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幼馴染と隠しナイフ:原罪  作者: 氷ロ雪
みつばちのきおく
302/319

交渉決裂

 昼下がりの午後、弱くなりかけた雨脚は私の叫びに呼応する様に強くなり、曇天の空は土砂降りの雨を降らし続けていた。雨音と共に店内に再び喫食する客達の喧騒が戻りつつあるのは救いだ。


 やってしまった……。「緑青君を下さい」という私の言葉を受け、石竹夫妻は顔を見合わせている。交際申し込みと捉えられてもおかしくない私の言葉をどうするか考えあぐねているのだろう。


 現実逃避気味にお店の外を窓から覗くと街路樹の大通りには人が大勢往き来している。私はこんなところで何をやっているんだろう。日本まで遥々来て異国の地で仲間外れにされて独りぼっち。やっと出来た男の子の友達との交際も上手く行かない。交際って恋人とかの意味では無い。


 私達の身の回りにある日常の歪みは私達子供ではどうしようも無く、それは親が生み出したものであって私達には本来その歪みに責任は無い。


 放置される石竹家の子供に、護衛三人付けたり、何人ものお手伝いさんを雇ったりと過剰に甘やかされ、構われ過ぎている杉村家の私。足して二で割れば丁度良いのにそう上手くいかないのが世の中らしい。


 私の両親がお酒の所為で寝落ちしてサリア義姉ちゃんも居ない、一人、孤軍となった私は混乱する思考回路の中から捻り出した言葉。それは事態を余計に混乱させ、悪くしてしまった。


 言葉選び間違えた。


 早急に事態を収束方向へ持っていかないと私達の関係は友達から夫婦になって、結婚してしまうかも知れない。出会ってまだ少ししか経ってないのに、はしたない女の子だって思われたくな……。


「僕はいいよ?ね?ママ、パパ?」


 お腹が一杯で椅子の背もたれに寄り掛かかる緑青がくったくの無い笑顔でそれを心地良く了承する。でも石竹夫妻は戸惑っている。


「緑青……言葉の意味が分かってるのかい?」


「緑青……私はまだ少し早いと思うわ。あと十年ぐらい……それにまだお互いによく知らないんじゃないのかな?」


 緑青が首を傾げながらこちらに向き直る。


「僕が会ってきた人の中で、一番僕を知ってると思うよ?友達居なかったのもあるけど。あっ、なら、僕もハニーちゃんを貰ってもいいの?」


 あーーっ!絶対に緑青は意味を分かってないけど!!全部あげちゃう!って言いたい!私は……会って間もない男の子に何を考えてるんだろう……余程寂しかったのかも知れない。けど、この男の子とは何だかやっぱりこの先も仲良くなれそうな気がする。


 不束者ですが、宜しくお願いします……という言葉が出そうになるのを口を押さえて寸前で堪える。違う、そうじゃない、そういう為に食事会を開いて貰ったんじゃないの!強引に石竹夫妻を誘ったのは寝落ちした私の父親だけどね!不甲斐ない!


「私の全部を緑青にあげ……る、じゃなくてぇ!違うんです!下さいって言ったのは言葉のあやです!緑青君の時間を欲しいんです!」


 目の端でSAS予備隊員三人がご飯を食べながら私を応援する様に手でサインを送ってくる。母に言いつけてやるんだから!


「ハニーさん……時間をというのはどういう事かしら?これからは遊びに来て頂いても結構ですし……近くの公園ぐらいなら誘って頂きたい時にいつでも……」


 本当に守りたい人がいるなら、その人に危険を跳ね返すだけの強さを手に入れて貰う。私はまだまだ弱い。けど、緑青とならどこまでも強くなれそうな気がする。護身術は父に教えて貰っていたけど、私は相手を傷付けてしまうのが怖くてそこから先の段階へ進むのを断っていた。


 次の作戦は緑青に父から特殊訓練を積んで貰う事。そうすれば……もし、父親から暴力を振るわれても跳ね返せばいいだけだ。まだ確定した訳じゃ無いけど。


「私は……緑青と強くなりたいんです……」


「え?強く……遊ぶのとどういう関係があるのかな?」


 もう……こうなってしまった以上、引くわけにはいかない。誰も頼れないなら私が緑青への暴力を喰い止めてみせるんだから!


「葵さん……私達が出会ってから今日まで僅かな期間ですが会う度に彼は怪我をしていました。何か理由を知ってますね?」


「怪我を……ですか?」


 首を傾げ、緑青の方を見つめる葵さん。


「緑青、どこか怪我をしているの?」


 緑青は葵さんの視線から目を逸らしながら首を振る。葵さんは緑青の怪我を知らない?私も直接見たわけでは無く、まだ推測の域を出ない。直接確認するには緑青に脱いでもらうしか無いけど、流石にそれを強要する事は出来ない。


「大丈夫だよ?どこも悪くないから……平気だよ?」


 ウォードに触られた時、彼は一瞬痛そうな顔をして転んだだけだと言っていた。もしそれが本当だとしたら平気では無い事になる。ちょっと転んで怪我をしたと言う筈だ。私は二人のやり取りを横目で見ながら、白緑さんに視線を向ける。


 彼は目を逸らし、まるで他人事の様に素知らぬフリをしている。母親の葵さんが何も手を出していないなら、同じ家に住む貴方しかいないのに。


「緑青!私の席まで来なさい……」


「嫌だ!いかない!ハニーちゃんもうこんな事やめよ?もういいんだ。僕は雨……っ」


 緑青が何かを言いかけて口を噤む。それを見逃さなかったのは葵さんでは無く、白緑さんの方だった。


「緑青……何を言いかけたんだい?」


「何でも無いよ……パパ。何も無いから気にしないで?」


「緑青……何か知ってるなら言いなさい……葵が誰かと一緒に居るところを見なかったかい?パパ以外の男と居るところをだ!」


「そんなの居ないよ!ママが家を留守にしてる時は僕と一緒だからパパは安心して!別の人となんか会ってないから……」


 葵さんが白緑さんと緑青、二人の顔を見比べた後、更に強く自分の下に来るように厳しく彼を呼び寄せる。


「緑青……こっちに来なさい、早く!」


 もしかしたら何か心当たりがあるのかも知れない。


「ダメだ。そのままで居なさい、私が怪我の確認をするから……」


 白緑さんが険しい表情で緑青を睨みつけながら立ち上がる。


「ママ、いかないから。パパは来ないで!」


 迂闊だった。この時、あのタイミングで緑青の怪我の話題を出したのは間違いだったのかも知れない。家庭内で起きる暴力の問題は繊細で、その事実の証言を得るのは難しい。ましてや六歳の私なんかでは。どうしよう。


 日本語がよく分からないSASの三人が顔を見合わせ、只ならぬ雰囲気を感じたのか、ウォードが緑青の背後に立ち、石竹白緑に向かって手を翳して静止する様に求める。


「これ以上、ボーイに近づかないで下さイ。sit down……」


 ウォードが自分の左手を腰のポケットに添えると、白緑さんの顔が青冷めて大人しく着席する。家族内で力を持っていたとしても拳銃には敵わないか。


 でも私は暴力で一方的に解決を図りたい訳では無い。


「ボーイ、youはパパに虐められてるのかい?」


 ウォードのお節介を窘め、席に戻らせる。これは石竹家と杉村家の問題だ……もし、SASのメンバーが介入してその場で言い聞かせても彼等はすぐに母と一緒に英国へと帰還する。だから、私と父で何とかしなければならない。


「ウォード達は席に戻って日本での食事を楽しんでて……これは私と緑青の問題だから……」


 私も一旦席に腰を下ろし、咳払いをして仕切り直す。


「……緑青の怪我については保留しておきます。まずは私と緑青が勝手に遊ぶ事に問題はありませんね?」


 石竹夫妻が顔を見合わせ、それに頷く。


多分、大人から見た私は生意気に映っていたのかも知れない。それを許容してくれていたのは私の背後に母と父、護衛の三人が居たからだ。あと警視庁に努める義姉も。私は話を進める事にする。


このままでは一向に話が進まないからだ。只の食事会ならそれで問題無いのだけど、緑青がこのまま親から暴力を受け続け、最悪死に至るケースを見て見ぬふりは出来ない。


日本ではまだまだ児童虐待に関する危機感やそれに対する政府の援助は乏しいけど、英国では2000年に起きた「ビクトリア・クリンビエ事件」で虐待死した当時八歳の女の子は保護者の大叔母とその同居人に少なくとも十ヶ月以上に渡って虐待を受け、殺された。


その事件で問題となったのは児童保護機関が関与し、救えるタイミングが最低でも12回以上はあったとされているらしい。児童保護機関の連携の未熟さが少女を殺したのも同じだった。


その事件で浮き彫りになった問題点を教訓とし、英国では大きな改善に繋がる動きを見せ始めているらしい。


日本の児童相談所が石竹家に介入した記録は無い。それは緑青が一人で抱え込み、暴力を受け入れ、口外していない結果だ。


 けど、それは違う。しなくてもいい努力。


 諸々の事はお手伝いのメイドに調べて貰って電話で聞いた話なのだけど、日本の児相に寄せられた父親による子供への虐待は無かった。


ただ、公園に一人、黄色いレインコートを羽織った少年が放置されているという通報は近隣住民から何件か寄せられているようだった。でも、それだけで機関は動かないのかも知れない。


 相手が石竹家という名のある家柄なら余計に干渉し難いのかも知れない。


 緑青と私は七歳の子供であり、親の保護下にある。


 もし、その保護する側の人間が悪であった場合、私達子供に逃げ道は無い。国が、機関が、親権を超えて介入出来る程の力がまだ無いのなら。


 私は幸いな事に真っ当な親達の下に生まれた。けど、緑青はどうなのだろうか。放置する母親に、暴力を振る父親。そしてそれを緑青は受け入れてしまっている。


大人になりきれない大人達の弱さを子供がそれを受け入れ、許してしまっている。けど緑青、それは優しさなんかじゃ無いのよ。どうすればこの不器用に歪んでしまった家族を救う事が出来るのだろうか。


「……緑青君を……私の家に招いてもいいですか?」


 それには了承する石竹夫妻。


「なら、森に連れていってもいいですか?」


「森にかい?」


 森と言う言葉に石竹白緑が過剰気味に反応する。


「はい。私と父はよく森で遊んでいるんです」


「森はダメだ……殆どの土地を一般開放しているとは言え、八ツ森に於ける四方の名を冠する名家の所有している森だ。それに……二〇〇一年、昨年の暮れに事件があったのを知らないのかい?」


「事件?」


「夕暮れ時……森から降りて来た血塗れの少女が、麓の駅前通りで四十人がナイフを手にした九歳の女の子に斬りつけられ、そのうちの八人が死んだんだ。その中の被害者の一人が私の会社の得意先の主任でね……居た堪れないよ」


 私が日本に来る前の出来事だけど、私は知らなかった。もしかしたら、子供を怖がらせない為に大人達は情報を伏せていたのかも知れない。それに私と殆ど変わらない少女が四十人もの人達を傷付けた?


「最近の子供は何を仕出かすか分からないよ……全く」


 呆れる様に溜息を吐く白緑の言葉に、今度は緑青が俯いて何かに耐えていた。


「森で何をするつもりなんだい?ハニーちゃん」


 私の持つやましさを見抜かれた様な気分だった。私が緑青にしようとしている事は……その女の子と殆ど変わらないからだ。


強さを履き違えればそれは只の暴力になる。


そしてそれを善悪のまだつかない子供に与えてもいいのだろうか。私の中にあった強い思いはその疑問と共に段々と掻き消えていくのが分かった。私がしようとしている事は本当に正しい事なのだろうか。


「その女の子は……今、どうしてるんですか?」


「詳しくは知らないが……市内の精神病棟の一角に閉じ込められているそうだ……何でも親や親戚、誰彼構わず近付いた人間を殺そうとするらしい。狂ってしまったんだ。その女の子は……」


 まるでその言葉が私に向けられた様に感じられて胸が苦しくなる。何も言い返せなかった。


「だから、そんな危ない森に緑青を連れて行こうとする君の神経が分からない。家や公園で君のしたい事は出来ないのかい?」


 それは警告では無く、一種の提案だった。


「え?もしかして……緑青君を心配してるんですか?」


「当たり前だろ……私はこの子の父親だ。もし万が一があっても心配だからね……」


 その言葉は取繕われたものでは無く、本心からそう言っている感じがした。私は何かを勘違いしていたのかも知れない。なら、何が石竹白緑を虐待へ向けさせるのだろうか。横を向くと緑青も照れ臭そうに鼻を掻いていた。


「緑青……はどうしたい?」


「よく分からないけど……もし、それがハニーちゃんに危険が及ぶなら、僕に入りたく無い」


「うん。緑青が言うならそうする……森は危険だから、私達がもう少し大きくなってからってパパに言ってみる……じゃあ、今度、私の家に招待するわ」


 緑青は一度、両親の顔色を伺った後、嬉しそうに微笑みながら頷いた。緑青が言うなら仕方ない。うん。仕方ない……えへへ。


「あの……大丈夫ですか?」


 緑青の隣から声が聴こえてきてそちらを向くと、客の一人がお酒に酔って寝てしまった父と母の様子を心配して声を掛けてくれたようだ。


「あっ、大丈夫です!パパもママも飲み過ぎて……」


「しっかりと薬が効いてる様ですよ……花菱草さん」


「そう……それは良かったわ」


 その声が聞こえたのは私の真後ろだった。振り返ろうとする私を押さえつける様にその手が私の両肩を抑えつける。その指先は細いのに、掛かる力は女性のものとは思えなかった。


「ちょ、痛い……」


 指先が鎖骨に食い込み、振り払おうとすると、その顔が私の真横に伸びて来て囁く。


「パパとママが心配よね?」


 え?どういう事?その女性の顔は見覚えがある。さっき、母からサインを貰っていた茶色いボレロに花柄のワンピースの女性だった。


「こっちはOKよ」


 母と父に声を掛けていた女性があっという間に意識の無い二人を椅子に紐で括りつけると、私達に微笑みかける。


 勿論、そんな行為をSASの三人が見逃す筈も無く、ポールが咄嗟にその女に飛び掛り、地面に押さえつける。


「ちょ、イタタ!分かってるの?こっちは三人の人質を取ってるのよ?変な事をすれば……」


 銃声が一発鳴り響き、ウォードが何の躊躇も無く、その女性の頭を手にしたUSPのハンドガンで撃ち抜き、すぐさまその銃口を私を抑えつける女性へと向ける。


「流石ね……けど、手遅れよ……」


 私はされるがまま体の向きを変えられると、彼女の盾にされてしまう。こうされると護衛を任されているSASの人達は手出し出来ない。


「ウォード!銃を下げて!大丈夫だから!下手に動かなければ危害は加えられない!チャーリーも銃を床に捨てて!!」


 二人のうち一人を射殺し、数としては優勢だと感じていたウォード達が首を傾げる。それもそうだ。彼等ならこの至近距離、私を無傷で助け出す事など容易い。けど、それだけじゃ無かった。


 店内に潜んでいたらしき仲間の数人が小さな護身用の拳銃をSASの三人に向けていた。他に四人の仲間が居て、それぞれ彼等に銃口を向けている。


 私の眼前に伸びて来た包丁の柄には黄色い花菱草が刻まれていた。


「あーあ……流石ね。こうも簡単に何の躊躇も無く撃つとは思って無かったわ。流石日本とは文化が違う」


 その言葉とは裏腹に声色は全く仲間の死を気にしていない様だった。


「胴体に一発ずつ……」


 私を拘束するお姉さんがそう支持すると、客の中に紛れていた仲間から発砲され、それがSASの三人の胴体に命中し、その衝撃と痛みで三人が床に倒れ込む。


 防弾チョッキを着ているとはいえ、その衝撃波いとも簡単に身体を破壊する。


「厄介だった三人はしばらくそこで大人しくしていなさいな……ヒナゲシ……その男達からも銃を回収して?」


 銃を構えた四人とは別に、スーツ姿の女性が私達の前に出て来てSASの三人の銃を回収する。


「おっと。ゾフィーさんの懐にも入ってるヤツも回収して」


 ヒナゲシと呼ばれたサングラスの女性が頷き、それを手にしたアタッシュケースに入れていく。母のスーツからもM8000クーガーの銃が取られてしまった。どうしよう。私まだ、石竹家との話を付けきれて無いのに。


「これで一先ず安心ね……雛罌粟ヒナゲシ……もういいわ。有難う」


 サングラスを掛けたショートヘアーの女性が僅かにサングラスを下げて私と私の背後に居る女性に微笑みかけると、無言のまま手を振り、銀色の銃を構えながら厨房へとその姿を消す。彼女の目的は終わったのかも知れない。きっと裏口から逃げるつもりだ。


「さて、私達も行きましょうか?お嬢ちゃん?あまり長居すると警察を呼ばれてしまうものね?」


 私に包丁を突きつけながら笑う彼女の顔は伺い知れないけど、きっと悍ましい顔をしているのだと思う。目的はなんだろう。母を殺す事が目的ならとっくに殺している筈だし、こんな場所で騒ぎを起こすメリットなんか考えられない。


 私は床で蹲るSASの三人の安否を確認する。苦しそうに胴体を抑えてるけど、出血も無いし一先ず命に別状は無さそうだった。


「良かった……言う事は聞くわ。だから誰も殺さないで?」


「随分と落ち着いてるのね……大丈夫よ。死体の始末はこっちも面倒でね。一人で充分よ……」


「あの撃たれたお姉さんの事?」


「そっちは護衛の人が撃った。私には関係の無い話よ。この世界で生きて行くには一々悲しんでられないわ。安心して?お嬢ちゃん……すぐには殺さない。それこそ英国で立派にご活躍中の貴女のお母様からたんまりと、根こそぎ財産を頂くわ。少しずつ切り分けた貴女の身体を送りつけてね?最高の脅迫材料だと思わない?切り取るところが無くなったら遺体だけは返してあげるから安心していいわよ?」


 私は恐怖という感情よりも呆れてしまう感情の方が強かった。あぁ……なんでこんな事に。私はただ、緑青と遊びたいだけなのに!


 将来二人が平穏に過ごすにはいくつもの障害が立ち塞がる、そんな予感めいたものがあった。


店内の客は状況が飲み込めず、固まったまま動かない。それは石竹夫妻も同じで、うちの両親は別の意味で固まっている。肝心な時に大人は役に立たないんだから!母が死んで無いか少し心配になったけど、相手を殺してしまってはお金は取れない。


きっと眠らされているだけだと思いたい。父は多分、どんな毒を盛られても生きてると思うけど。


「ねぇ……お姉さん……よく分からないけど、トイレ行っていい?ちょっと食べ過ぎちゃって……」


 一人だけ、状況に我関せずといった態度でいつもの調子を崩さない緑青に私と背後のお姉さんは深い溜息を吐いた。他の四人に拳銃を突きつけられてる状況でこんなにも動じない男の子は初めてだった。


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