緑青の海
や、やめてー…>_<…。
手と足が震える僕を余所に、杉村はこちらに向き直って薄い桃色をしている唇をむにむにさせている。
そして目を瞑ると小さく「んっ」と声を出した。
なんで、杉村は成功させる気まんまんなんだ!
危険を感じとれよ!
確かに杉村はこのままだと校内で危険人物扱いされたままである。誤解をとく為にも働き蜂(彼女)の出現条件は必ず抑えておかないといけない。そうしないと杉村がいつ退学処分に追い込まれてもおかしくない。(今までされてないのがおかしいが)
折角再会出来た最初の友達と別れるの僕も正直寂しいので、僕は杉村の両肩に手を置き、ゆーっくりと顔を杉村に近付けて行く事にする。
出港を知らせる汽笛が僕の頭の中で鳴り響く。
目標の座標まであと50cm。通常速度で出航。
目標の座標まであと30cm。波の高さ、風の強さ供に平常通り。
目標の座標まであと20cm。
障害物は無し、オールグリーン。このまま運航する。
目標の座標まであと10cm。目標物を発見、乗り上げに気をつけろ!
目標の座標まであと5cm。これより減速を開始。
目標物との衝撃に備えろ。
目標の座標まであと2cm。
進路問題無し、多少の波の揺れはあるが気にするな。
目標の座標まであと、0.3cm。よーし、このまま接触するぞ!
艦長!レーダーに巨大な影が!高速でこちらに近付いてきます!
面舵一杯!ダメです、回避間に合いません!!
赤いランプが艦内を朱色に染め、転覆を示すアラートが鳴り響く中、僕等の船は紺碧の海原へと沈んでいった。
「抵抗しろよ!杉村さん!」と佐藤が叫びながら自分の上履きを僕の頭に直撃させたのである。
魚雷をその機首にぶち込まれた石竹号は救援の要請虚しく、白煙と供にその身を海底へと下ろしていくのだった。
おかしいな、なんでこんな事になったんだろ。
僕等はただ、平和な世界を望んでいただけなのに。
緑青の海原 完。