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幼馴染と隠しナイフ:原罪  作者: 氷ロ雪
蜜蜂と接合藻類
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心理部(仮)

深層心理研究部(仮)は今日も平和なようですね。

 ランカスター先生を大人しく佐藤がソファーに座らせると、隣に腰かけていた若草青磁わかくさせいじにも年齢について問いかけている。「愛に年齢は関係ないよね?あおちゃん?」

「いや、あります。俺は15歳以上の婆を愛せない」

「青ちゃんまでいじめるー!!」

「って、それ犯罪だから!」と鋭く若草に突っ込みを入れる佐藤。


 膨れっ面で若草に文句を垂れ流す先生。


「何々、青ちゃんもやっぱりコッキ―(佐藤深緋のあだ名)みたいにロリロリな感じな方が好きなのね!このロリコン!」


 人の事をロリとか言わないで下さい!と猛烈に抗議する佐藤を尻目にきっぱりとそれを否定する若草。


 「先生、違いますよ。俺はロリコンじゃない。ぺドフィリアです。それに佐藤は見た目は幼くても17歳だ。対象外だ」


「年齢が大事?」


「Yes.穢れを知らない純粋な女の子は僕の嫌いな嘘をつきませんからね」


「私も嘘は吐かないわよー!」と抗議をする先生に僕は呆れつつ、若草の断言に一種の男らしさを感じる。幼児愛者の変態だけど。

 僕は身なりを整えて赤いネクタイを首に通す。そして近くの壁にハンガーで掛けられていたブレザーに袖を通す。その時、妙な違和感を感じた。

 そうだった、胸ポケットには杉村を追跡していた時、回収した小型のプレート型ナイフをそのままにしていたんだった。

 うん、そのままここにあるという事は先生も気付いて無いな。良かった。これ、返さないとだけど……銃刀法違反だよね?


 あれ?僕も見つかったら捕まる?


 改めて胸ポケットにしまわれていたナイフをこっそりと取り出す。


 ナイフ自体に特に興味は無いが、その薄い形状の刃先が光に反射し、怪しく光る。その形状と存在理由に妖しい魅力を感じ、引き込まれそうになってしまう。そのイメージはどこか杉村蜂蜜に似ていた。彼女に引き寄せられてしまう男子生徒も、このナイフの魅力に魅せられてしまっている僕と同じ理屈で魅せられてしまうのだろうか。

 「石竹くん?」とひょっこり半分閉じられたカーテンの隙間から顔を出す佐藤。「わわわ!」と解り易く動揺する僕は、ベッドの上にナイフを落としてしまう。それを慌てて手で隠す。手を切らないか心配だけどそんな事は言ってられない。

「そんなに慌てなくても……今日も内申点の為に部活動を始めるわよ?」

「す、すぐそっちに行くから!」と姿勢を硬直させたまま答える僕。

「何をそんなに……解ってるわよ、先生とは何も無かったって……え?」彼女の表情から血の気が引いていく。


「ん?どうしたんだ?佐藤?」


「そそそ、それって何?」僕の必死に隠している物を指さす佐藤。


「こ、これはその……あれだ、ポケットにずっと入ってたやつで、つまりは……ええと……何だろうね?」佐藤の性格きついだと、誤魔化しにくい。いっそ正直に……話すか?多分佐藤なら味方だ。

 あれ?何故か佐藤が顔を真っ赤にさせてランカスター先生に問いた正している。


 「ホントに何も無かったんですよね!」


 「え、そうよ?石竹きゅんはずっと連れない態度だったけど」


 向こう側にいる先生からのんびりした声が聞こえてくる。


 「石竹くん、何かやましい物を隠してます!」


 佐藤が振り返っている隙に素早くナイフをポケットに隠す。あわあわと僕以上に動揺している佐藤が取り乱している。ひょっこりと先生がこちらに来て顔を出す。先生が胸ポケットを抑えている僕の表情を覗き込む。あ、やばい。相手はプロだ。何かやばいものを持っていると見抜かれる!

 今の先生は、部活動を始めようとしているので仕事モード。縁なし眼鏡をかけている。その眼鏡越しに僕の何かを察した顔になる。再び”にまにま”しながら佐藤の方に顔を向けるランカスター先生。


「避妊は必要だもの。佐藤さん」


 目が点になる佐藤。


「ひ?ひに……否認?」


 嫌ー!不潔!!と叫びながら僕の顔を殴打する佐藤。普通に痛い!そして慌ててソファーの方に避難する佐藤。ウィンクするランカスター先生。


「(安心して、黙っててあげるわ。それ彼女のでしょ?)」と囁く。


 心拍数が異常な数値を叩きだしていた僕の鼓動は、落ち着きを取り戻していく。あれ?でも内緒にするって事は……?先生がソファーのあるスペースに戻りながら呟く。


「石竹きゅんもその気だっんなら言ってくれたらよかったのに。先生の初めてを捧げ……」


「嘘つくな!」


と隣の若草青磁に突っ込まれる。


佐藤は顔を真っ赤にして不純です!と抗議している。


「あら、男子高校生ともなれば何時如何なる時にチャンスに巡り合うか解らないもの。備えは必要よね?」と、佐藤の横に腰かけた僕にわざとらしくウィンクする先生。


「……それより、今日の活動、始めましょう!」


 半分やけになる僕に対して佐藤からは汚れたものを見る様な視線を感じる。冤罪なのに。後できちんと説明しなければ。


「そうね、じゃあ今日も始めましょうか。まだ生徒会には正式に、部活動扱いされてないけど、心理部(仮)活動開始よ!」


 意気込んで声高らかに部活動開始を宣言するランカスター先生。


 いつの間にかその机には湯気の立つティーセットと、お菓子が用意されていた。なんて温さだ、この部活は!


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