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星の教会

銀の少女はもう一つの姿を現す。貴女の事を私は知っていた?

図書委員の木田沙彩協力の下、図書室で調べ事をした日、僕はカウンセリング室前で日嗣尊姉さんの着替えを待っていた。


その時間を利用して、制服のブレザーを脱いで、風が当たる位置にそれを干す。そして自分自身も窓を開けて風を全身に受ける様に体を半分窓から出す。


 背中を中心に染みが広がっているのは、水泳補習にタオルを忘れた日嗣姉さんをおんぶしたからだ。


 「意外と軽かったなぁ・・・・・・」


 「何が?」


 どうぇーっ!!窓枠に体の側面をぶち当ててしまう。かなり痛い。背後から、気配と足音を消して僕のバックスタブを捕らえたのは、塩素の匂いを仄かに漂わせた杉村だった。


 僕の側面を心配して、杉村が僕の腕を撫でてくれている。プール上がりということもあってか、濡れた髪を後ろで一つにまとめている。なんだか新鮮だ。いつもはサイドテールで青いリボンで髪を纏めている。


 「わ、悪い、杉村!プール補習で疲れているのに、ここで待ち合わせなんかしたりして!」


 首を横に振る杉村。その後ろ髪から、水滴が数滴垂れて地面を濡らす。


「私も、彼女に呼ばれたの」


「日嗣姉さんに?」


「名前は知らないけど、銀髪の綺麗な人に16時頃ここに来るように言われたの。”お主の未来に関わる事じゃ”って言われて。そしてこれも渡されたの」


 杉村は自分の学生手帳を取り出して、その間に挟まれていた一枚のタロットカードを目の前に差し出す。それは「18:月のカード」だった。


 「そのカードを渡されて、「あの件については感謝している。本当にありがとう」って言われたの」


 杉村が少し迷惑そうに困った顔をしている。それもそうだ。杉村は杉村が遭遇した事件に、日嗣尊姉さんが関わっている事を知らない。


 「ろっくんと、その人、仲いい?」


 気の性かその鋭い視線が痛い。


 「うーん・・・・・・友達というか・・・・・・ベッドの上で色々手取り足取り教えて貰った先生だけど。少し変わってるけど、優しい・・・・・・人」


 杉村の顔が伏せられて、体勢を思い切り低くする。そして無音かつ、予備動作無しで僕は地面に叩きつけられた。背中からダイレクトに落ちた僕は、息すら出来ない。


 「お、アオミドロ。どうやら、女王蜂クイーンを怒らせてしまったようだな」


 ハッハッハ、と笑う杉村の別人格「働きウォーカー」さん。


「相手が僕だって、解ってるなら・・・・・・手加減して下さいよ」


 相手を私はいちいち確認しない、と笑って僕の提案を却下する。

 複数の気配を感じて、僕と働き蜂さんは顔を上げる。


 カウンセリング室前に、怪しい紺のフードとローブを着込んだ人間が3人、こちらを見ていた。目深に被られたフードから表情は伺えず、そのフードの先っぽには星の飾りが付いていた。


 そして、胸にはプレートの様な物が首から下げられており、そこには

三者三様の絵柄が描かれていた。


 その絵柄には覚えがあった。


 先ほど、杉村から見せて貰った月のタロットカードの絵柄にそっくりだったのである。


 そして、日嗣姉さんのLessonを受けた僕には解る。


 ・棍棒の10

 ・2:女教皇

 ・聖杯のQ


 その絵柄が、前方と背後のパネルに描かれていた。

 またタロットカードだ。この学校で流行っているらしい。

 それにしてもこの3人、怪しすぎる。

 棍棒の10のプレートをぶら下げた背の高い男からは、熱のこもった視線が杉村にぶつけられている気がする。

 他の二名に関しては、タロットの表示やその背丈からして恐らく女性だろう。布越しにぼんやりと体のラインも出ているし。


 働き蜂さん状態(防衛兼駆逐鑑)のウォーカーさんが口を開く。


 「そんな格好で何をしている?女王蜂の親衛隊、さいばばよ」


 その言葉に驚いた正体不明の法衣の男が体をビクつかせる。


 さいばば・・・・・確か、働き蜂さんはクラスメイトに独自のあだ名をつけている。「さいばば」と呼ばれていたのは、確か、後輩のストーカーくんと日々無益な争いをしている細馬奨さいば しょう先輩だ。さすがはミーハー。美少女なら誰でもいいのか?


「細馬先輩ですよね?」


紺色のフードの男が、首を横に振る。


「細馬先輩・・・・・・確か「杉村愛好会」の会長さんですよね?」


その質問に対しては首を縦に振った。


「これは浮気では・・・・・・?」


 首を必死に横に振る細馬先輩。フードの先端についている星形の飾りがぶんぶんと音を立てて旋回している。すごく必死だ。


そこに丁度、着替えを済ませた日嗣姉さんが扉を引いて現れる。棍棒の10の従者、細馬先輩の振り回す星飾りがちょうど日嗣姉さんの額にヒットする。


「なんじゃ、騒がしいぞ・・・・・・って!痛いぃぃぃ!」


 喪服姿に着替えた日嗣姉さんが、額を押さえながら地面にうずくまる。まるで人生に挫折した様に地面に手をつく日嗣姉さん。


「うおぉ、台無しだよ。只でさえ初見で醜態さらしてるのにぃ、痛いぃ!血、血出てない?!」


 その姿を見て、慌てふためく紺色の法衣を纏った従者達。


 おそらくこの人達は、前に日嗣姉さんが言っていたカルト教団の団員さん達だな。周りの従者に励まされながら、涙目で立ち上がる日嗣姉さん。


 「うぐぐ、折角、第4の少年と天使にいいところを見せようとしてるのに、何をやっているのだ」


 何やら小さい声で、話し合っている法衣の3人と喪服の日嗣姉さん。黒い衣服に、銀髪と白い肌がよく映えていつもより美少女度が増している気がする。ほんのりと目の回りもアイシャドーが引かれ、その雰囲気は占い師を彷彿とさせた。


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