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幼馴染と隠しナイフ:原罪  作者: 氷ロ雪
最後の生贄ゲーム
273/319

共通点

 暗闇の中、天井に設けられたスポットライトが隠者側の蜜蜂(杉村蜂蜜)と星の贄(日嗣尊)の両者を浮かび上がらせている。カメラから見て右手には棍棒の贄(東雲雀)と恋人の贄(江ノ木カナ)がその様子を心配そうに眺めていた。既に役目を終えた贄は眠りにつき、控える者達はじっとその光景を見守っている。


 東雲雀は北白事件に無関係だが、慕っていた剣道部部長、二川亮が仕出かした罪に慄き、素手とはいえ相手を打ち負かすだけの正義が無いとし、反撃出来ない精神状態へと追い込まれていた。肉体へとダメージは本人の技量と杉村蜂蜜を凌ぐ体力から然程問題では無いが。


 江ノ木カナは、生贄ゲームの再現映像後、取り乱した日嗣尊の様子を心配そうに画面越しにじっと見つめている。ブラウスの腕の部分には日嗣尊の爪が食い込んだ箇所から血が滲んでいた。彼女はいつだって他者の為に身を差出し、相手を受け入れる事の出来る器を持つ。例え、相手が自らを傷付けた犯人であったとしてもそれは変わることは無いだろう。彼女の存在が北白直哉を僅かながらに生き長らえさせ、天使と称する杉村蜂蜜との再会を経て、その穢れた魂を救済へと導いた。第五ゲームの全容は被害者が高校生で両者が生存した事から、その証言を得て明らかにされている。今回のゲームではスポットは当たらないだろう。大学生三人が北白直哉により、死亡しているが、同時に江ノ木カナの身包みを剥ぎ、レイプ未遂を起こしている。


 それを止める為、大学生を殺したのは北白直哉であり、鳩羽竜胆(はとば りんどう)であった。被害者と加害者が混在し、レイプ未遂という事もあり、報道は最小限に抑えられているが、北白直哉の再犯という事で犯行当時は世間に大きな波紋を呼んだ。そして今、その波紋の中心に居るのは石竹緑青であるこの僕だ。あの正式な生贄ゲームで生き残った正当な勝者が狂気を引き継ぎ、加害者側として立っている。それは深淵を覗き、怪物と成り下がった事を現しているのかも知れない。


【設問23:生贄ゲーム被害者達の共通点は?】


 最後の生贄ゲームの設問は間髪入れずに次へと進む。その展開に慌てた蜜蜂が日嗣尊の肩を掴みながら睨みつける。次は隠者側が出題する番にも関わらず、八ツ森側が連続して出題をしているからだった。


「調子に乗ってると……搔き切るわよ?その首を。次は私の番でしょ?なんで貴女が出題してるのよ!」


 深緑色の宝石の様な瞳が僅かな殺意を持って揺らぐ。本気で相手を殺す気が彼女にあるなら相手はそれに気付く前に死ぬだろう。彼女が殺す事を宣言している限りは安全か。それを見越してか日嗣尊が腰に手を当て、臆する事なく蜜蜂と至近距離で対峙する。


「ほぅ……蜜蜂よ、自分達が始めたゲームで納得いかないからという理由で私を殺すならそれでもいいわ。安心して?貴女はどのみち、続く3問には答えられない。答え合わせは後で纏めてしてあげる。それで文句は無いでしょ?もし、私の言い分が間違っていればその時は貴女の攻撃時間を加算すればいいでしょ?」


 杉村蜂蜜は舌打ちをしながら隠しナイフに伸ばした手を座る自らの膝に戻す。


「チッ……腹立たしいけど、今は殺さないであげるわ。傷害罪で逃亡中の犯罪者、日嗣尊さん。私は掃除屋。私がいつでも罪人を裁く暗殺者として貴女の命を刈り取ってあげるから……そのつもりでいて?」


 ピリピリとした蜜蜂の圧が場を支配する中、日嗣尊は微動だにせず、余裕の笑みを浮かべている。脅しの効かない日嗣尊の肩から手を離すと、椅子に腰を掛け直し、足を組む。幾重にも布が重なった白いパニエのスカートの隙間から陶器の様に滑らかな腿が覗く。その膝から足先までを包む黒いロングブーツは簡単に相手の骨を蹴り砕くだろう。


「早くしなさいよ。どうせ、あの剣道娘は私を攻撃出来ないわ。何故なら彼女は武道を重んじる。その剣に正義は無い。濁った剣で私は倒せないわよ?それに棒が無ければ何も出来ない剣士なんて論外よ」


 その言葉に顔を伏せる東雲雀。間違いでは無いという事だろうか。


「丸腰の硬いだけの木刀娘なんかに私は負けない。あとバレバレなのよ……こうして連続して問題を出すのはあの棍棒の贄が復活するのを待ってるのよね?待つだけ無駄。彼女は親しい人間に……尊敬する先輩に裏切られた。貴女はこの戦いから降りなさい!この女の戯言と私達に付き合う必要は無いわ!貴方が此処に連れて来られたのは戦場と化す山小屋にのこのことやって来て戦火に巻き込まれない為の配慮もあるの。貴女は……貴女こそ、北白事件に無関係の人間よ。これ以上関わる必要は無い。貴女が罪を背負う必要はどこにもないのよ……退きなさい」


 語気こそ強いものの、その声はどこか優しさを帯びていた。それは彼女の中の働き蜂の心がそうさせるのかも知れない。殺人蜂は基本的に僕以外には無関心だ。誠一おじさんの命を救ったとして、江ノ木カナには恩を感じている為か、彼女への当たりは弱い。働き蜂は校内での対決などから育まれた東雲雀との友情。女王蜂は撮影の関係で木田沙彩を強く信頼している。


 殺人蜂の手がここに来て緩んでいるのはそういった無意識下の心が作用しているのかも知れない。勿論、日嗣尊にも信頼を置く部分はあるが、散々ゲームを掻き回された上に、馬鹿にした様な態度が彼女をイラつかせている。チャンスさえあれば日嗣尊の事は躊躇なく昏倒させると思う。それを警戒し、日嗣姉さんはルール改変案を出した。けど、彼女の言葉の端々には自分のゲームからの退場を仄めかせる発言が見られる。その事から、彼女にしか語れない内容だけは発言する必要があると考えているのかも知れない。実際問題、隠者側にも知らない情報は幾つも存在し、裏情報だけでは到底賄いきれず、事件の全てを語る事はこのゲーム内では諦めていた。


 推測の域を出ないが、事件の核心に段階を追って視聴者と共に迫る事が出来たのも世論をよく理解している日嗣尊の力によるところが大きい。僕等は幼い頃、森で世間とは隔離された場所で遊んでいたので、当時の日嗣尊の事は知らなかった。彼女がメディアに顔を晒していたのは僕が事件の被害者になるまでだった。彼女は四件目の事件を防げなかった事を深く後悔している。それは僕達に対してであり、そして、佐藤浅緋にだ。


 そう言えば、遠い記憶の中で誰かが彼女の事を話していた気がする。


 ハッキリとは思い出せないけど、四件目にもきっと何かしらの予兆はあったんだ。見過ごした責任は僕にもある。だからこそ、僕はその責任を取らなければならない。生贄ゲームの勝者として僕は最後までプレイし続けなければならないのだ。


 東雲雀の顔色は先程にも増して悪くなっている。それは慕っていた二川亮の死と共に、生贄ゲームで何が行われたかという事実を目の当たりにしたからだ。彼女にとって二川亮の犯行は間違いではないか?という淡い希望は既に断たれている。北白直哉の共犯者として、そして、証拠隠滅の為に同校の生徒を殺し回った事実は消せない。元、同じ部員である軍事研究部の半数を殺した罪は、例え彼が生きて居たとしても裁かれる運命にあった。


 そう……問題は……もう一人の少年の罪がこのままでは裁けない点にある事だ。


 真犯人は二人居たとしたとしても、もう一人は実際には誰も殺していない。十三歳以下の子供に刑法は適応されない。二川亮が事件に関わっていた頃も十三歳以下であり、彼は何もしなければ捕まったとしても裁かれる事は無かった。だが、彼はそれを承知で動いた。そこに犯行動機はあり、これには恐らく……彼女も気付いたはずだ。でなければこんな茶番劇などしない。


 杉村蜂蜜が距離の近い日嗣尊を押し返して距離を離すと、腕を組み、眼を瞑りながら必死に答えを探り、唸り声をあげている。再現映像の間、眠っていた様で何処と無く寝惚けている様にも見えなくない。


「うーん……共通点は……幼い少女……十歳前後で統一されているわね。緑青は当時十歳歳でしかも少年……第五ゲームではそもそも高校生の二人……鳩君(鳩羽竜胆)君も少年よね……そもそも第四ゲームと第五ゲームは性質が違う……別物扱いでいいのかしら?」


 一人呟く蜂蜜を他所に、僕はそっと気付かれない様に部屋を見渡し、驚いた事がある。佐藤深緋を除き、誰一人、鎖に繋がれていないのだ。僕が気を失ってる間にホント、何があったんだよ……。いや、水面下で色々と起きていたのかも知れない。それに気付けなかった。ゲームの展開は夢の中で陽守芽依さんに教えて貰ったが、水面下の出来事までは陽守さんも分からないようだ。


「共通点と言えば……同じ小学校に通っていた……事ぐらいね。でも被害者として私をカウントした場合、それは適応されない。それに、もっと別の何か……私達が見落としている部分があるのかも知れないわね……犯行動機に関わる何か……生贄ゲームを始めた切っ掛けが……そこに……」


 蜜蜂に倒されたのは天野樹理、田宮稲穂、留咲アウラ……そして、僕を含む四人だ。あと倒さなければいけない人数の半数もいってない。予想はしていたけど……日嗣姉さんを相手に心理戦を仕掛けるのは無謀だったのかも知れない。所謂、僕達は「天才」を相手にしている。東雲雀も蜜蜂の攻撃に二十秒だけなら耐えるだけの強さを誇る天才。……ん?前の設問で日嗣姉さんは八ツ森側の攻撃時間を繰り越して足していくと言っていたけど、ルールに縛られない蜜蜂は反撃も出来る。それは八ツ森側にとっても諸刃の剣では無いのだろうか。実力差で言うと、万全な状態であれば蜂蜜の方が実力は上だ。長引けばそれは明確な差となって顕著に現れる。あとは精神状態が作用する。その東雲雀は虚ろな目で暫く蜜蜂を見つめ、項垂れる様に肩を落とし視線を床に落としている。そんな彼女が弱々しく口を開き、囁く。


「……もう一人の杉村蜂蜜よ……キミの言う事は正しい……私はもう……剣を振るうだけの気力をこの場に持ち合わせていない……盾としてならいくらでも矢面に立とう……しかし、しかしだ……私は間接的な事件被害者でもある杉村蜂蜜を二川部長の仇として討つ事は出来ない。悪は此方で正義は向こうにある。もう無理だ……日嗣さん」


 唸る杉村蜂蜜が目を開き、日嗣尊越しに東雲の方を見る。


「あら?ほら……棍棒の贄娘もそう言って……」


 その提案をきっぱりと断る日嗣尊。


「ならぬ!此処でお主が折れれば……それこそ貴女はその心の傷を、罪悪感を背負って生きていかねばならない。お主も前に進むのじゃ!」


「前……に……」


 日嗣尊の呼び掛けに僅かにその光が宿るが、彼女は首を振り、それを否定する。


「無理だ。まだ部長の死すら受け入れられて無い……私はもう……やり返す力も湧いてかない……」


 日嗣尊が心配そうに背後を振り向く。普段の覇気が掻き消え、しおらしい東雲雀の姿はまるで別人の様で、そこには悲しみにくれる少女が項垂れているだけに見えた。


「そうね……残り二問が終われば……私自身がその身を捧げるわ……」


 その言葉を訝しむ様に杉村蜂蜜が彼女を見上げ、東雲雀が驚いた様に目を開いている。


「正気か?!貴女は八ツ森側の要だ……貴女が居なくなればまともに問答出来る人間なんて……誰も」


「いるわ」


「居ない!私は馬鹿だ……し、賢そうな連中は、金貨の女王や女教皇、死神娘、答えられそうな人物は沈んだ。恋人の贄は天然、うちの後輩は確かに成績優秀だが、この事件で恋人の贄同様に、五件目以外には関わりの無い被害者だ。……審判の贄は未知数だが……小さな女の子が好きな変態だと聞いている。そんな男には任せられない……私を暗殺者撃退に利用するし……あとは……あっ」


「えぇ、大丈夫なのよ。私が沈んでも代わりは居るの。誰よりもこの北白事件とその被害者達と向き合ってきた女の子がね……だから雀さん……あと二問だけ付き合って貰えるかしら?攻撃を受けるだけでもいいの」


 東雲雀が何かを納得した様に頷く。東雲雀は自分の事をアホだと思っている節があるが、彼女の六感にも似た感覚的な思考は時折、誰よりも核心に近付く。僕と蜂蜜が本当の意味で再会出来たのも、彼女の杉村蜂蜜の行動パターンを見抜いた助言があったからこそだった。


 日嗣尊と東雲雀が向き合い、頷き合うと再び蜜蜂へと質問する。


「さぁ!時間よ……答えなさい!蜜蜂っ!」


 蜜蜂が呆れた様に溜息を吐き、観念した様に答える。


「降参よ、分からないわ。第五ゲームがそもそも北白直哉を嵌める為に仕組まれたと仮定して、除外した場合、その被害者の女の子の共通点は……事件に遭うまでごく普通の家庭に生まれ、()()()()()()()()()()()ぐらいしか思い付かないわ。佐藤姉妹も優しい両親に囲まれ、だからこそ、不幸な生い立ちの緑青を引き取って世話をしてくれた。天野樹理も事件に遭うまでは普通の暮らしをしていたはずよ。荒川静夢の話では、犬の散歩を日課にしている素直で可愛い女の子だったって話だし。二件目の事件の被害者の女の子達は……行方不明になった後もずっと彼女達の行方を貴方が事件を暴く迄の間、必死に彼女達の行方を高い報償金を掛けてまで探し続けていた。愛されていたのだと思うわ。日嗣尊、貴女はどうだったの?事件に遭うまでは……幸せだったんじゃない?」


 その言葉を受け、無意識にその瞳から涙を流す日嗣尊。


「私は……確かに幸せだった。少し精神的に脆くて、姉贔屓だったけど母は私達双子を愛してくれたし、人形造形師として名のある父の下、比較的豊かな暮らしをしていたわ……」


 日嗣尊が過去を思い起こしながら訥々と語る。


「動機は……幸福に暮らす彼女達への妬み……かしら?」


「……」


「二川亮は比較的生活環境には恵まれていた……けど、愛情に飢えていたのかも知れないわね。被害に遭った女の子達は全員、比較的生活水準が高く、充分な愛情を注がれていた」


「さて、次の設問に移ろうかの……」


 杉村蜂蜜が音も無く隠しナイフを手に日嗣尊の眉間へとその刃を当てがう。


「み〜こ〜と?」


「くっ、なんでそんなに頭が回るのじゃ?そうじゃ!正解じゃ!」


「宜しい」


 杉村蜂蜜が得意げに微笑み、満足した様に椅子に座り直す。日嗣尊が悔しそうに地団駄を踏みながら回答する。


「ぐぬぬ……これを答えるとはなかなかやるのぉ……伊達に事件を追っていた訳では無いわね。妾の推測では共犯者の少年達は意図的に被験者を選んだ可能性があるの。それも比較的幸せな家庭をね……」


「……それはつまり」


「共犯者の少年達は……恵まれない環境下にあった」


「恐らく。事件を引き起こす事によって彼等は不幸な人間を増やそうとしたのかも知れないわね。推測の域を出ないけど、自らの不遇を呪い、恵まれた環境で暮らす彼女達を妬んでいたのかも知れないわ」


「自らの不遇を、親を、世界を憎んでいた……その憎しみは狂気を生み、あの事件を生み出した……待って、やはりそれだとおかしいわ。だって、緑青の境遇はどう考えても不遇だわ。被験者として選ばれる事自体が生贄ゲームの趣旨に反してるわよね?」


 日嗣尊が一歩退がり、カメラへと身体の向きを変える。


「そうじゃ、だから何度も言っておるであろう?彼の存在自体が想定外(イレギュラー)だったと。ルールを曲げてまで彼を選ぶ理由があったのかも知れ無いわ」


「私の緑青を選んだ理由……個人的な恨み……緑青以上に呪われた境遇……」


 日嗣尊が腕を組みながら真っ直ぐカメラを見つめている。


「もしくは……選ばざるを得なかった……」


 その言葉に杉村蜂蜜と周りに居る贄達が動揺する様に日嗣姉さんに注目する。

「尊……何を言ってるの?まさか私の緑青は……」

「うむ。石竹君を被験者として選ばざるを得なかった可能性があると」

「……どういう事かしら?犯人としては不本意だったと?」

「うむ。物的証拠も無い推測の域じゃが……少年を生贄として被験者に選ぶという事は共犯者の犯人にとっては賭けじゃ。何故なら……」

「贄としての資格を少年である二人の共犯者も得てしまう可能性があったから」

「うむ。しかし、北白直哉は生贄ゲームのルールを遵守し、石竹君を殺さなかった。額に付けられた傷も致死のものでは無かった。殺せたのに殺さなかった可能性が高いわ」

「そして、最初からそう仕向けた例外的な人間がいるわ……」

「まさか……」

「妾もまだ半信半疑じゃが……被験者として彼を選ばせる様に誘導したのは佐藤浅緋さんである可能性が高い……」

「ッ!?」

 周りの贄やレポーターの白滝苗さん、カメラマンの佐々本さんまでもが驚きの声をあげる。


 その彼女が僕に授けた向こう側の霊質で形造られた「隠者刀(ハーミットナイフ)」が仄かに緑青色の輝きを帯びる。僕が見た夢の中の佐藤浅緋が本物なのだとしたら、日嗣姉さんの推測は正しい。夢の中で彼女は自らの過ち、罪を悔いていた。


『本来ならあの第四生贄ゲームでもう一人の被験者はお姉ちゃんだった。私は……お姉ちゃんには生きていて欲しかったから』


 だから浅緋は僕がそうなるように仕向けた。意図的に。全ては姉を助ける為に。そして、自分を犠牲に僕すらも助けようとした。僕はこの事実をどう深緋に伝えようか迷っている。物的証拠も無く、当時の言葉でも無く、紛れも無い()()()()()()()の言葉だ。それを信じろと言う方が無理な話だ。それに、それを知った深緋あいつは……どんな気持ちで()()を受け止めればいいんだ?今はまだ、伝えるべきタイミングでは無い。太陽の紋が描かれた面を被る少女がじっと日嗣尊の背中を見つめている。その視線に一体どんな気持ちを込めているのだろうか。


 それにしても流石日嗣姉さんだ。自力でそこまで辿り着くなんて……。僕がズルして手に入れた真実を自分で掴み取るなんて。


 だからこそ……日嗣姉さんは危険だ。


 確実に此処で潰しておく必要がある。


 そう思うだろ?……もう一人の僕も。

蜜蜂「日嗣尊……消さなければ……危険ね、緑青の貞操が危ないわ……」

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