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幼馴染と隠しナイフ:原罪  作者: 氷ロ雪
蜜蜂と接合藻類
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幼馴染の再来日

 確かそれは、4月10日の出来事だったはずだ。”彼女”は突然僕の前に現れた。


それが神様による運命の悪戯か、超常的な力により引き寄せられた奇縁なのかは解らないが彼女が僕のクラス2年A組にその姿を現したのだ。

2年に上がってそう間もない頃、その日、ホームルームの時間に少し遅れて教室に現れた担任。その荒川静夢に僕等は違和感を覚える。いつもは目が魚のように死んでいる30歳の女教師がにやにやしているからだ。


「お前ら、新しい教室には慣れたか?2階から3階に高度が変わった程度で、内装もほぼ変わりない。ここにいるメンツも何一つ変わらない。お前ら、飽きて来ないか?」


その言葉の意図が理解出来ずに互いに顔を見合わす生徒達。


「今日、何か変わるんですか?」と生徒の1人が担任の読めない表情に戸惑い質問する。

「さぁ、何だろな…知りたいか?」ハイ!と素直に答える生徒。


担任がしばらく間を焦らして楽しんでいると、それに耐え兼ねた中央付近に座る学年代表が荒々しく立ち上がる。(クラス委員長では無く、2年全体の代表という事なので、生徒会に於ける権力も相当強い)「田宮たみや 稲穂いなほ」だ。


彼女は廻りくどいのを非常に嫌う。

「それ以上勿体ぶるのは辞めて下さい」

「あら、いいじゃない、先生は楽しみは後にとっておくタイプなのよ、稲穂ちゃん」

「交渉決裂ですね、荒川先生!早くその扉の前でそわそわしている転校生らしき人物を紹介して下さい!彼、もしくは彼女にも迷惑です」

「生き急ぐな若者よ……ってそうか、彼女にも失礼か」

クラスメイト全員が入口の方を見る。角度によっては人影すら見えない。転校生か。少しはこの変わり映えのしない高校生活に刺激を……与えてくれないかな?


「タイムアウトらしいぞ、転校生!早く入ってこーい!」手招きする担任。もぞもぞと人影が動き、木造の扉が開かれる。転校生と呼ばれた彼女がゆっくりと皆の前にその姿を晒す。

生徒全員、暖かい眼で転校生を迎えるはずだったのだが、何か異形の者を目にする、恐怖にも似た戸惑いがクラスメイト全員を支配していた。息を飲み、静まりかえる教室。

その時、僕は2つの理由で思考停止に陥っていた。この教室に入って来た転校生は紛れも無い、昔公園や森で一緒に遊んだ友達で、7年経って成長した姿はどこか規格外であり、日本人離れ……は半分異国の血が混じっているから仕方ないとして、人間という種としての規格を越えた存在の様に思えた。


人間と言うよりは人形と言った方が相応しい容姿は、蜂蜜の様な色合いを放つ黄金の髪に、深い緑色の目……僕の名前と同じ緑青色をしたあの目があの日と変わらずにそこにあった。

雨の日のあの公園で初めて会ったあの時の色と同じで僕は少し安心した。そして色合い以外の骨格というか、パーツ全てが完全に子供のものから少女のそれへと変化していた。


女性と言うにはまだ早く、少女と呼ぶにはあまりにも魅力的な肢体がそこに存在している。遠い昔の記憶、誰かが彼女の事を天使と呼んだ気がした。色素の薄い白い肌は透けて見えそうな位に儚げな憂いを帯び、その桃色をした唇と小さいながら形のいい鼻に、長い睫毛が瞬きをする度に光の瞬きを起こす。


沈黙の中、凝視されるクラスメイトに戸惑い、頬を桃色の染める僕の昔馴染み、名乗らなくても解る。


彼女は僕の幼馴染、ハニー=レヴィアンだ。

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