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おやつの詰め合わせ バラエティパック   作者: ラゼル
高2 2学期 後半戦
27/30

ベイクド・ドーナツ

 成瀬宮の朝は早い。



 ……というわけもなく、遅い。

 よく寝坊をする。最初は母が起こしてくれたものの最近では放って置かれている。

 諦められている。


 学校に登校。

 ただし、遅刻で。


 ちなみにこの学校では1月に10回遅刻するとお呼び出し。

 梓も遅刻は多かったりするのだが、ギリギリ9回までで止めるので案外呼び出しは少なかったりする。ウチの学校がクリスチャンとかではなくてよかっただろう。

 朝の礼拝とかもないのもなおよし、らしい。


 そして最近の彼のお気に入りは

 中原梓という御仁である。

 長い黒髪に、すらりとした身体。背は女子にしてはそれなりに高い。

 成長期の遅い男子と比べると、案外その背は彼らよりも高いこともままある。


 化粧っ気のない大人しそうな見た目に反し、意外とトラブルメーカーである。

 成績はそれなりに優秀で理数系と国語が強い。

 歴史は大の苦手で、走るのも遅い。

 ただしその蹴りは重い。

 そしてその言葉も容赦がない。


 そしてその彼女への執着のほど、といえば。

 ストーカーのようにというよりも、それよりも更に堂々と追い掛け回して確保したほどである。

 

「遅刻ー。お呼び出し決定」

 篠崎桜がそういった。

「え、もう10回目なの?」

 と梓が驚く。

「……反省してないのに、反省の態度を見せないと駄目なんだよな」

「あ、反省しないんだ」

「私も反省してるフリはできないから9回で留め置いてるんだよ」

「梓ー。俺、すごく憂鬱」

 彼はあ”-と嘆息する。


 呼び出されると、教師も”一応”ルールだからとお説教をする。

 ある程度理解のある教師なら気をつけてね、という一言で終わったりするのだが。

 無駄に熱血、かつ自分を生徒想いだと思い込んでいる教師の説教は長い。

 しかもその内容といえば、社会人になったら困る、とかだ。

 それはもっともなのだが、それだけの理由でだらしないと貶められるだのなんだのと長々と説教してもそれを理解してもそれに従うかなんて関係ないのである。

 それを聞いていても根拠も薄い。ただ正しいから言っているというだけの態で、

 あぁ、この人はルールならば何でも従う人なんだなと頭はどんどんその説教の長さに比例して冷めていくだけなのに。


 話というのは一方的なものではない。

 自分の理論をただ展開していくだけでは駄目。

 相手の土俵や相手のロジックに触れて話さないと彼等は話し合いのテーブルにも立たない。

 だって先生のお説教というだけでもとんずらしたい物件に違いないのだろうから。


 というか話が長ければ長いほど子供はすねるぞ。中身もどうでもよければなおさら。

 自分を思っての言葉かどうかなんて、案外聞いていればわかる。

 ただし自分を思っていてもそれが見当違いならスルーされることも覚えておこう。


 もう少し頭のある人なら、こういうクセのある人物の使い方もわかろうものなのに。

 たんなるいい子ちゃんではない彼、とか。

 

「そういえば、結構話題になったね。放送」

「そうなん? あ、でもリクエスト増えたよ。いたずら書きも増えたけど」

「俺も取材に協力とかちょっと楽しかったな」

「そういやさ、今日だから祭り」

「ん?」

 お祭りの日取りなんて普段気にしない梓は唐突な上野の言葉に無表情で返す。

「あ、神社の前で集合な」

「はい?」

「あ、お祭り行くんだ。私も友達と行くから会うかもしんないね。」


「……試練か」

「んな、大げさな」


 学校が終われば、友だちと遊びに行くことが多い宮。

 メールが来れば近くのショッピングモールに集まり、たむろして話すことも多い。

 ダンスの練習で集まるのもたいてい夜遅く。これが主な遅刻の原因。

 単に朝に弱いというのもあるが、深夜にランニングしだすこともあるので睡眠を必要とするのも無理はない。


 それとは逆に梓はお風呂に入った後は主にごろごろするだけである。

 勉強は学校のみで家ではしない主義である。

 早いときは9時に寝て5時に起きる時すらある。

 これは気分次第なので、本が面白かったということでもあれば2時に寝ることもしばしば。


 まあこういう次第であるわけなので梓はもちろん学校以外で人と話すことは少ない。

 目的地にはたいてい一人でいくからである。

 国内・国外どっちもである。

 人と一緒に行動することは少ないので、祭りもちょろっと行ってリンゴ飴を買って終了だ。


「試練だ…」

 こう人と出かけることが少ないといわゆる普通の格好とはどんなものだ、とまで細かい所まで悩むのである。経験知のなさが浮き彫りになる瞬間である。

 好きな服を着ていって浮いたらマズイかな、と思うわけである。

 可愛い格好をするべきか? いや、動きにくいと嫌だしな。


 案外彼女の服は色が派手というべきか。

 きれいな色の服がすきなのである。意匠はシンプルなものを好むが色は明度の高いものを好む。

 なので、案外インドのサリーとか、韓国のチマチョゴリとかも一度袖を通してみたいものだと思う。むしろそんな服を着ていっても楽しいかもしれないと思うほどだ。

 髪を金にしようが青にしようが似合っていればいい。まあ似合わないので黒のままであるが。


 彼女にそういう意味での恥はない。似合っていればいいんじゃない? というのが持論である。

 全身真っ黒な服、なんて嫌いなのである。


 けれどたとえ似合っていても、並ぶ人とちぐはぐなのはまずかろうとは思うわけである。

 旅行の時は少し抑えてはいたが、自分の好きな服を着た。

 行き先も旅行なので少しはしゃいでいてもOKだろう、と。

 しかし今回は学校の人たちである。地元である。


「ふつーの可愛さか。雑誌に載っているのは普通ではないしな」

 普通の女子高生の服ってどの程度のもんだろうと彼女は鏡の前で右往左往したのであった。

 自分の服装に可愛げはない。女性らしいラインさえ残っていれば何でもアリである。

 桜もおしゃれすぎて参考にならない。けれどあれはあれで女子高生らしかった、か。

 

「なるほど、そういうテイストでいくか」

 支度は10分が日常の彼女にしてはここまで悩むのは大進歩である。


「よし、完成だ。うん行く前に疲れるなこれ」

 ため息をついてケータイを取り上げ、待ち合わせ場所と時間を確認した。

 現地集合だ。とはいえ呼んでくれた宮や上野くんに恥を欠かせないか心配だ、と無駄に想像力を羽ばたかせて梓は自宅の扉をパタリと閉めて家を後にした。

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