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おやつの詰め合わせ バラエティパック   作者: ラゼル
高2 2学期 後半戦
25/30

きんかんのど飴


 ちょっとした小旅行が終わり、もうすぐ文化祭というこの時期。部活に入っている人たちは少しずつ準備を始めていた。とはいえ帰宅部の梓には関係のないことだ。

 昨日の様子とは違って、いつも通りの授業。

 当たり前なはずなのに流れている空気に少しの違和感。


 小旅行が終わり帰ったら妙に眼がさえて眠れなくて、寝坊をした。

 目覚ましの音が聞こえなくて、時計を見たときゾッと寒気がした。まだ少し暑いのに。

 だからと言って、休んでも母が煩いので重役出勤で学校へ向かった。


 そして小旅行後わかりやすい変化もあったりして。


「ね、今日一緒にご飯食べよ? ウチのトコ来てよ」

「えぇー。お邪魔になるし」

「えー、まぁ。夏海ちゃんとかはまぁ……あんまり梓のこと好きじゃないね」

「桜も案外はっきり言うね」

 余計に行けないよ。というか空気が重くなるだろが。

「じゃあ一緒にクラス移動しようよ。ね?」

「何で一緒に動くの?」

「仲良くなったからに決まってるじゃない」

 ね、私たち仲良しといいたそうな笑顔が向けられる。

「えーと。あーと、うん、そうね……」

 そうはっきり言われるとどうにも恥ずかしいな。オイ。

 仲良くなれば一緒に居ることを望むのはわかるが桜の周りには私があんまり仲良くない人もいるわけで。でも桜の好意も切り捨てるにはどうにも悩む。どうすればいいのだ。

 宮はふらっと一人で来るから悩んだことなかった。もしくは上野くんぐらいなもんで。女の子って対応が難しいよう。ある一人と仲良くしたければ、その周りとも上手くやらないとダメらしい。

 桜とはできればほどほどにいい関係を保ちたいものだけど。私に出来るのだろうか。


***


「困ってる、困ってる」

「……だなぁ」

 旅行中みたいにたった4人だけじゃなくて、クラス内にはもちろん他の同級生もいるわけで。

 そのせいか今まで仲良くなかった2人がむつまじく話す様子は他の人からすれば少し奇異に映る。


 目の前には懐かれた桜に困った顔を見せる梓。

 どう対応していいものか躊躇い、迷っているようである。


「まぁ、俺と仲良くなってもアイツと周りの関係性は変わんないし、篠崎がひっぱっていけば変わらざるを得ないだろ」

 だから篠崎と梓が仲良くなったのは、いい変化といえるかどうかはわからないものの、何かしら梓に変化をもたらすだろう。

 篠崎とかかわり何かしらの情を持ってしまったために、邪険にするのにためらいが生じ、今までの容赦のない梓の面はなりを潜めてしまっている。敵に対しては無情だが、好意を向けられると弱い。

 頼られれば、それなりに何とかしようとする性質は人付き合いが少ない彼女を見れば意外と思うかもしれないが案外梓はお人よしだ。


「おー……。助けないのか?」

 奏がにこにこしながら聞く。

「まー。篠崎の周りと仲良くやれるかはわからんが。苛められても泣くことはないだろう」

「へー。そうなんだ。っていうかそこまでいっても放っておくのかお前」

「俺が入ってもこじれるだけだ」

「まぁ、なぁ」


***


 とりあえず、一緒にご飯は遠慮させていただいて、移動のときに少し話すということは偶にするようになって、桜の周りの人ともある程度話すようになった。とはいえ会話の内容が宮と話していたみたいなものと違って誰それがかっこいいとか、こうされたらときめくよね、とかの恋愛系の話題が出てくることもあって、そういう経験が少ないというか無関心に過ごしてきた私にはどう対応していいかわからなくて、とりあえずふんわりした意見を返しはっきりした返答を避けた。


 とはいえ宮と一緒に居ることはやはり気になるようで妙に探られた。

 会話もなんだかふわふわしていて、彼女達が話すたびに華やかなオーラすら見える気がした。

 うおぉ…キラキラしてる。


 そんでもって内容がないというか薄い。でも聞いたことのない情報ばかりだった。つまりは私には馴染みがないものばかり。そしてなんというかオチのない会話は盛り上がることもなく、うまく場を回していくということを気にしながら進むようで、うっかり私が宮と話すように話せば場の流れがストップしてしまって、どうにも居心地が悪かった。


 動きかたがいつもと違う!

 

 これが慣れが必要ということなのか、いつ慣れられるんだろうと先が見えないことにげんなりした。


 桜と2人で話す分にはなんとかなったっぽいんだけどなぁ。


「疲れた」

「はは、頑張れ」

「でも不思議な感覚だったよ。ふわふわしてるから彼女達。話し方がなんか移る」

 声のキーが高くなって、話し方がゆっくりになる。宮と話すときは弾丸トークかつ声がでかいが、女子同士では声を少し抑えつつ相手に威圧感を与えないように話すのが普通のようだ。

 桜の周りの女子を見る限りは。多分……。


「あぁ、そうだろうな。お前が女子に馴染めないのは、お前の空気が彼女らと違うからで、移ってしまえば排除されないだろ」

「排除されてたわけね」

「というか今までは、自分と違うもの枠に入ってたんだろ」

 私は珍獣か。

「へぇぇ………」

 男の子達と話すのは特に苦労しなかった。あっというまに決断してしまう私には清々しさすら覚えるようで案外「おまえのそういうとこ嫌いじゃねぇよ?」とかいってくれたりする人も居たりした。

 だから男の子と仲良くなることはわりと多くて、けれど女である自分は本当の仲間になることはできなくて、彼らの話に全部入ることができるわけではなくて、淋しい思いをする。


 私はどちらにも入れなかった。


 じゃあ私は女子の中で上手くやれるようになるべきなのかな。

 そしたら少しは仲間はずれの感覚はもう感じなくなるのかな。

 

 それは一人で過ごすことよりもずっといいもの、なのだろうか。

 わからない、し。分かる時がくるのだろうか。


 楽で、きままな一人で過ごすことを物足りないと思うときはくるのだろうか。

 一人では生きられないと思うくらいに。


「宮、楽しそうだね」

「あぁ、梓がさくさく迷わず進んでいく様子よりもずっと面白いな」

「意地が悪いー」

「そらどうも」

「褒めてないわ!」


 でも案外選択肢が増えるだけなのかもしれないな。

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