ポテトチップス コンソメ
Side成瀬 宮
「なんか最近避けられてる気がする」(←正解)
原因は……と。
「なぁ、今日クレープ半額だってよ」
「えー俺ラーメンがいいー!」
これだろうな。
せめて俺の席じゃなくて奏の傍を中心にするべきなんだろうが、どうしたものか。
彼女は教室にいることが最近ほぼ皆無だ。
10分休憩の時間すらいない。これはひどい。俺が話す機会がなくなっちまった。
彼女はわりかし自由にひとりで行動する。
他の人とたまに話しているけど、ずっと特定の人とは一緒にいないようでそれが余計に捕まえにくい。
最近は一言以上の言葉が帰ってくるようになってきたってのに。
……俺の株が大暴落している気がする。
「なぁ、そう思うだろ」「……だよな!」「じゃあさ」「おー」「今日は」「マジで面白ー!」
あぁ、そうだよな。ウケルよなーなんて相槌を打ちながらも思考する。
……とりあえず探すか。まったくどこ行ったんだか。
最初は静かそうな場所、図書室とか空き教室。
でも見つからない。それが何日か続くとそれも諦めた。
ていうか、最初からアイツの跡つけりゃよかったと思い当たる……。不覚だ。
そっと彼女が見えるくらいの距離で付いていく。
行き先は3階のカウンセラー室だった。まさかの選択だろコレ。
ガラリ、とドアをスライドさせた。
「失礼しまーす」
「あら、何か困りごとかしら?」
と先生が出てきた。めがねをかけた柔らかい雰囲気の人。
「中原さん来てませんか?」
「あぁ、来てるわよ。
中原さん。お友だちが来てるわよー!」
は?と不思議がる声が聞こえた。
「誰ですかー? て、成瀬くんか」
「あーども」
と右手をシュタっと上げた
「何をしに来たの?」
と警戒を含んだ声で問いただされる。まぁ、無理もないかも。自分の行く先に、しかもわざわざ人のいないところに来たってのに、俺がいるのだから。
「えーどこに行ったのかなー?」って気になってさ。
「……ほう」あ、空気の温度が下がった気がする。
「で?」
え、その上聞くの?
「もぉーコラコラ。弱い者いじめはダメよっ! お友だちは大切にしなきゃ」
とチチチとひとさし指を振られ彼女がたしなめられる。
あぁ、彼女の頭に怒りマークが見える。火に油注がないでくださいセンセー。
ふぅ、と息をついて部屋の奥に戻り、本を片手に彼女が戻ってくる。
そして、失礼しましたと優等生然とした微笑を浮かべてさっさと出て行ってしまった。
「はいはい、またねー!」
と先生の軽い調子の言葉にハッとした。
追いかけないと。
スタスタと廊下を彼女が歩いて行く。ぐんぐんと背筋をすっと伸ばして歩く様はいっそ清々しいと感じるが。できれば気をこちらに回して少しの間でもいいから止まって欲しいものだ。
「……っだから! 止まれってば!」
と腕を掴んで引き止める。俺は男だ。足は俺のほうが長い。だから結局追いつくのも当然だ。
「……で、何でお「あ、いたいたみやくーん! もう探しちゃったよ」
と彼女が何か言いかけるも他の女の声で遮られる。
ねぇ、…と上目遣いに話しかけてくるクラスの女子が目の前に出てくるのをどうしたものか、と一瞬躊躇している隙にまた少し顔をしかめてまた教室へと足を向け俺の前から彼女が去ってしまった。
……まただ。
また! 何もいえなかった。
とぐわーっと苛立ちと悔しさがない混ぜになる。
どうして、今捕まえられなかったのか。また探さなければならない。
あーもー! 今度は絶対捕まえる。科学捜査隊を派遣してでも!
障害物に気を散らすことないように。
周りの目はこの際今回に関しては気にしてなんかやらない。
だって俺は彼女と関わりたいのだから。
次の日も俺は彼女を探し続けた。
跡をつけるのは無理だった。警戒されてものすごい勢いで教室から出て行ってしまうからだ。
俺はと言うと障害物、改め俺に話しかけてくるヤツラに苦戦していた。
気にしないでと心に決めたものの多少の時間は取られてしまう。
普段はいいが、今は空気を読んでちょっとの間ほっといてくれないだろうか。
カウンセラー室にもいない。どこにもいない。
何でこんなに見つからないんだ。私立で校舎が広いとはいえ、隠れるの上手すぎるだろ。
奏にも「最近忙しそうだな」と言われてしまった。
ほっとけ!