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幼馴染と隠しナイフ:原罪  作者: 氷ロ雪
働き蜂と女王蜂
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Q&A

甘き密の番人、我らの呼びかけに答えん。

 

 「ろっくん、大丈夫?」


 「……ハニーちゃん?」


 下から杉村を見上げる形になっている僕は、膝枕をされているようだ。後頭部が暖かい。杉村を捉えていた視界に佐藤の顔が映り込む。


 「大丈夫、ろっくん?」


 佐藤にそう呼ばれると違和感がある。


 「たんこぶは出来てるな」


 「でも、気を失うほど靴を強く投げた覚えは無いけど……」


 「確かにそうかも。最近、意識が飛ぶ時があって」


 「ごめんねぇ、え?!」


 杉村の頭が佐藤の顔を押しのけて、僕の顔を覗き込む。ちょうど、猫がじゃれて頭を押しつけてくる様な感じに。


 「ニャ、ろっくん、続きをしよう」


 どこか男前顔になった杉村の顔が急に近付いてくる。ちなみに僕の報告書にはこうある。”杉村自身から対象者に近付いた場合はこれに当てはまらない“つまり普通に僕の「くちびるの第一接触」は奪われてしまうと言う事だ。それでは意味が無い。


 しかも!がっちりと手で額を抑えつけられて身動き出来ない。僕の口から情けない声が出る。


「やめてー、落ちついて!杉村さん!」


 と言うと、顔を近付けながらも僕の手を使って自分の胸にって、もうそのネタはいい!

「つつくものがねぇよ!」と再び佐藤の突っ込みが入り、僕を杉村から強引に引っぺがす。その反動で僕は盛大に床に転がった。


 僕が立ち上がろうとすると、杉村から氷の様に冷たい声色で「そこを動くな」と声がかかった。その声に微動だに動けない佐藤。


「おい、私のアオミドロに何をしている?この“ロリポップ”」


 佐藤が顔すら向けられず、表情を強張らせる。盛大に床に転がり、杉村の領域を僕が越え、その内側に佐藤が侵入しているからだ。


「安心しろ、泥棒猫のクソ〇ッチ女、私は女王蜂からの制約からは解き放たれている。攻撃するつもりは無い。だが私が表層化されたという事は、少なからず女王蜂が何らかの危機感を抱いたという事だ。そこは見過ごせない」


 それまでとは違い、饒舌に、そして威圧的に淡々と言葉を並べる杉村。


「ロリポップ?私のあだ名?なのかな?泥棒猫のクソ○ッチ女ってどういう意味なの?」


 若草の方を見る佐藤だが、知らない方がいい。と佐藤に諭す。


 僕と杉村の距離、約半径 1.5 m。


 この距離が境界線らしい。

 これなら、教室での席替えで周りへの被害は防げそうだ。僕は若草に支えて貰いながら立ち上がる。


 働き蜂さんが表層化した所で、僕等は再び席についた。



 *



 「で、お前らは私の何が知りたいのだ?」


 杉村が黄金の髪を掻き上げて、スカートのめくれを一切気にする様子も無く、足と腕を組む。その緑青色の澄んだ瞳が揺らぎ、僕等全員を射ぬいていた。


Q1:あなたは何者ですか?


A1:私は「働きウォーカー」。女王蜂を守る為に生まれた存在だ。お前達で言うところの、防衛本能が形を持った様なものだ。過剰防衛すぎないか?そんな事は知らない。僅かでも女王蜂への危険性がある限り、叩き潰すまでだ。



Q2:記憶の共有度はどれくらい?


A2:女王蜂が主導権を握っている間、私は眠っている。その間の記憶は無いが、表層に出て来た時に限り、女王蜂の記憶は一部を除いて探る事は出来る。一方通行だが、私から女王蜂へ話しかける事も出来るし、安全性が確認されれば私から交代する事も出来る。



Q3:全ての記憶は覗けない?


A3:プライバシーに関わるものや、彼女自身がプロテクトをかけている記憶については覗けないし、覗くつもりも無い。



Q4:あなたが表層化している間、主人格はどうしてるの?


A4:眠っている、いや、抑えていると言った方が正しいか。この辺はプロテクトがかかっていて、記憶を確認出来ない。協力出来ずにすまない。



Q5:好き嫌いは女王蜂と一緒?


A5:根っことなる人格が同じであるから趣味や趣向が重なるのは当たり前だ。違うと言えば、私が暴力的なのに対して、女王蜂は平和的であることぐらいか。はっはっは!ん?ここは笑うところだぞ?もちろん、アオミドロの事は私も気に入っているよ。だから、もっとお前には私を愛してほしい。女王蜂が望んだ未来にお前は必要な存在だからな。



Q6:どうしたらあなたに会えますか?



「そうだなぁ……恐らく……」


口の端を歪めて“働き蜂”がにやりと笑顔を造る。


「アオミドロよ、お前が近くにいても女王蜂が恐怖を感じる位のぶっとんだ奴を近付ければ、呼ばれずともかな、そいつを消す為に私は現れるぞ?他の手段としてはそうだな……」

耳元で、“ある事"を僕に囁く働き蜂さん。僕が慌てて杉村との距離を離そうとすると、杉村の体が力無く崩れ落ちる。主導権を完全に女王蜂に譲渡したらしい。僕は慌てて杉村を抱えてソファーに座らせる。


「ろっくん、おはよ」


「あぁ、おはよ」


微笑み合う2人は、戦友の様だ。


「何か解った?ろっくん。あの子から、メッセージ貰ったよ?アオミドロにはヒントをくれてやったって」


 僕は微笑みながら、息を鼻から吸い込んでものすごく杉村の匂いを近くで嗅いだ。


「杉村って、いい匂い。くんかくんか」


 杉村の顔が、紅く染まった事を僕が認識した刹那の時間、爆発的な反射速度で彼女の体は回転し、僕の足を払い飛ばす。勢い良く回転した僕は、ジャッキーの映画みたいなリアクションで床に叩きつけられる。机が在ったら間違いなく、バキッってへし折れてる。今、この部屋にある机には、杉村の凶器が並べられているので、そこに不時着でずに済んだのは幸いだ。


「おぉ、正解したか。アオミドロ。さすがは私の背後を守る者だ」


 人を空中回転させておいて全く気にする様子の無い働き蜂は男らしかった。背中を強く打ちつけた僕はろくに返事すら出来ない訳だけど。


 やはり武装解除されて、身軽になった杉村の反応速度は桁違いに上がっていました。


 目で全く追えませんでした。


A6:石竹緑青の影響力を越えた恐怖を杉村に与えた場合、働き蜂は出てくるようです。


(追記:石竹緑青に匂いを嗅がれても、働き蜂さんは現れます。)



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