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幼馴染と隠しナイフ:原罪  作者: 氷ロ雪
星の女神と接合藻類
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ベッドの上のLesson:1

荷物を置く為に立ち寄った部室は黒衣では無い亡霊がくつろいでいた。ベッドで何する気?!

「お主を占ってやろう!」そう急に言われた僕は少し戸惑っていた。何でいきなりなんだ?


 腰を上げてこちらに近付いてくると、裸足のままカウンセリング室の床に足をつける。さらりと銀髪の長い髪が僕の傍で揺らめく。


 杉村と同じ様な雰囲気を持つ、銀髪のお姉さんからは百合の様な花の香りがした。もしかしたら、カウンセリング室の机に飾られている白い百合は彼女が飾って居るのかも知れない。


 ベッドを仕切る薄緑のカーテンを勢い良く開けた日嗣さんは、名前プレートのかかって居ない一番左下のロッカーを開ける。そこに鍵はかかっていないようだった。


 しゃがみ込みながら何かを探す日嗣ひつぎ みこと。二つ箱を取り出すとそれを振って中身を確認する。その一つからは、中で何かがぶつかる音がする。片方はカードの枚数が少ないらしい。


「ふむ、こっちじゃな」


 そう言うと、再びカーテンを閉めてベッドの上に座り直す。


 男子生徒と同じベッドを共有する事になんの抵抗も抱いて無いらしい。僕は、ちょっと恥ずかしい。


 誰かに見られたらどうしようとか考えている。


 杉村は今運動場で驚異的な記録を叩きだしている最中で、佐藤は家族と旅行、若草も昔の友人を訪ねて八ッ森市を出ている。ランカスター先生も帰国しているし、恐らくこのカウンセリング室に人はやって来ないだろうけど。


「おい、何を呆けているのだ?」


 日嗣ひつぎ先輩……留年していて同学年なので先輩では無いので、日嗣姉さんとお呼びする事にする。その日嗣姉さんが僕を突いて、タロットカードを見せる。


 トランプよりもやや長く、厚めの紙を使用しているようだ。それぐらいしか感想を思いつかない。


「お主、初めてか?」


 伏せ目がちにそう優しく囁かれ、僕は少しドギマギしながらそれに頷く。日嗣姉さんから大人の色香が漂い、目の前がクラクラする。


「そうか、初めてかー!なら、わらわが手とり足とり教えてしんぜないとなぁ!」


 今度は目を輝かせてこちらを真っ直ぐ見据えている。なんだか嬉しそうだ。


「お、お願いします」


 僕は少し照れながらそれに答えた。この状況でその言葉選びは悪意があるとしか思えない。顔を紅くしている僕に気付いた日嗣姉さんは、首を傾げている。そして何かに気付いた様に目を丸くして、解り易い位に頬を赤らめた。


「変な気を起こすで無い!お主だから許しておるが、ここは神聖な領域じゃ!淫らな事は許されぬのじゃ!」


 今度は僕が目を合わせられ無くなっている。そわそわと落ちつきが無くなった日嗣姉さんは、そそくさとタロットカードを分けて並べ出す。


   

みことお姉ちゃんのタロット占い講座~!」


 何か始まってしまった!


「第4の少年……いや、石竹緑青いしたけ ろくしょうよ。これも何かの縁じゃ。わらわは暇なのでタロットカードについて丁寧に説明してやろうでは無いか」


 姉さんは結構しゃべる人だったんだなぁ、と思いながら僕は頷いた。  


「うむ、素直で宜しい!」撫でてくれた。


「 <Lesson1:大アルカナについて>」

 (英語のリスニング授業の様なイントネーションで話だす姉さん)

 

 全てのカードをベッド一面に並べ終えた姉さんが、一呼吸間を開けて人指し指を立てた。


「ここに並べたカードは“78枚”ある。

 そして……片方22枚のグループと56枚のグループに分けて置いてある。この違いが解るか?少年よ」


 僕はベッドに並べられたカードを見渡す。


 22枚が置かれた場には上にローマ数字が書かれていて、下には何かの英語が書かれている。そして真ん中には何かを模した絵が大きく印刷されていた。


 56枚の枚数が多い方のグループを見ると、同じ種類と思われる列が4つ並んでいる。こっちはまるでトランプの7並べみたいだ。僕は正直に答えた。


「少ない方が、数字と英語、両方書かれているグループで、多い方が天地に英語だけしか書かれていないグループですか?」


  しばらく場を眺めて眉をひそめた日嗣姉さんは、何かに気付く。


「そんな微妙な分け方があるか!確かに、言われてみればそうじゃな……しかし、これは”大アルカナ”と”小アルカナ”と呼ばれるグループに分けておるのじゃ」


「あるかな?」


「そう、アルカナじゃ」


「そうあるかなじゃ?」


「違う、違う!〝アルカナ”!

 ラテン語の〝arcanum”の複数形を指してて、

 その意味は机の引き出しを差し、

 その引き出しに隠された物として使われ、

 そこから転じて、”秘密”とか”神秘”を指す様になった言葉じゃ」


「じゃあ、大きな秘密と小さな秘密グループって事……ですね?」


「そ、そんなところじゃ。お主、なかなか見込みがあるではないか。まず、大アルカナのカードについてじゃが……」

 

 場の大アルカナのカードを全て回収して、それをトランプの様に切る日嗣姉さん。シュッシュッと手際よく細い指がカードを混ぜている。


 そして、片手でカードを収納していた箱から何かのメモを取り出すと、それを僕に読むように指示する。

  

「大アルカナの0~21のカードの種類についてはそれを見よ。説明がメンドクサイ」


 面倒なら教えなくていいのに。と思ったが、尚もレッスンは続きそうなのでそのメモに目を通す。



 <大アルカナ0~21の持つ意味>


  0 = 愚者

  Ⅰ = 魔術師

  Ⅱ = 女教皇

  Ⅲ = 女帝

  Ⅳ = 皇帝

  Ⅴ = 法王

  Ⅵ = 恋人

  Ⅶ = 戦車

  Ⅷ = 力

  Ⅸ = 隠者

  Ⅹ = 運命の輪

 ⅩⅠ = 正義

 ⅩⅡ = 吊るされた男

 ⅩⅢ = 死

 ⅩⅣ = 節制

 ⅩⅤ = 悪魔

 ⅩⅥ = 塔

 ⅩⅦ = 星

 ⅩⅧ = 月

 ⅩⅨ = 太陽

 ⅩⅩ = 審判

 ⅩⅩⅠ= 世界



 ふむふむ、なんかRPGの職業みたいだなぁ。日嗣姉さんが、退屈そうにこちらの様子を伺う。


「目を通し終わったかー?」


 それに頷く僕。


 再びやる気モードになった日嗣姉さんはレッスンを再開する。


「実はこのタロット占い、この22枚のカードだけでも占えるんじゃ」


「え!そうなんですか!?じゃあ、そっちの小さい秘密グループはいらない子なんですか?」


「(いらない子……)」と呟き、急に肩を落とす日嗣姉さん。何か不味い事を言ったのかな?目をきつく結び、首を振って気を取り直し、笑みを浮かべる。


「ところがどっこい、こいつらにもしっかりと意味があるんじゃ。確かにはっきり言って、枚数が多くなるほど占う方は覚えなければいけないカードの種類も増えて面倒臭い。おそらく小アルカナを交えての占いなどプロぐらいしか出来ない。確かに小アルカナの持つ意味自体が系統的に分かれてはいるが、経験が無ければ恐らく相手を占うなんて到底出来ないだろう。(私もできない)」


 小さい声で何か聞こえたが、僕は日嗣姉さんの次の言葉を待った。

 正直なところ、図書室で調べ事があるので早く終わってほしい。

 

 「だが私は、このいらない子を合わせた〝78枚”全てを使ってお前を占おうと思う!」


 「何だってーーーっ!!」


 「私は星が好きだからだ。78枚全てを使用する占い方に「ヘキサグラム法」というものがある。丁度、星(✡)の形にカードを置いていくこのやり方……私はたいへん気に入っています、キラッ✡」


 「わけわかんねーーーよっ!!」


 僕は耐えられなくなって突っ込みを入れた。

LESSON2へと続く。

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