マザー
<佐藤喫茶店>
三基のプロペラがゆっくりと店内の空気を循環させながらテーブルに着いた私達の冷え込んだ身体をやんわりと暖めてくれる。間接照明の穏やかな灯りと共にレトロな雰囲気が漂うこの喫茶店へは何度か家族で訪れた事がある。親友でもあるウェールズ人の紅髪女性がアールグレイの紅茶に暫く目を落とした後、此方の様子を伺う様に私の蒼い瞳を覗き込んでくる。私が目の前に出された「佐藤スペシャルブレンドコーヒー」にいつまで経っても口をつけないからだろうか。黒面から漂う懐かしい珈琲の香りを楽しんでいたのに。
「ゼノヴィア……私が猫舌なの知ってるでしょ?」
私の問いかけに呆れた様に首を振り、溜息を吐く彼女。黒のハイネックのセーターにタイトスカートの上から白衣を着る彼女の顔には日本のマフィアに殴打された跡がまだ薄っすらと残っていた。戦場の紅い悪魔と恐れられていた嘗ての彼女からは考えられない様な傷跡ね。相手を殺せばここまで怪我をしなかったのに。暗殺者によって受けたダメージが残ってたとはいえ、彼女なら充分に対応出来たはずだった。
「娘のハニーの事気にならない?」
私は薄っすらと唇に笑みを浮かべるとそっと湯気がおさまった黒面へと口を着ける。
「フフ……これでも二児の母親よ?気になるからこうして此処へっ……あづぃ!」
珈琲を零しながらも何とか小皿に戻すと舌を出して籠もった熱を放射させる。その光景に慌ててカウンターから飛び出してきたのは、執事服姿の藤桃花染さん。新しいお水と共にテーブルをおしぼりで拭いてくれている。
「ゾフィーさん、制服に珈琲の染みが……それに新しいものとお取替えを……」
胸元を見下ろすと紺色の国防省の制服の胸元に黒い染みが出来ていた。言われなければ見えないもの。分からない程度のものだ。問題は無いわ。
「構わないわ。どうせ後で汚れる予定よ。それに折角御主人が淹れて下さった珈琲、最後まで味あわせて頂くわ。冷ます時間も勿体無いしね」
彼女が申し訳なさそうに深々と頭を下げるとカウンターへと戻っていく。彼女に非は無いというのに。静かな店内に於いて客層は大きく分けて三つのグループに分類されて居た。
一つは物珍しいのか、英国人である私達の様子を伺う客。一つは店内のカウンターに急拵えで設置された東芝製のREGZA、デジタルハイビジョン液晶テレビに映し出された中継映像に食い入る客。そしてもう一つは、テレビに映し出された金髪の女の子と私の顔を見比べて首を傾げる者に分かれている。娘のハニーは私の特徴を引継ぎながらも、その顔付きは英国人にしては幼く、髪色も金色と言うよりは蜂蜜色だった。そして最も印象が違うのはその瞳の色合いの深さだった。その緑青色の瞳がまるでエメラルドの様に輝き、人々を惹きつけてやまない。私ともう一人の娘、サリアの瞳は私と同じサファイアの様な輝きを持つ蒼色だと言うのに。私はまるで独り言の様にゼノヴィアに囁きかける。
「戻った……わね」
その言葉に怪訝な表情をとるゼノヴィア。心理士でも患者に踏み込めない領域は存在する。患者が医師を拒否した場合だ。彼女は確かに優秀な隊員でもあり、有能な臨床心理士でもある。けど、母と娘の繋がりを甘く見ては困るわね。
「入れ替わった……ではなくてですか?」
画面の中ではガスマスクを着用したハニーのお気に入りの男の子が質問を繰り出す。
《 question(12): 第四ゲームの敗者、佐藤浅緋の死因は……腹腔を北白直哉によって切り開かれた事により発生した臓器破損による……ショック死だった……? 》
その名が発せられた瞬間、心此処に非ずといった態度をとっていたハニーの瞳が微かに苦痛に揺らぐ。それが貴女の罪なのよ。何の取り柄も無い日本人の男の子を好きになった貴女が犯した罪。少しでもと彼の生存率を優先させた結果、同様に誘拐されていた少女を貴女は見殺しにした。そして貴女は犯人に最愛の男の子が殺される事に恐怖し、狂気に飲まれた。
幾ら別の人格にその罪を押し付け様ともその呪縛からは逃げられないわ。目に見えなくともその重みは貴女でも感じ取れるはずだから……。
「私は正直な所、娘以外の命はどうなったっていいわ。こんな茶番ももうたくさん。お腹一杯だわ」
ゼノヴィアが驚いた様にそれに反論する。店内の人間も鉄砲を食らった様に目を丸くして此方を見つめてくる。
「皆んな、大事な八ツ森高校の生徒達です。主犯であるハニーの幼馴染、石竹緑青君を含めてです。そんな言い方は無いんじゃないですか?」
私は二口目の珈琲に口を付けながら返答する。
「誘拐は立派な犯罪よ。国防省に席を置く私の娘を誑かせて共犯者に仕立て、八ツ森市民を恐怖に陥れているのは誰かしら?ハッタリだとしても彼は口頭で山小屋爆破の宣言まで口にした。これはもう英国側に対する立派なテロの犯行声明よ。撃ち殺されても文句は言わせないわ」
「テロだなんて!彼は国を脅かす為に動く様な男の子じゃありません!」
「事実、私の娘を営利目的で誘拐した。これをテロと呼ばずに何か!直に我々の部隊が作戦ポイントへと到着し、これらの大事件を起こしたテロリストを排除するであろう!」
ゼノヴィアの手にはいつの間にか黒い拳銃が握られ、その銃口が此方の心臓に向けられる。
「今直ぐ部隊の撤退を」
静かだけどそこに込められた決意ある声が私の鼓膜揺らす。
「誰に銃口を向けているのかしら?」
「八ツ森高校の生徒達に危害を及ぼそうとする親友にです」
「違うわ。上官よ。貴女は今、祖国を裏切ろうとしているの」
それに構わず、私は目を瞑りながら3口目の珈琲に口をつける。数年前の私の脳裏に何度か味わったその香り豊かな風味と仄かな酸味が蘇る。私の鼓動は銃口を突きつけられても揺るがない。七年前、私は罪を犯した。傭兵王と謳われた父親と本来穏やかであるはずの街、有能な者達が集う日本警察。英国側と太いバイパスを持つ対化物専門特殊部隊。私は信じたのだ。日本と彼等を。しかし、それは最も簡単に裏切られた。解決へと向けて終局を迎えていたはずの生贄ゲーム事件……犯人の特定と逮捕が執行されるその間際、私の娘は事件に巻き込まれた。放っておいても助かっていたはずの幼馴染の男の子を助けようとして。彼女が受けた精神的ストレスは凄まじく、解離性人格障害を引き起こした。何もしなければ無傷であったものを。たまたま私の夫、杉村誠一が自分の身を守る為にと手解きした技能が役に立っただけ。英国で普通の暮らしをして育っていれば犯人に弄ばれ、殺されていた可能性だってある。まぁ、犯人の北白に幼児性愛の要素は無かった様だけど。
私がそっと珈琲のカップを受け皿に置いた瞬間、店内の窓ガラスを貫通し、ゼノヴィアの持つ拳銃が弾き飛ぶ。その指が吹き飛ばされていない事を確認した後、待機の合図を窓越しに送る。耳に付けている小型無線機でも応答可能だけど、そうするまでも無いわ。警戒した私の護衛、要人警護を務めるイギリス陸軍特別航空任務部隊、通称SAS (Special Air Service)の三人はSASの組織の中で第22 SAS連帯、戦闘中隊の予備とし存在するR中隊に所属している。予備部隊とは言えど、その戦闘能力は戦闘中隊でも充分に通用する実力の持ち主であり、過去にアフガニスタンのアルカイダ殲滅作戦、イラク戦争では対テロ、対ゲリラ任務にも従事したメンバーでもあり、私の信用する数少ない戦闘員でもある。チャーリー、ウォード、ポール。彼等は私の合図さえあれば何時でもその引き金を引く事が出来るだろう。英国の要人がこんな片田舎でお茶を嗜んでいるなんてテロリスト達も考え付かないでしょうけどね。私の部隊は現存する各国の特殊部隊の中で、最強とも言わしめているエキスパート集団だ。SASの黒いプロテクターを全身に装着した彼等の表情は伺い知れないけど、必要とあらばこの三人は私に危害を及ぼそうとする人間を一般人だろうと何の躊躇も無く屠るだろう。それが例え、年端もいかない高校生の少年少女だろうと。
「ゼノヴィア……ごめんなさいね。要人警護は彼等の仕事でもあるの。親友だろうと彼等にとっては関係無い……わっ?!」
カウンターからいつの間にかやって来た佐藤桃花染さんが私の顔に飲んでいた珈琲を浴びせるかける。ミディアムヘアーの髪に黒い液体が滴り、白のブラウスを茶色に染めていく。銃弾を店内に撃ち込まれた以上に驚いた客達は静まり返っていた。私はSASの三人が手に構えたM203グレネードランチャーを装着したアサルトライフルM16A2への発砲禁止の合図を出した上で、佐藤浅緋ちゃんの母へと目を向ける。
「……店内での発砲はご遠慮下さい」
最もである。先に銃を抜いたのはゼノヴィアなのだけど私しか責められていない様だ。発砲が行なわれた段階で刑事事件ではあるのだけどね?客に珈琲を掛けておきながら尚、店側としての態度を崩さない彼女に感心する。その顔は亡くなった佐藤浅緋ちゃんによく似ている。昔、娘と緑青君をこの店に迎えに来た時、話しかけて来た生前の彼女の事を思い出す。彼女は娘と緑青君の二人がモタモタして中々現れない隙に、少し怯えながら私に近付き、私に伺いを立てにきた。
「ハニーちゃんと緑青君って、結婚するの?」
心配そうな顔で顔を赤くさせた七歳の女の子の頭を撫でながら私は率直に事実を伝える。
「唯の幼馴染よ。時期が来ればそれぞれの違う道を歩み始めるでしょうね……」
娘は彼の事をお気に入りの様だけど、子供心は得てして変わり易いわ。たまたま近いところに彼が居ただけに過ぎない。その冷たい答えに反してその女の子は嬉しそうに口角を広げる。
「嬉しいの?」
「うん、だって!私やお姉ちゃんにもまだチャンスはあるって事だもん!」
私は眉を顰めながら頼りなさそうな少年の方を眺める。
「彼、意外とモテるのね……ならハニーが居なくなっても安泰かしら?」
少女が今度は何の警戒心もなく、スーツ姿の私に抱きついて、私の顔を見上げる。
「皆んな気付いてないだけで、緑青君は結構凄い男の子なんだよっ!」
「……本当かしら?いつもハニーの尻に敷かれてるようだけど」
「あとね……優しいの」
その囁きにも似た小さな声が私の胸に埋められた口から発せられる。
「あらあら……頑張ってね?私はお嬢さんを応援するわよ?」
優しく体を離すとお呪いの意味も込めてその額に軽くキスをする。照れ臭そうにしながらも笑う彼女の笑顔は今でも鮮明に覚えている。その光景を振り切る様に、彼女の母親から眼を背け、懐から取り出した小切手にサインをする。
「失礼。彼等は私の警護人。銃を突きつけられれば流石に対応するわ。無能では無いのでね。それとこれ……窓の修理費に使って」
小切手に修繕費以上を上乗せした額で提示する。その額も確認しないまま昔と殆ど変わら無い姿の彼女が私に突っかかる。私も二児の母親とはいえ、未だに20代後半に見られてしまうぐらいは変わって居ない。それは失踪した前の夫、サリアの父親の影響でもあるのだけど。怒りを伴った彼女の声が私の耳に届く。
「当然です!修理代は頂いておきます!……それと、緑青君の事を犯罪者呼ばわりしないでくれるかしら?」
私は呆れて溜息を漏らす。
「立派な犯罪者よ。それとも、お姉さんの方も誘拐されて貴女は平気なのかしら?誘拐犯の肩を持つ母親がどこにいるのよ」
私の襟首を掴み、顔を引き寄せ、その怒りを私にぶつける。
「此処にいるわ!貴女は気付かないの?!彼が何をしようとしているのか!」
その背後から浅緋ちゃんの父親、宏治さんがそっと私から桃花染さんを離す。
彼が何をしようとしているか。彼は躊躇無く同じ高校に通う男子生徒を射殺した。知人を屠る事に躊躇の無い人間の傍に私の娘は居るのよ。その事に貴女は情が邪魔して気付けていない。
「見たままの、彼の口から発せられた言葉通り受け取るとしたら、彼は彼を騙し続けてきた八ツ森に対する言わば復讐が行なわれようとしている。それは市民を恐怖の底に陥れた北白事件の再現を意味しているわ。あの事件の被害者少年は時を経て、その記憶と共に事件加害者へと成り下がった。他に何があると言うのかしら?」
夫に抱えられながらも此方を睨みつける彼女。
「彼は今、いえ、彼等は……必死に過去と向き合い、前に進もうとしている。そして、事件被害者達が生きた痕跡を私達に示そうとしているの。それに貴女が気付かないのだとしたら母親失格よ……」
「……フフッ、私には娘を二人ともおいそれと生贄に捧げる貴女達の方が酔狂にしか見えないわよ」
乾いた破裂音が店内に響く。珈琲を被った私の黄金の髪から黒い雫が伝い、足元へと染みを作っていく。
「殴って気は済んだかしら?」
桃花染さんが怯えた様に振り抜いた手を握り締める。
店内のモニターにはガスマスクを被った彼が褐色の少女の答えを正解だとする声が聞こえてくる。そこへ、別動の戦闘中隊から指定のポイントに到着したとの報告を受ける。私もそろそろ行かなくてはならないようね。此処へはあの事件で娘を失った両親の声を聞きに来ただけだ。やはり自分の娘が誘拐されたと言う割には落ち着いている。何か私達の知らないやりとりがきっとあったに違い無い。でも私はその危険性が0.01%でもある限り安心はしない。
「私は権力も兵力も財力も持ち合わせています。何もしないまま自分の娘が危険な晒されると言うのなら、私はその全てを投げ打ってでもそれらを打ち砕くつもりです」
もうこの家に居ない女の子を思い浮かべる。彼女は好きな男の子に絞め殺され、異常者の男にその腸をぶちまけられた。私は当時、ありとあらゆる全てを使って事件区域を封鎖し、違法ギリギリの手段で英国側から日本へと事件に対し介入した。もうあの女の子は死んでしまった後だと言うのに。それぐらいしか私にはしてあげられる事は無かったから。
「もう……後悔なんてゴメンよ……ね?浅緋ちゃん……」
その言葉に目を見開く桃花染さん。モニターの中であの女の子の声色に似たは少女の声が聞こえてくる。その画面には太陽の紋章が描かれていた。
『今の質問に対する回答、確かに……死因は窒息死という見方が強く、ジャッジも✖️という審判も納得いくものです。しかし、検死者達の見解の一部に、それを懐疑的見た人達もいました……』
あの声は恐らく目の前に居る親御さんの娘さん、姉の佐藤深緋ちゃんの方ね。接点は殆ど無かったけど、恐らく私なんかよりもずっと……後悔をし続けているだろう。
「深緋……どうして?」
佐藤さんご両親が狼狽えながら画面を凝視している。
『事件当時、佐藤浅緋……私の妹を彼に殺させる為、手持ちのナイフで彼の額を斬りつけました。浅緋の手にも大量に彼の血が付着していた事から……必死に妹は止血しようと試みたようです。それほどの血を流し、そして、犯人の北白からの暴行も彼は受けていました。これは北白の予想に反して恐らく彼が暴れた為だと思います。その証拠に、北白直哉は警察に拘束された際、いくつかの怪我を負っていました』
淡々と語る彼女の声に店内に居る客は固唾を飲んで見守っている。その事実は報道規制が即座に為された事もあるのだけど、それを知る人間は殆ど居ないと思われる。彼女はその可能性を背負い、そしてずっと認めたくは無かったのかも知れない。何故なら……。
『ましてや十歳の少年です。失血により意識が朦朧とする中、仲の良かった女の子を殺害するだけの力と殺意が彼にあったかどうか……疑問視もされていました。妹は首を絞められ、意識を失った直後、腹腔切り裂かれていました。もし、仮死状態なのだとしたら……直接の死因は突き立てられた刃による内臓の損傷、及びショック死です。それはつまり……僅か一瞬とは言え、腸を切り裂かれる痛みを彼女が味わった可能性を示しています。それは……私にとって残酷な事実であり、そして、彼が妹を殺す直接的死因にはならなかった可能性……を示唆しています……よって、ジャッジは……◯でも✖️でも無いと……思います。その事実を知るのは……死んだ妹に於いて他にはいません。少年は直後にその場で倒れ、犯人の北白も彼女は絞殺されたという認識でした。他に知る者がいない為……このクイズの回答を判定できる者は居らず、無効とするのが……良いと思います。私からは……以上です……』
浅緋ちゃん……見ているかしら?貴方のお姉さんもこの七年間、ずっと戦ってきた。貴女が殺されなければならない理由と真相を求めて。もっと女の子らしい幸せを求めても許される年頃。その全てを捧げ、貴女の死を後悔の中で追い続けてきたの。だからもう……許してあげてもいいんじゃないかしらね。彼女に罪は無い。ただ、只管、その場に自分が居合す事が出来なかった事を悔やみ続けている。被害者やその事件に関わってしまった者達の後悔。そして、関われなかった被害者遺族達の無念は計り知れない。待機指示を出している本隊から疑問系で確認の報告が入る。
「レヴィアン長官?別働隊は例の山小屋まで向かわせましたが……我々は本当にこんな所で待機してて宜しいので?」
私は悪戯っぽく微笑むと耳のカフから部下へと指示を出す。
「えぇ。今から私もそちらのポイントに合流するわ。周囲の警戒、怠らないで?」
戸惑う部下からの無線を切り、手首を抑えているゼノヴィアに声をかける。
「貴女も来るかしら?」
彼女は苦い顔をしながらも拳銃を拾い、白衣の内ポケットに仕舞うと店を出る為に歩き出した私の後ろを付いてくる。退出のベルをその耳に聞きながら立ち止まり、佐藤桃花染さんと宏治さんに言葉を残す。
「また寄らせて貰うわ……全てが終わった後でね……。もちろん、爆死したはずの夫と娘達を連れてね?」
店内のモニターから少年少女達の喧騒が聞こえてくる。大方、先程の深緋ちゃんの異議をどう扱うかについてだろう。ここまでは大凡の状況証拠と推論でもっとも近いとされる回答を解としていた。此処からは恐らく、現場に残された物的証拠や発言を元にもう一度あの事件の検証が行われていくだろう。そうなったら最後、ハニーと緑青君に勝ち目は無いわ。
私は急がなくてはならない。
隠者は恐らく、命を賭して裁かれる為にその場に立っている。
これは全て娘の為。
これ以上、最愛の者が壊れない為の最良の手段。その為なら私は悪魔にだって魂を捧げるだろう……。
ゾフィー=レヴィアン
「ゼノヴィア……貴女、教師に向いてるかもね」
ゼノヴィア=ランカスター
「私が……ですか?まさか?夜の家庭教師になら向いてると思うんですけどね……」
ゼノヴィア
「……バカ」
SASの警護人三人
「(是非、色々と教えて頂きたい……)」




