カメレオンキャンディ
「夕食は梓たちが作ったから。俺らが朝メシつくる」
というわけで。朝はお役御免なようである。
時間が空いたので、彼らが朝食製作中に私は桜を連れ添って100円均一のお店に直行。
「じゃ、桜。上野くんの分お願い。私は宮の選ぶから」
「あ、うん。わかった。でもなぜ?」
それはあとのお楽しみ。
「えーっ! 教えてってばー」
「イヤ」
「もうっ」
***
「……えと。これは目玉焼き?」
「おう」
「何で1個だけ、目玉焼きじゃないの? むしろ焦げた卵」
スクランブルでもなく、卵焼きでもなく、目玉焼きでもない。黄身と白身が中途半端に混ざった何かの塊。
「スクランブルのつもりだったんだよ」
「………牛乳入れた?」
「ううん」
つまりふんわりスクランブルエッグをつくりたかったものの、いつの間にか熱を持ったフライパンの上でかき混ぜているうちに水分の少なそうな塊ができあがったと。
「これはスクランブルじゃないな」
「……梓。率直すぎるよ?」
これが男の料理というものか。
「ま、これはこれで卵焼きだろ」
宮は開き直った。まぁ、卵を焼いてできたものには違いない。
ベーコンに卵、そしてトーストに牛乳もしくはジュース。充分に朝ごはん。
……うん、美味しい。
「美味しいね」
とにこにこする桜は黄色と白のチェックのワンピースに髪をシュシュで結わえた華やかな装い。彼女の名前と同じ色のアクセサリーはブラウンのきれいな髪によく映えていた。
「あ、ヨーグルトもあるよ」
私はというと、昨日のラフなロールアップジーンズにTシャツというラフなものではなく、昨日買ったレトロな花柄ワンピに、髪はパールのピンで右に髪を寄せている。スカートとか、花柄とか、女の子らしい服を着るのが久々すぎて微妙に恥ずかしい。
でもこれはこれで涼しくていい。
「あ、俺ブルーベリー」
宮はいつものカジュアルな服と違って、スキニーパンツに胸元が少し開いたシャツにストライプのジャケット。ジャケットにはピンズのバッチが幾つか胸元を飾る。
茶目っ気を含んだスタイルは宮によくお似合いだ。
「じゃ。オレンジくれる?」
上野くんはいつも通り無駄に爽やかで、薄い青のシャツにベスト。後ろはベルトが着いており、身体のラインがきれいにでている。
しかし、この人短パンとか異様に似合わなそうだ。
朝食の光景がすごく華やかで、なんだか少し落ち着かない。
いつもはパジャマで髪もひっ詰めているというのにね……なんだこの格差。
今日はどうすんの? とトーストをかじりながら尋ねられたので、お土産を買って、香川っぽいことをしようと思っていると返す。ジャム苺にしよう。
「香川っぽい?」
あぐあぐとヨーグルトを口にする宮。
「うん」
「……お前って言葉が足りないと思う。もう少し詳しく」
「そうね」
今回はわざとだが。だって相談すると時間かかるかなって。
「そういうトコ。もう少しなんとかしろ」
「うーん……」
と苦笑い。効率重視する癖はある。それで人を置いていくことはざらだ。
それは一般的にダメなんだろうな、と思うも直す気は起こらなかった。




