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幼馴染と隠しナイフ:原罪  作者: 氷ロ雪
救世主と藻。あと蜂と星。
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コキ❤ひな

復讐の緋の少女湯煙に惑う。私も入りたいな。大丈夫だよ!貧乳はステータスだよ!

「なんなのだ!これは!」


 こんにちわ。

 佐藤深緋です。


 私は今、地獄にいます。


 茹でられた釜からフツフツとわき上がる湯煙を纏って一糸纏わぬ天使が、浴場を横断していきます。湯気の羽衣を纏った天女はその白い肌と魅力的な体を揺らし・・・・・・。


「おい?佐藤?どうした?さっさと入れ」


 そう私の背を押してきたのは担任の荒川先生です。

 先陣を切って浴室内に突撃アタックをかけた杉村蜂蜜さんの黄金の軌跡がいつまでも辺りに漂っている様でした。


 荒川先生がいつまでも平べったい体にタオルを巻いた私に呆れて中に入っていきます。


 さすが大人の女性です。


 腰にしかタオル巻いてません。

 むしろ杉村さんは丸腰です。


 さすが欧米かっ!


 大人な荒川先生の背中にあるものを発見たような気がしました。

 それは・・・・・・幾つもの傷跡でした。


 背中や腰、胴体に集中している様でしたが、あれはおそらく刺し傷やひっかき傷、裂傷などです。随分と古い傷の様で普通の人ならスルーしてしまう程度ですが、私の目はごまかせません。


 私の脳内には、数千パターンの傷跡の映像がインプットされています。

 あぁ、あれは恐らく、カッターやハサミ、どちらかというと、殺戮目的に作られたものによる傷ではありません、あれは文房具などの系列によってつけられた歪な傷です。


 傷跡は消えかかっている為、分かりませんが、あの角度の入り方は、抱き合った相手からつけられたものです。しかも、本人に抵抗の意志が無かった様な素直な傷のつけられ方です。


 それは私の知らない大人の世界の事情なのか、事件性のものかの判別はつきませんが、これには触れないでいた方がよいでしょう。


 それにしても、杉村さんは一転して、あれだけの数の刃物をかつて持ち歩きながらも、その体には傷一つついていませんでした。


 「第四の少女の姉よ、早く進むがよい。こんな所で立たされていては妾も恥ずかしいぞ!」


 私は、杉村さんの芸術的な肉体美に打ちのめされてどうかしていたようです、思考回路を元に戻さなければなりませんね。


 「あ!すいません、日嗣さん」


 「よい、それより、先ほどは魚をぶちまけてすまなかったの」


 「いえ、結局杉村さんが全部キャッチしましたし・・・・・・」


 「それだけではない、石竹君が折角お主を受け止めたのに、妬きもちを妬いた天使に体当たりされる状況を作ったのは私じゃ、すまぬ」


 「いえいえ、こうして温泉があってよかったですし」


 「それもそうじゃの」


 と一転してけろりとして、少し音のはずれた鼻歌を歌いながら湯気の中に消えていく日嗣さん。

 そのすらりと伸びた綺麗な形状の白い足が、私の視線を釘付けにしてしまっている事など知る由もありません。


 あぁ。なんという悲劇でしょう。


 心理部関係者は、ランカスター先生といいどうしてこんなに、私をおいてスタイルが神がかっているのでしょうか。


 私は、肩を落とし、貧相な肉体を見下ろしながらおずおずと湯船へと向かいます。大丈夫、まだ17歳、まだ希望は捨てません。まだまだ成長期です。


 既に杉村さんと、荒川先生は中央に備え付けられている一番の広さを誇る湯色が乳白色色の湯船に浸かって温泉の効能を満喫しているようです。


 私は、日嗣さんに並ぶようにして、体を洗おうと思います。


 「はぁ・・・・・・」


 思わず出た私のため息に気付いたのか、綺麗な銀の髪を洗う日嗣さんがそのままの姿勢でこちらに声をかけてきます。


 「深緋さん、元気ないようじゃの」


 「え、そうですか?」


 「何に落胆しておるのじゃ?」


 私は横目で日嗣さんのほっそりとしていて、それでいて丸みのある白い体を見て落胆しま・・・・・・す?


 湯気で解りずらかったのですが、背中の腰辺りに、無数の引っかき傷を発見したのです。古いものから、新しいものまで。この傷は、自傷癖のある人間によく見られる傷です。


 私は嫌な予感がして、手首の方にも視線をやりました。


 手首の方に傷跡は・・・・・・一つ?いや、深すぎるから、皺かな?


 「お主、妾の体が・・・・・・目当てな・・・・・・の?」


 日嗣さんがいつもと違う、普通の女性の言葉使いで怯えてしまいました。


 「ち!違います!その、見てすいませ・・・・・・」


 日嗣さんが、風呂桶に溜めたお湯を頭からかぶり、シャンプーの泡を落としました。


 「佐藤深緋、連続少女殺害事件で被害にあった少女の姉。心理部(仮)での課題は確か、犯罪心理学。特に快楽殺人者と呼ばれた犯人のプロファイリングに情熱を注いでいる・・・・・・」


 「日嗣さん?まさか、私のロッカー見たんですか?あの資料も!?」


 気の性か怯えた表情をした日嗣さんが、こちらに向き直る。


 「いいえ、あなたがまとめたあの事件のファイルだけは見れなかった・・・・・・丁度よい、あの二人を交えて、事件の事について話しておこうかの」


 そういうと、日嗣さんは立ち上がり、お風呂用具を抱えて荒川先生達の

所に向かって歩き出した。


 私は慌てて体を洗うと、その後を追いかけていく。

 今日、初めて顔を合わした銀髪のお姉さんが何を知っているというのだろう?


 私はあの”八ツ森市連続少女殺害事件”の捜査資料なら何度も読み返し、実際に何度も現場に出向いた。


 警察に居る知り合いの刑事さんとも協力して、コツコツ情報を集めてきた。でも、実際に妹を殺した犯人に至る確固たる情報は未だに得られていない。ただ、9割方の推測は出来ていると思うけど。


 ふと、私は数年前に目を通した資料に「日嗣」という名前がどこかに出てきた事を思い出す。


 どこで見たんだろ?


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