表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染と隠しナイフ:原罪  作者: 氷ロ雪
亡霊の再来
159/319

巡る不安

日嗣姉さんを追って駆け出した僕は、2人の約束を頭で思い返す。

<僕>


天野樹理さんに背中を押され、僕は日嗣姉さんを追う。自宅の場所を知らないとはいえ、バスで通学していたはずなので学校から一番近いバス停に向かうはずだ。


僕は日嗣姉さんの気持と自分自身の気持を知らなければならない。


それに何か嫌な予感がする。


最近、日嗣姉さんの行動に不可解な点が幾つかあるからだ。夏休みが明けて、満身創痍の僕と日嗣姉さんはある約束を交わした。


①2人の接触を完全に無くす。(公私共に)

②携帯電話使用の禁止。(僕は元々持っていない)

③日嗣姉さんは姉として学校に通う。(事件の後遺症でショック状態にあると装う為)

④僕の聴力が回復の兆しを見せてもそのまま聴力を失ったフリを続ける事。(犯人に安全だと思わせる為)


それは監視されているであろう自分達の行動がまだ見ぬ犯人の目につかない様にする為の策だった。僕と日嗣姉さんの接触を完全に無くす約束を交わした。学校、プライベートと共に接触を共に絶った。

しかしそれだけだとお互いが危機的状況になった場合、情報交換が出来ないので、僕と日嗣姉さんの間に最も信頼できる「留咲アウラ」さんが選ばれた。彼女は「星の教会」が機能していた時も「女教皇」の役割で日嗣姉さんの右腕として動いていた。

直接情報交換が出来無くともアウラさんの活躍で、あまり不自由な事は無かった。日嗣姉さんの得た情報と僕の得た情報は交換されていく中で、どうやら僕らへの関心が犯人には気薄になっているらしかった。


ただ、秋頃に日嗣尊姉さんが霧島大学附属病院に出向き、生贄ゲームの第一被害者である「天野樹理」さんと面会していた事を僕は知らされていなかった。逆に言うと、僕が7年前の事件の事実を父に聞いた事は日嗣姉さんは知らない訳だが。


夏休みに北白家の当主が飼い犬に食い殺された件を受け、専属医付きという条件で「八ッ森市連続少女殺害事件」を起こした北白直哉が施設を出る。その後、軍部に所属し、夏休みに行方不明になっていた「新田にいだ とおる」が、前北白家当主と同様に猟犬に食い殺され、遺体の一部が北白家の所有林で発見された。その前後で新田と杉村が繁華街を歩く姿を目撃されているらしい。


そして、アニメ研究部の映像作品が木田の手で完成させられようとしたタイミングで、木田自身が杉村との接触後、通り魔に襲われ昏睡状態が続いている。同時期に廃部された元軍部員が行方不明になる事案が発生している。


その後、同じアニメ研究部の小室亜記が不登校になり、自暴自棄になった江ノ木が町で男に絡まれるが、剣道部員に助けられる。しばらく後、木田への見舞いを済ませた江ノ木と鳩羽が病院の帰り道、誘拐され、北白の森の中にある山小屋に一週間以上にわたり監禁される。


生贄ゲームの決着とは被験者どちらかの死で幕を降ろすはずだったが、どういう訳か首謀者である北白直哉自身が江ノ木を逃がす形で山小屋を逃亡。

その結果、助けに向かった僕と杉村を納屋小屋に閉じ込め、北白直哉を待ち伏せしていた杉村の父、杉村誠一さんが北白直哉を殺害。誠一おじさんはその後、警察に自首し、裁判待ちでその身柄を留置所に拘束されている。

第五ゲームの被験者2人は危ない状態ではあったが、無事だった。第五ゲームで死亡したのは北白直哉自身と、江ノ木をレイプしようとした三人組の男だった。北白を裏で操っている人間が居るとして、もし、その目的が達成されているとしたら……北白直哉と男3人の殺害。それに7年にもわたり八ツ森を犯罪から未然に防ぎ続けてきた杉村の父親、誠一おじさんを無力化する為?おじさんは単体でテロリスト集団を壊滅に追い込むほどの傭兵で、八ツ森特殊部隊のNephilim(ネフィリム)からも幾度と無く声をかけられ、その自宅は緊急時における補給場(武器庫)として公式に認められていた。

そして僕が杉村誠一さんに北白直哉と僕との繋がりを問い質すと、母を刺し殺した父に面会するようにと小さな青い傘を渡される。そこで僕は、僕にだけ隠されていた真実を聞く事になる。

時を同じくして退行してしまった杉村と自暴自棄になった僕は「紫陽花あじさい公園」で三度目の再会をする。学校に登校すると行方不明になっていた軍部の連中を消したのは杉村蜂蜜だという噂が流れていた。普段なら絶対に僕の教室に姿を現さない日嗣姉さんが僕に近付き、杉村蜂蜜が退行してしまった現在、元軍部である僕が行方不明になる心配は無いと宣言する。その時にはもう自分の事を姉である「日嗣命ひつぎ めい」だとは名乗らなくなっていた。困惑する僕を余所に、日嗣姉さんは囁いた。

 「(最後まで天使を信じ、傍に居てやるのじゃ)」

 日嗣姉さんのしている事は、杉村を追い込む行動だ。しかし、僕には杉村に味方してやれと囁く。日嗣姉さんの心はどこにあるのだろう。一体貴女は何を企んでいるんですか?


 この僕の心の痛みは一体なんなのか、それを確かめる為にも僕は日嗣姉さんに問い質さなければいけない。


 駆けながら暑くなり、上着のブレザーと鞄をその場に投げ出すと再び足に力を入れる。回収は後だ。


 住宅の合間を抜けていくと女の子の泣く声が聞こえ、近寄るとそこには涙を流してアスファルトの地面に座り込む留咲アウラさんが居た。

アウラさんの口から語られたのは三年生の間で流れる日嗣姉さんのよくない噂だった……どういう事だ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ