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チロルチョコ

 現在夜ご飯を女子チームで製作中。男子チームの片割れはお風呂中。メニューはカツ丼。カツは買ってきて、卵で玉ねぎと一緒に包むだけ。簡単。醤油やみりんや砂糖も台所の必需品なので買い足すものも少なくていいね。

 鍋が食べたい気分だったのだが、この暑い中食えるか! と皆に却下された。

 

 そしてズルズルと腰に重りがまとわり付いている。……が無視である。


「あ、篠崎さん。お味噌汁できた?」

「桜でいいって言ったーぁ」

「はい…? あぁ、桜さん」

「桜」

「……おけ。桜」


「俺のときはあっさり呼び捨てにしたのになー」

 ……女の子を呼び捨てってなんか、慣れない。

 

「そしていいかげん離れないか、宮」

「えー。篠崎と仲良くなったみたいだし、いいじゃん。別にー。奏もいないし」

「ホント仲いいわね。腹立つから私の前でいちゃつくな」

 右に左に台所を移動しても腰には宮がまとわり付いたままである。何がしたい。


「……な?」

 と、ほら大丈夫とでもいうような顔をする。どこがだ。

「ていうか何で引き剥がさないの。セクハラでしょ。コレ」

 ………うーん。どうしよっか。

「……っぐ。みぞおち!?」

 いいかげん恥ずかしいから、離れろバカ。


 桜はその瞬間吹き出した。……案外宮のこと嫌い?



「お風呂上がった。宮、次だろ?

 ……何でうずくまってんの」

 三階で風呂を済ませて植野が二階の食卓に入ってくる。

「さぁ? もうすぐご飯できるよー」

 宮のことはもちろんスルーである。

「お、味噌汁大根? 美味そうだな」

「あ、うん。味見する?」

 ……おや、中々いい雰囲気ではないだろうか。2人とも。新婚のようである。


「……風呂入ってきます」

 と宮は腹を押さえながら少し落ち込み気味に勝手口に向かう。そこまで落ち込むことだろうか。

「いってらっしゃい」


 ご飯が炊けるまでは時間が少しかかるので、その間に私たちもお風呂。先に桜に入ってもらうつもりだったのだが、広いからと一緒にと引っ張り込まれる。この子はあんがいパーソナルスペースにぐいぐい入ってくる。

 だけど女子の風呂はそれなりに時間がかかるので一緒に入ってよかったかも。


 風呂から上がると2人で居間のソファーでテレビを見ていた。祖母の家のソファーはL字の7人がけで、正直ごろごろするにはうってつけだ。


 ゴーン、ゴーンと壁掛けの古い振り子時計が7時を知らせ、私たちはご飯に手を付ける。

 ふわふわの卵にさくさくのカツと一緒にご飯を口に入れる。あぁ味噌汁も美味しい。

 ご飯を食べている時は特に話が和やかになる。そのおかげか最初はぎこちなかった桜も、何もなかったような様子の上野君に安心したのか少しずつ雰囲気がほどけて柔らかくなる。

 何も話さなくても案外口に物を入れておけば空気は悪くならなくていいきっかけだ。

 

「梓。美味い」

「ありがと。卵で包んだだけだけど」

 しかしこれを料理と言えるのか。卵がけご飯は料理かな?

「そして無表情で食うなよ。怖い」

 ……。

「そんなに、にこにこされても怖い」

 どっちだ。気力を振り絞ったのに。


「そういや、卓球すんの?」

「…………あぁ。すっかり忘れてた。ご飯食べたらする?」

「せっかく用意したんだし。しよーや。梓強い?」

 ――少なくとも、1勝はしてやる。

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