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おやつの詰め合わせ バラエティパック   作者: ラゼル
高2 2学期 後半戦
28/30

林檎飴

本日2度目の投稿です。読む順番に気をつけてくださいませ。

 

 待ち合わせの神社前の道へと商店街を突っ切って向かう。

 商店街では今こそ商売のチャンスとばかりにカキ氷やら、ポテトやら、タピオカドリンクと何とも今時な飲み物なども店先で簡易の屋台を出して売り出している。

 まだ神社内に入っていないのにもう既にここから祭りの態である。


 タタッと普段は自転車であるもののこう人通りが多い今日、足を踏み鳴らす梓は歩きである。

 そしてその足元は歩きやすいウェッジソール。本当はスニーカーがよかったもののそれは色気が無いと母親に突っ込まれ今に至る。爪が素では不味かろうとオレンジのネイルがキラキラ輝いている。


 きょろきょろと辺りを見渡す。すると同じクラスであるにも関わらず話したことのほとんどない男の子が梓に声をかける。

「あ、中原さんこっちこっちー」

 名前はわからないが顔はわかる。多分宮と話すことも多い人だったし間違いはなかろうと梓はにこりと安心したような笑みを彼に向け。そちらへ向かう。カラリと頭につけた簪が音を立てて揺れた。


「や、珍しいね。中原さんがこういうとこ来るの」

 と邪気のない笑みで男はいう。その後ろには他のクラスを含めた同学年の女の子が四人。そして先輩と見える背の高い男の人が四人。宮や上野もあとから来ることを考えれば男の人の方が多いようだ。

「うん、ホント。お邪魔じゃないといいんだけど」

「何行ってんの。女の子が来るだけで場が華やかになるもんだ」

 いい奴だ。男子A、と彼の名前を覚えていない梓は酷いことを考えた。

「あ、中原さん来たんだ」

「うん。今日はよろしく」

「かしこまらなくったって大丈夫だよ。屋台巡りするだけだし」

「そうなんだ。そういえば皆は何クラブなの?」

「あれ、聞いてない? ハンドボール部だよ」

「あぁ、よく雨の日は廊下走ってるの」

「そうそう」

 ハンドボール部はウチの学校では特にハードなクラブで雨の日でも学校の廊下でジョギングをする。放課後はほとんど人が居ないとはいえ学校内でというのはいかがなものだろう。

 けれど運動部らしく、話しかけてくる女の子達は爽やかだった。焼けた肌と引き締まった足。それに何だかハードな部に似合わずといったら失礼だが可愛らしい人が多い。どこからその体力が出てくるのだろうと内心梓は首を傾げた。


「すいません。待たせちゃいました?」

 とこちらに向かってくるのは宮と上野くん。まだ待ち合わせ時間ではないのでセーフだが先輩のほうが早いので頭を下げて謝っていた。


「よ、おはよ。じゃなくてこんばんわ、かね。あーずさっ」

 とこちらにすぐ向かってくる宮に梓はホッと顔を綻ばせる。

「あ、うん。こんばんわ」

「……妙に大人しいな。緊張してんの?」

「してるともさ。正直。2人で抜け出した方が気は楽かも」

 うう…と無意識に宮を上目遣いで見上げた。

「ほほう、梓ちゃんってば大胆。かーわいっ」

 と借りてきた猫のような梓を見て宮はにまにま笑っている。足元を見れば宮のサンダルが見えた。

「へー中原さん。成瀬と2人っきりになりたいのか。それはまた熱いねぇ。よし俺が皆に言ってやろうか。……なぁ、この2人さー」

 と男子Aが大声で何か言おうとする。

「ぎゃー!! 違う。違うからやーめーてーーーー!!!」

 とひしっと服を掴みとめた。それこそ猫が毛を逆立てるように。

「あぁ、こうやって慌てるさまも中々」と宮は梓を助けることもなかった。完全におちょくられていた。


「ははっ、冗談冗談」

「冗談じゃないっ。私がかなり失礼みたいじゃないか。さすがに気まずいから2人で抜けるとか……ないし。駄目だし」

「うん、そうだね。たまには俺ら以外とも交流したほうがいいしな」

「人を駄目人間みたいにいわないでー」

「でも、事実でしょ」

「そうなの?」

「そうなの。頑張れ」

「……わかった。頑張ってみよう」

 案外素直だ、と宮が梓を簡単に言いくるめ、もしかして騙されやすいのかもと心配が頭をよぎった。 


 ぶふぅ、と男子Aが吹き出す音がする。自分達が笑われたのだと思った梓は彼に訊ねる。

「な、何かなー?」

「梓が遠慮してる。めっずらし」

 いつもは何見てんだコラ、ぐらい言うのにーとけらけら笑う。それに対して

「やかましいっ」

 そこまで言わないし、とポカリとかるく胸を右手でこづいた。

「あははっ。もう止めて。面白すぎる」

 男子Aは笑い上戸らしい。しかし失礼な。

「私は面白くないし」

「いやいや、充分面白いし」

 むうぅ…と口をへの字にする梓に微笑ましそうに見る宮。傍から見れば男の子2人にちやほやされているようにも見えるが本人はそんなことに気が付いてはいなかった。


 その後はなぜか思春期だからなのか、微妙に男女チームに分かれながら神社内を歩いた。

「あ、金魚すくい」「ポテト山盛りにしてよ、おっちゃん」「先輩、楽しいですね」「あ、フランクフルト」

 とはいえ皆彼氏が欲しいさかりなのか、妙に先輩男子に対してアピールをしつつ祭りを楽しんでいた。なので折をみて交流は絶えず行われていた。

 「これ、美味しいですよ」「マジで?」「たまにはこういうのもいいですよね」「だな」「ポテト一口ちょーだい」「金魚とれなかった」「よし貸してみ」「ふふっ」

 なるほど。先輩達も可愛い後輩女子に構われて嬉しいようだ。きゃっきゃうふふ、と花の舞う女子力の高さに梓は慄いた。他の人と仲良くするどころじゃないな、とため息をついた。まあアドレス交換は出来たし一応少しは前進したというべきか。他クラスの知り合いは増えたのだし。


「宮、リンゴ飴買いにいってくる」

「あ、俺もいく」

「俺も俺も」

 と同学年男子は梓についてくる。確かに彼女達のお目当ては先輩のようだし、手持ち無沙汰なのだろう。彼らから少し離れた場所で戦利品を三人でぱくついた。


「それにしても、皆すごいね」

「そうか、あれくらい積極的でないと彼氏なんてできないだろう」

「なるほど、勉強になる。漫画のようにトントン拍子にはいかないもんだな。皆あんなに可愛いのに」

「でも、宮とかもそうだけど同学年男子はターゲットじゃないの?」

「先輩に憧れるお年頃なんだろ」

「そうそう、俺らはお呼びでないみたいよ」

「クラス内ではあんた等もててるのにね」

「初耳っ。俺は? 俺は?」

 と食いつきがよいのが男子A。やはり女の子の評判は気になるようだ。

「誰とは言わないけど、評判はいいね。わりと告白すれば受けてくれる人多いんじゃないか?」

「まーじーで!!」

 と盛り上がる男子A。素直でよろしい。でも俺バレンタイン貰ったことないーと叫ぶ。そうなのか。


 ふと、隣を見ると宮。もててるというのに彼のように雄叫びを上げることもない。少しは喜べばいいのに。カリっとリンゴ飴を口に含んだ。甘い。

「まあ、女子も恥ずかしいし。バレンタインチョコ渡すの」

「そうなん?」

「本命ならともかく、ちょっと好意があるかな、くらいだったら誤解されても困るだろ。それに自分が貰ったことを本人から吹聴されたら面倒だ」

「えー、自慢したくならん? だってチョコだぜ!」

「……ならねぇよ」

「それは宮が毎年貰うからだっつの。俺は珍しいのに」

「お返しが大変なんだよ。正直」

「「うわーっ贅沢」」

「ダブルで突っ込むなよ。小遣い減るんだよ。だからラッピングも100均で買ってきたりする。それに食うの弟だし」

 と宮のセリフに妙なマメさを感じ梓は感心した。


「じゃあ、来年は私があげようか? お返しいらないし」

 と梓は思い付きを口に出した。すると、

「マジで!? くれくれ!」

「……俺もくれるよな?」

 意外な食いつきに梓は後ずさった。冗談のつもりだったが、言ってしまったのだからと彼らと約束を交わした梓である。


 パッとお祭りの屋台の明かりが灯る。ほんの少し暗くなった空を見て、キュッと宮の服の裾を無意識に梓はつまんだ。祭りが終わるのは淋しい、そろそろ私達は帰る時間だ。


「梓?」

「あっ、や。ゴメン」

 声を掛けられ梓は我に帰り、手を離した。普段ぎゅーぎゅー抱きついてくる宮がこの場では他の人がいることに遠慮してぜんぜん触ってこないせいだろうか、妙に淋しい。

 確かに梓は他の人が居る所では容赦なく避けに避けまくっているのだから彼の反応は当たり前と言えたのだが、いかんせん日常からほんの少し離れた今は心細い。ぎゅっと宮に抱き付かれると存在がしっかりと確定するような気がするのだ。とはいえそれは子供っぽすぎる言動だろう、と梓はリンゴ飴を更に慰めに口をつける。


「美味しい……」

「それはよかったな」

 と宮は笑う。どうしてだろう、妙に切ない気分になる。お祭りの熱い空気に呑まれたのだろうか。


「お、花火だ」

 男子Aが空を指差した。

「けどこれ、コンビニで売ってる打ち上げだねぇ。誰だろ」

「さぁ、まあキレイだからいいんじゃね」

「「ですな」」


 空に夏の花が色をつける。艶やかに勢いよく。

 いつもと違うたくさんのことに振り回されながらも少女は成長する。

 低くなった声に、リンゴ飴、ふわふわした女の子達。そしてチョコの約束。


 夏が、終わる。

 それは優しく、いつのまにかそっと。


 過ぎたときにはもう、戻らないのだとは今この時はわかるまい。


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