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蠢く蜂

救世主に関わる少年。その姿を消す。肌を這うは蠢く蜂。貴方はまさか?

 山奥の廃棄された工場の敷地内で、八ッ森高校に通う「新田にいだ とおる」は目を覚ます。


 「なんだここは?え、えぇ?」


 工場の鉄筋の柱に鎖で全身を固定された新田が、自身の置かれた状況に困惑している。その様子を伺うように、影からその姿を現す杉村蜂蜜。


 月明かりに照らされている部分が黄金の光を放ち、彼女の辺りに漂う。


 「杉村・・・・・・だよな?あの2年A組に転校してきた女子」


 新田の腹部に巻かれた鎖越しに、杉村の蹴りが入る。腹部へのダメージはほとんど無かったが、女子に蹴られたという事実に新田は困惑する。


 「お前、あれだろ?ち、近づく人間に見境無く襲いかかるイかれた女、確か犯罪者の息子、石竹の女だろ?」


 無言で新田の顔に裏拳を放つ杉村。


 その衝撃で口の中を切った新田が悪態をつきながら、血を口と鼻から吐き出す。


 「このくそ女!俺は他の男みたいに、お前なんかに」


 無言で足を踏み砕く杉村。


着用している鉄板仕込みのブーツから放たれた一撃が、容易に新田の足の指を壊す。


 「ぎぇぐ!!」


 その痛みに耐えきれず、新田が巻かれている鎖に身を委ねる。


 「お”俺が!何したっていうんだよ!」


 杉村が音もなく、腿にベルトで固定されたナイフを引き抜く。月光に反射する銀の輝きが新田目に届き、恐怖を増幅させる。


 「さっき言った事なら謝るから!この鎖を解いてくれよ!」


 新田は、懐に忍ばせていた小型のナイフを探るが無駄だった。その動きを感じ取った杉村がそれに答えるように口を開く。


 「拘束した敵の武器の所有を確かめるのは常識でしょ?小さなナイフと、鞄にあった改造銃はここにあるわ」


 杉村から、発せられた声は冷たく、何の熱も帯びていなかった。新田は廃部になった軍部に所属していた事から、この状況が何を意味するのかは直感的に理解していた。捕虜に行なう拷問だ。


 ナイフを一閃、横に引くと何の音もなく新田の上着が切り裂かれて、その薄い胸板が血を帯びて露出する。


 「嘘だよな、おい!」


 自分の心臓に近い位置から流れる血を見て、困惑する新田。ナイフを自分の腿にしまった杉村は近くに放置されている新田の鞄から、玩具の銃を取り出し、その照準を新田の左目に合わせる。


 「安心して?皮一枚、切っただけだから。死なない」


 「安心出来るか!それより、目の前のそれをどけろよ!」


 銃から硬質的な音が響き、半壊している工場の内部にその音が広がっていく。いくつものガラスが割れる音が付随して反響する。


 「な、考えてんだよ!目が潰されたかとっ!」


 「これ使って、校舎のガラス割ったのよね?次は目よ?多分、眼底には届かないと思うけど、失明は免れないわね。片目失う覚悟はある?」


 新田が砕かれた足で無理矢理踏ん張り、可能な限り顔を杉村から反らす。


 「校舎?何の事だよ?知らな」


 玩具の銃を上空に放り投げる杉村。

 それにつられて、顔を上げる新田。


 ゆっくりと空を舞い、落下運動を開始する前に杉村が今度は別の銃を背中から取り出すと躊躇無くその引き金を引く。


 重い発砲音が、新田の腹低に響く。そして爆発音と供に銃の本体が破裂した様に四散する。


 新田は直感的に理解する。


 杉村は本物の銃を使い、偽物の銃を破壊したのだ。


 「安心して?あなたが襲撃事件に関わっていた証拠は消しといたわ」


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