ戻したりして、しかも校内で公認のカップルだ、羨ましいです!」


 「いや、僕はたまたま彼女の捕獲係を教員達から命じられているだけで、恋人ではない(幼馴染みである可能性は高いけど)」きっぱりと否定する僕。


 先程の彼女の質問から、僕は名前も覚えられていないというのに。その答えに微妙な表情をする杉村。


 対する少年は、怒りを露わにした表情をする「嘘だ、先輩は確か……石竹緑青先輩ですよね?噂では彼女の幼馴染って……」その言葉を遮るように僕は口を鋏む。


 「はいはい、僕の事はいいから。それより君ね、いくらストーカーとはいえ……女の子の下履きを持ち逃げしてコレクションしようとするのはよくないよ、まさしく変態的行為だ」


 あれ?2人の視線がブーツを大事そうに抱える僕の方を見る。


 「え、いや、先輩?僕は何も……靴は持ち出してませんよ?靴を持って僕を追いかけてきたのは、杉村先輩ですし……それを僕に投げつけたのも杉村先輩です。ほら、見て下さい。このたんこぶを。なぜ靴を持って僕を追いかけてきたのかは謎ですが……」杉村蜂蜜の顔がみるみる赤くなっていく。


 近付いてくる杉村、どこにどう隠しているかは解らないけど、背中に収納しているトンファーを取りだし、両腕に装着する。


「私が靴を持って歩いていたのは、怪しい男が「女王蜂クイーン」の靴箱に何かを仕掛けた気配があったからだ。それより、石竹緑青!女王蜂の靴を大事そうに抱えて……貴様こそ……変態」彼女は全てを言い終わらないうちに、何の迷いも無く僕にそれを振り下ろした。


 脳が痛覚からの信号を感じる前に、視界から全ての光が一瞬にして消えた。


 あれ?僕は殴られないと思ったのに、違ったみたいだ。それにさっき、僕の名前を……?そして僕はその場に倒れ込んだ。 

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