表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染と隠しナイフ:原罪  作者: 氷ロ雪
最後の生贄ゲーム
247/319

生贄予行演習

「それでは、例題として実際に問題を出す手順を一通り踏んでみましょうか。用意は良いですか?白滝レポーター?」


「はい!宜しいです!」


隠者と名乗る少年と一定の距離を空けて座る白滝苗。位置関係が分かりやすい様に、カメラは彼女達の側面から捉え、左側に隠者、右端に白滝レポーターが床に正座している形となる。正面には部屋の奥、一列になって生贄に選ばれた仮面を付けた少年少女達が状況を心配そうに見つめている。室内を照らす光が、裸電球から天井に設けられている蛍光灯へと切り替えられ、全体的に電球色に室内が照らされ始めていく。作り変えられたのか、山小屋の床は灰色へと塗り替えられ、内装もより、しっかりしたものへと変えられている。それはこれから始まる彼等の激しい攻防戦を予見しての事だった。生贄達の片腕に繋がれた鎖は、奥の壁に打ち付けられており、この場所から逃げる事は不可能であり、長いとはいえ、リーチ的にも限界がある事を示唆していた。そこに、照明の切り替えを終えた金髪の少女、蜜蜂がカメラの邪魔にならない様に、回り道をしながらちょこんと隠者の腰掛ける椅子の側に三角座りをする。ボリュームのある白いスカートから伸びた細い脚は黒いラバー製のブーツに包まれ、その先端がソワソワとぶつかり合っている。Σterでは見えそうで見えないその太腿の付け根に対するコメントと、太腿がトレンド入りしていた事を蜜蜂は知らない。


「それでは練習問題です。白滝さん、まずは気楽に構えて下さい。貴女は、貴女が生贄にならない限り傷付くのは贄として選ばれた少年少女達なのですから」


その言葉にムッとした表情を見せるレポーター。自らが安全な立ち位置にいる事を改めて提示され、彼女の中の正義感に触れたからだった。


「待って下さい。私自身を生贄として選ぶ事は可能ですか?」


隠者は考える様に首を傾げ、その提案の是非を考えながら答える。


「回答者代表としてその場に居る限り、ルールIが適応され、贄とし貴女は名乗りを上げられない。しかし、ゲームが進むに連れ、贄の中から脱落者が出てくるとします。その余った仮面を着用し、あの場に並べばそれは可能です。しかし、解答権を別の誰か譲る事となります。変わりの回答者を用意出来るなら、成立するでしょう」


真剣な表情で「分かりました」と頷く白滝レポーター。


「まぁ、これは例題です。なるべく正規のルールに従って進めてみましょうか。回答者代表、白滝さん。セレクトコールをお願いします」


白滝レポーターは並ぶ生贄達の面子を眺め、その中から一人を決めてコールする。


「SERECT!The Death 13 !」


生贄の中からコールされた少女が回りを見渡し、自分の事である事に気付くと、自らを指差した後、ゆらりとその場に立ちあがり、ペタペタと裸足を引きづりながら前へと出る。それに合わせて、蜜蜂が立ち上がると、隠者の背後を回るようにして死の仮面を付けた小学生の様な女性の元に近寄り、その手首の枷を、胸元に閉まっていた鍵を取り出し、解放する。その手を不思議そうに眺めながら死の少女は手の開閉を繰り返す。仮面の下から少女の不思議そうな声が漏れ出す。

「あら?自由にしていいのかしら?」

蜜蜂がカメラの邪魔にならない様に定位置に戻った後、隠者が落ち着きながら答える。

「はい。ルールIIとIVが適応された場合、不公平ですからね。勿論、回答時間が終われば、再び枷を付けさせて貰いますが」

「随分余裕ね。もし、私がこの隙に逃げたり、反撃したらどうするの?」

「貴女はそんな事をする人じゃない……特に私と彼女に対しては。と、思っていますが、もし、万が一にそうなった場合は……ルール違反により、この山小屋自体を爆破します」

「……そう。私は別に誰がどうなっても構わないけど、君と彼女が爆死するのは見たくないわ。だからルールは守るわ」

「感謝します。では最初の質問ですが……」

「待って?先攻後攻に関するルールは無いわよね?」

「はい。対して変わらないかと思いまして」

「あるわよ。先に質問を出来るって事は、攻撃のチャンスが多く生まれるわ。もし、貴女達が先攻して、此方が答えられなければ……即効で何も出来ず、一人消される事になる。そこの蜂蜜なら十秒あれば私達を殺害、もしくは行動不能に陥れる事なんて簡単でしょ?」

「……確かに、そうですね。質問に正解さえすれば、此方から生贄達への攻撃は実質、無い事になるので、問題視していませんでしたが……分かりました。先攻は譲りましょう」

「OK。じゃあ、こっちから質問いくわよ?くえっしょん!」

隠者がその言葉を塞ぐ様に手を前に突き出す。

「待って下さい。貴女は回答代表者ではありません。質問権は……白滝レポーターに……あっ」

「フフッ、最終学歴小3だからって舐めないで?あくまで彼女は回答に関する代表者よ。質問に関して明確なルールは定められていない。それとも、ルール宣言後に変更するのかしら?」

隠者が唸る様に困った声を出す。

「急拵えなルール、抜けがあった様ですが……分かりました。質問に関してQuestion宣言の権利を回答者のみに限定する事はしません。質問の権利をSerect後、得てからならQuestion宣言は誰であれ有効とします」

「フフフ、なら、さっきのくえっしょん宣言は有効って事ね?いくわよ?私からの質問……あっ、クイズの形式は◯✖️問題で、回答後、その理由も答えるのよね?」

「はい。両者が合意した後、二択で答え、理由も述べて下さい。判定に関しては蜜蜂に行なって貰いますが、蜜蜂が納得いかない場合は、幾つかの確認の質問を受けるかも知れませんが……。ただ、ルールXの適応により、私が意義を唱えた場合、最終的に却下される場合もあります。あと、私は管理者的な立場なので……回答自体は助手の蜜蜂が行ないます」

その言葉を受けてウンウンと首を上下させる蜜蜂。本人の与り知らぬΣter上ではいちいち仕草が可愛すぎると話題になっている事を二人は知らない。その事を知るのはハート型の仮面を付けた女生徒だけであった。彼女だけ、その視線は手元の端末に向けられている。画面越しには誘拐されて疲れ切り、項垂れている様にしか見えない訳だが。

「そう……分かったわ。なら、私からの質問よ……」

そう宣言した死の仮面の生贄が、その面を外して床に放り投げ、その素顔が全世界に配信される。慌てる隠者と蜂蜜に、その幼さを強く残す口元がニヤリと笑みを作る。あたふたする二人を余所に、彼女が質問を投げかける。

「そこの星の仮面を付けた女の子……日嗣尊のバストサイズはDカップ以上?◯か✖️か!」

その質問に隠者の身体が硬直し、傍らに居る蜜蜂が彼を見つめている。カメラのアングルが、星の仮面を付けた彼女の胸元へ寄っていくと共に、ブラウスの合間から覗く黒い下着と白い肌、そしてその制服越しに丸みを帯びた膨らみをカメラが映し出す。したり顔の死の少女に、我に返った隠者が訂正を入れる。いつの間にか、傍らの少女の手にはナイフが握られ、彼を脅している様な格好をとる。心なしかその表情も冷たいものへの変わっている様に視聴者は見えた。撮られている事に気付かない星の少女は恥ずかしそうに画面越しに両手を顔に当てている。

「ちょ、樹理さん!それは今、関係無い質問ですよ!ハニー、ちょっと、ナイフ収めて!」

変声器越しとはいえ、口調が戻ってしまっている彼を満足そうに見やる死の少女。彼は慌てて言葉を取り繕う。

「ルールⅫの適用により、その質問は却下で……」

「あら?日嗣尊に関する質問よ?」

「それでも、北白事件には関係無い……です」

「北白事件解決に一役買った彼女に関する質問よ?関係あるわよ」

「胸のサイズは関係ありません」

「……いいかしら?この北白事件は……貴方が引き継ぐ形で既に貴方とも関わりを持ってしまってるの」

「そう……ですね」

「これは貴方に対するチャンス問題なのよ?あの子のバストサイズの目星は……一緒にお風呂に入った子か……男として抱いた射殺された青年か貴方しか知らないはず。二人ともこの事件には大きく関わっているわ……この質問はそう!犯人の男なら知っていて当然の情報よ!」

「「ぐわぁぁぁ!!」」

その言葉に同じタイミングでその場でもがき苦しむ隠者と星の少女。すぐ側まで蜜蜂のナイフが迫る。

「蜂蜜、どうかしら?この質問は認められる?」

返事二つでそれを認める蜜蜂。

「死の13さん。その質問、認めます。いえ、認めさせます。ちなみに私は、蜂蜜では無く、今は蜜蜂です」

「ちょ、ハ、蜜蜂、ダメだって。ルールが……」

「ろっくん……抱いたの?尊さんを」

「あっ……そう言えば……働き蜂はその事は口が裂けても女王蜂には言えないって前に言って……」

「ど、どぅ……なの?」

今度はボロボロと泣きだす蜜蜂を必死に宥める隠者。

「ろっくんひどいよ!私もまだ揉んで貰ってもないのに!」

「え、えぇ?!ごめん、ごめんなさい。わ、分かった。この質問認めるから早く次に行こうな?後できっちり説明するから……」

「ぐすっ……後できっちり揉んでくれるの?!」

「も、もむから!機嫌をとにかく直して!」

錯乱するあまり蜂蜜が妙な取引をする最中、死の少女がこっそり蜂蜜の声真似をして確認をとる。

「尊さんの胸は私より大きかった……D以下?」

「う、うん。多分、Cぐらい……」

「あんさー?」

「Acceptだって!」

死の少女がやんわり微笑むと確認の為に本人直々に確認をとる。

「どうなの?尊?」

胸を隠しながら星の少女が恥ずかしそうに答える。

「最近、正確に測ってないけど、多分、蜂蜜よりは小さいから……Cだと思う」

「フム……本人証言だけど、まだ検証の余地があるか。……深緋、頼めるかしら?」

その言葉にまるで幽鬼の様に立ち上がった深緋が、彼女の背後に回り込むと、そっとその手で彼女の胸を弄りだす。それに合わせて星の少女のくぐもった声がモニター越しに漏れ、茶の間が凍りついていく現状を彼女達は知らない。それに反してΣterでは大変な賑わいを見せている訳だが。数分間の太陽の少女によるテイスティングにより、正確な数値が叩き出される。それは彼女の特技の一つであり、持たざる者の業により生み出された(わざ)の一つでもあった。

「C寄りではありますが細いので……アンダーとの差は約18㎝……Dの65辺りで通用するサイズです……つまり……Dカップを名乗っても問題無いかと……」

まるで何事も無かったかの様に元の場所に戻っていく太陽の少女を尻目に、星の少女は暫く動けずにその場で蹲っていた。間髪入れず、死の少女が蜂蜜に是非を問う。

「さぁっ!蜂蜜!◯なの?✖️なの!?」

蜂蜜がその声に我に返り、ハッとして立ち上がると、カメラの前に向き直り、両手に構えた◯と✖️の棒をクルクルと振り回した後、元気良く✖️の棒を掲げ「不正解だよっ!」と叫ぶ。

「フフッ、さて、ここでもう一つ問題があるわ。急拵えなクイズ形式が仇となったわね。このクイズ、私達が間違えた場合は、十秒間、蜂蜜に攻撃されるわ。其方側が出した問題に対してのみ、正解した場合、此方側が緑青への攻撃を許される。想定してなかったようだけど……じゃっじをそっちが一方的に決めるルールに於いて、そちら側が不正解であった場合を想定してなかったんじゃないかしら?」

「あっ!?」

驚いた様に蜜蜂が◯の方の棒で口を抑える。

「ろっくん……」

「へっ?」

「歯ぁ食いしばれぇ!」

「えっ?!」

ルールの穴を埋めるべく、蜜蜂はルールIV「不正解があった場合、蜜蜂から10秒間だけ贄が代わりに攻撃される」を適応し、管理者である隠者を10秒間に渡って殴打し続けた。それでも彼女の攻撃に耐え続けた隠者はボロボロになりながらも、訂正を入れる。

「違う違うそうじゃない。そっちじゃない。何で味方同士で潰し合う事になるんだよ。私は贄じゃ無くて管理者。質問に対して此方側が不正解になった場合は、ルールII「正解なら隠者を攻撃する時間を選択された贄が一分間攻撃を行なえる」方が適応され……」

その言葉が言い終わるか否か、その瞬く間の後、死の少女が隠者にドロップキックを放ち、彼が床に転がる。

「なぇっ!?」

「ルール了解したわ。一分間ね……」

その手にはいつの間にかRAT-5と白文字で刻印された黒刃のナイフが握られていた。その光景を見た蜜蜂が叫ぶ前に、死の少女は素早く隠者にその刃先を向けて襲いかかる。それはこのクイズゲームの穴、二人の少年少女に対する精神的揺さぶりの有用性、そして、この演習により後続の者が活路を見出す為の導となる為の最良の一手でもあった……。まるで其処に深淵の闇が拡がった様な錯覚を周囲に起こしながら、深淵の少女と呼ばれた女性が相手の白いコート切り裂いていく……。彼女はこの生贄ゲームの最初の被験者であり、欠けたナイフで関わる全ての人間を刺して、単身下山した唯一の完全な勝者でもあった。敗因があるとすれば……そんな彼女を甘く見た彼にきっと原因はあるのだろう……。


<Σter>


トレンド:#星女#死神幼女#蜜蜂ジャッジ#D65#白滝苗#生贄ルール#太腿


( ´θ`)キムチ@gekikara

「あの死神幼女、マジ容赦ねぇ…。悪魔可愛いけど#死神幼女」


(^人^)かんちょ@bbussassu

「見え……ない。#太腿」


(=゜ω゜)無念@munemunen

「画面いっぱいに映し出される星神様の( ゜∀゜)o彡おっぱい!おっぱい!」



(´・Д・)スクルト@sukt6537

「あれ?これ、予行演習で決着つくんじゃね?」


(ゝ。∂) lie‪@raila91a ‬※

「あの小学生みたいな女の子……すごいね……予行演習で可能な限りルールの抜け穴と後続の人間に攻略のヒントを提示しようとしてる…。あとドロップキックやばい」


{(-_-)}とーふ@kingosiDEATh

「あのレポーターさん、絶対良い人#白滝苗」


(^ー゜)メンタルスライム@pikiii

「星の少女……いや、星の女だったのか……ちょっとショック」


(OvO)采火:蜂蜜愛好会No.072‪@unebi72 ‬※

「石竹先輩と杉村先輩の痴話喧嘩♡ほっこり(o^^o)大丈夫ですよ、天使先輩!私が!揉んであげます!着瘦せするタイプだったんですね!」

|

(=゜ω゜)無念@munemunen

「( ゜∀゜)o彡゜おっぱい!おっぱい!」

|

※@unebi72さんのツイートを確認する事が出来ません。


(G_G)ソロモンの惡夢@anabel-gatt

「ペンタゴンのDだかCだかに興味は無いんだよ……あるのは推定Gカップの褐色少女が……美少女かどうかという事だ!#十字架の巨乳」


( ^ω^ )ミクニ‪@mikunisk ‬※

「んん?どういう事?隠者君は蜜蜂ちゃんを差し置いて……あの星女と関係を?聞き捨てならない…我らが女神、蜂蜜様を泣かせる者は断じて許さない。あの星女…消さねば…」

このツイートは削除されました。


( ^ω^ )カナ@LoveKANA

「HEY!私達、ニエニエ、イ、ケ、ニエ!でもでもデバーン、無いカモね!SeyYO♩#モモ仮面 あっ、じゅりたん…その辺にしとかないと、ろっくん本当に死んじゃう……予行演習でやられちゃうのは…全部台無しに…」


( ^ω^ )ミクニ‪@mikunisk ‬※

「ふぁっ!?あんな感じで毎回、蜜蜂ちゃんがジャッジしてくれるの?!可愛いすぎるんですけどwwww!!」



こうして、波乱に満ちた私達の最後の生贄ゲームが始まるのです。(正確にはまだ始まっていない)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ