うまい棒 納豆味。
「というわけでうどん作り体験会場です」
「……何がというわけ、だ」
「お祖母ちゃんのツテで今日にねじ込みました。宮、これに着換えてね。さ、桜行こう」
と梓は白いショップバックに包んだものを手渡す。
「あぁ、それで」
と桜は納得の声をあげ、梓はそうそう、と相槌をうち女子用の更衣室に向かいここを後にした。
渡された袋の中には宮用、上野くん用と書かれており、奏の分を隣にいる男に手渡した。
「お、俺の分もあるのか」
「みたいだな」
……色々突っ込みたいところだが、とりあえず着換えますか。
「あ、宮」
「うわー。梓 鬼だ」
梓と篠崎が調理場に先に居た。
「梓……お帰りなさい。ご飯にする? お風呂? それとも…俺?」
「「おおー」」
梓に手渡された乙女ティックエプロンに負けず、宮は定番のセリフを言い切る。
ていうか、私旦那役か?
―スパン。
え……。
女子チームは歓声を上げたものの、宮の傍らの男は無表情で腹パンを繰り出した。
「え、奏くん?」
桜はおそるおそる上野に声をかける。上野は吐き捨てるように言った。
「キモイ」
「へー。上野くんも怒ることあるんだ……」
と暢気に梓が言う。
「いや、そこじゃないでしょ。痛ぇ……」
「桜が選んだのはわりと普通だね」
「いや、だって奏くんが着るって言ってたし」
「……篠崎、アリガトウ」
本当に宮みたいのじゃなくて…と後に本心が続く。
「あ、ううん。大丈夫」
梓はいい雰囲気の2人を横目に宮に近づき、彼の頭をそっと撫でた。
「大丈夫、宮。可愛かったよ」
「うん、あんまり嬉しくねぇな」
「でも上野君は気に入らなかったみたいだけど」
「おー。俺も奏があんなことしたらシバいてたかもしんない」
「男の子的には許せないモノってこと?」
「モノってこと」
とへらりと宮は肩を大げさに竦める。
「……面白かったのに。ねぇ」
きゅっと宮に抱きつき、満面の笑みを浮かべる。
「お、おう?」
なぜ、ここでとろけるような笑みを見せるのかとたじろぎながらも宮も梓に腕を回した。うおお…梓から始めて抱きつかれた、と内心宮は慄く。そして彼女のツボがいったいぜんたいどこにあったのかと疑問が浮かべた。
「(バ)可愛い…」
「梓の趣味って変」
***
その後はうどん体験。
洗面器のような入れ物で小麦粉に塩水を加え、こねる。こねるそしてこねる。
水はきれいなものじゃないとまずくなるらしい。ある程度固まると、それを手でぐいぐい押しつぶし、また丸めるという工程を繰り返す。意外とチカラを使うのですごく疲れる。コシをだす工程。
「家でやるときは足でやるほうが簡単だと思うよ」
足なら楽そうである。
「うー。手首が痛い」
梓がぼやく。
「あぁ、それは力の入れ方が上手くいっていないんだ。まぁやってればそのうちコツもつかめるよ」
「………。」
梓はこれ、冷凍うどんのが手軽でいいなと無表情でそれに応えた。
「はい、では綿棒で生地を延ばし5mmの幅に包丁で切ってくださいね」
5mmってこれくらいか、と指で測ろうとする上野に、だいたいこんなもんかな、とサクサクッと適当に切る梓が対照的である。
その後15分茹でる。
だしは名人が作ってくれたもので、葱も添えてある。シンプルだからこそ麺の美味しさが味を大きく左右するシロモノである。
「うまー。」
「確かに旨いな」
「美味しい」
「あ、ホント。…意外だ」
がつがつと出来立てのうどんを皆で試食する。素人が作ったのに、コシのある美味しいうどんが出来上がり、彼らは各々舌鼓を打つ。うどんもできたては、より美味しいらしい。
残った分はお土産に、名人の奥さんが包んでくれた。
「「「「ありがとうございました」」」」
と彼らはうどんを手にうどん工房を後にした。
「……って。オイオイ」
「何? 宮」
「いや、面白かったけどな」
「そう、よかったじゃん」
「いや、うん、まぁそうなんだけど…なんつーか(何か引っかかるというか)」
サクサク梓の意見だけによって進む観光の様子に宮は少し眉を顰める。けれど、何といっていいものかと悩み、口を噤んだ。
――梓はそれを見てそ知らぬように笑った。




