さくらんぼ餅(爪楊枝付)
「………あー。なんつーかこのままだらけてると一日が終わりそうなんだが、梓」
と発言するは、宮。確かにこのままお昼寝でいいんじゃね? という空気で終わってしまいそうである。私はこちらによく来るからこれはこれでいいかもしれないが後の三人は私たち何しに遠出したの……となってしまいそうだな。
「んー。この辺散策しようかな。他に希望あれば検討するけど」
香川で行きたい場所、とか。私はさっぱり思いつかないけど。
というか母の田舎なので観光地というより、のんびりしに来る場所。なのであまり遊ぶ目的の場所は知らない。そもそも目玉がない。
鬼が島はフェリー乗ったりしないといけないみたいだし。栗林公園は徒歩5分だし行きたいときにいつでもいけちゃうよね。個人的に高松周辺が一番楽しい。金比羅さんも1時間程度でいけるし、見ごたえはあるらしいが延々と階段を上るタイプの神社だ。1000段以上だったっけ?
「でも正直香川はうどんしか知らないなー、俺」
と言うのは上野くん。確かに私も調べてみるまで鬼が島が行ける範囲にあるなんて知らなかったです。でもこれ行っちゃうと今日一日全部潰れちゃうんだよね。個人的には一度は行って見たい気もするけど面白くなさそうだから、行くなら一人かな。いや、一人で行ったらもしもの虚しさ倍増か……。
「んー。鬼が島行きたい? 今日半日丸まる潰れる上に楽しいとは保障しかねます。階段に登りたいなら金比羅さんにもいけるぜよ」
「……金比羅山は行きたい気がするけど、鬼が島は写真見る限りなんだか微妙っぽいね」
金比羅山行きたいのか篠崎さん。階段その靴で上るのは無理だと思う。ていうかこの炎天下に階段を延々と上るのは苦行でしかない。つーかむしろ修行。
「となるとやっぱり梓任せにするしかなくね? 楽しいとこある?」
「まぁ普通に楽しいところはあるよ。というか雰囲気を楽しんでほしいな。空気がね、ゆったり流れてていいよ」
と畳の上をごろごろ転がる。個人的にはウチの二階から覗く商店街の喧騒が好きです。
と結局は私のお薦めの場所を回ることを了承されたので、商店街周辺をまわることにしてお祖母ちゃんの店を出た。手には買出しのメモも持って。
「おおー。本当に広いなー。横幅四人で手つないでもちょっと届かないくらいじゃねー?」
「あ、もう一人欲しいところだね」
確かにあと一人でいけそう……か? 意外ともうちょっといるんじゃないだろうか、と両手をめいいっぱい伸ばし右も左も誰かの手が私の手を握る。というかな……
「通行人の邪魔になるぞ」
「……確かに。撤収ーっ」
こういう突飛のない行動をしても周りが勝手について来てくれる様子を見ているとホント人気者だなって思う。注目を浴びて、それに反応が帰って来る。それが当たり前。なんかちょっと……
羨ましい、のかな。いや、ずっと誰かに見られてんのは嫌だな。うん、却下。
「このまま真っ直ぐいくのが一番都会的な場所が多いかな。信号渡って少し歩くとグリーンっていうショッピングモールがあって、それを通り過ぎるとバーとかもあるし。途中にはチェーン店の路面店もちょこちょこあるし。ただこれは個人的には後回しでもいっかな。先に横道回ろうか」
横道にそれると古着屋さんが多めに並ぶ。この通りはきれい目のファッションの服屋さんは存在しない。途中にはお肉屋さんやおもちゃ屋さんも立ち並ぶ。あとは二階に店を構える美味しい蕎麦屋さんもある。蕎麦茶が美味しいです。
「でも古着屋さんというか、こういうお店って変わった小物と出会えたりするから面白いと思うんだ」
あ、このリング。ナースモチーフだ。珍しい。
「まーそうだな。好き嫌いはあるだろうけどな。こういう店」
と可愛いカットソーを手に取る宮。けど正直皆抵抗ないようでよかった。私こういう店入るの好きなんだよね。自分が着ている服のテイストとは違うけど。香川に来ないとこういう店入んないけど。
「……確かに。ここは新品の服が多いからそうでもないけど。古着が多いと匂いも気になる人も居るよね」
篠崎さんが熱心に服を見ている。きっちり店の端から端まで……。なんでもコーディネート次第だもんな。はずしアイテムとして使うってのもありだし。上野君はこういう場所は新鮮なようで、服よりも店の雰囲気を楽しんでいるようだ。宮は案外慣れてるよね、こういう店よく来るの?
「わりと来るな、こういう店。けっこう安いし」
ま、奏は来ないと思うけど。きれい目な格好が多いし、と言う。確かにかっちりした格好で、こういうお店には置いてなさそうな服だ。ラフさはあるけど上品さは残る服。
「ふぅん。あ、このワンピレトロで可愛い」
けど、可愛すぎないかな。あんまりスカート履かないんだよな、制服以外。
「試着すれば?」
「え……。うーん、でも…なぁ」
と少し躊躇った私に。
「多分この色似合うと思うぜ。着てみれば?」
なんて軽く言う。こういうことさらっと言えるのが……なんかもう、な。
試着室に入ってとりあえず着てみる。ヤバイ。やっぱりこの服好きだなぁ……と思いつつ確かに意外とこの色は映えるのか、と新鮮な気持ちになる。
「……可愛いな、この服」
でもこの服恥ずかしがらずに着れるのかな、普段。
「おい、着れたか?」
え、試着室の前にいんの? 見せなきゃダメなのか……と慌てるが、そうしててもしょうがないので腹をくくってカーテンをそっと引いて、顔だけを外に出す。
「何で出ない」
「あ……うん。こんな感じ」
と全身を宮に見せた。珍しい色合いの花柄のワンピース。子供っぽくなくて可愛い。
「へー似合うじゃん。サイズも問題ないな」
「そうかな……」
確かにサイズも問題なし。丈も短くないのもあり難い。その場で軽く回って後ろ姿も確認してみる。
「マジマジ。似合う似合う」
とにこにこ人懐っこい笑顔で笑う。ほんとにもう、ね。宮ってさ……。
「ええ、よくお似合いです。お客様」
と通りすがった店員さんも褒めてくれる。急に第三者が現れてギョッとする。
「あ、じゃあこれ買います」
けどたまにはこういう服もいいかな、と思って店員さんにワンピースを差し出した。
「まいど。他にも見られますか?」
「そうですね、もう少し見てもいいですか」
どうぞどうぞ、ご遠慮なくと返事を帰されたので宮と試着室を後にする。
「………。」
「何、俺のことじっと見て」
「いや、なんでもない」
試着室を出ると、上野君と篠崎さんが熱心にどっちの方がいいか検討している姿が見える。篠崎さんてやっぱりお洒落さんだよね。自分に似合うもの分かってるし、私も服は好きだけど流行までは気にしない。流行を押さえた上でっていうのは正直メンドクサイ。似合っていればいいや、って感じだ。今期の流行の色にアイテム。……それを自然に取り入れる様に感心する。
それに可愛い系の彼女だったら辛目の服でも雰囲気が硬くなりすぎなくていいだろうなあって思う。
「……あ」
「なんかいいの見つかった?」
「うん、これ篠崎さんに似合いそうだなって思ったんだけど」
薦めても嫌な顔されないだろうか。自分の服よりも他の人の服のほうが客観的に見える分こういうの見つけやすい気がする。こういうのは可愛いけど私には似合わないな。
「あぁ、何かそんな感じ。似合いそうだな」
「だよね」
さて、どうしよう。
「なー篠崎。これお前に似合いそうだってさ」
……悩んでいる暇もなく宮が特攻した。オイ……。
「……どれ」
私と宮の顔を見比べてから私の持っている服の傍による。そして手にとってうーんと考え込む。
「……確かに、可愛いわね。これ」
気に入ったようだ。
「上野君。そっちのかしてもらっていいかな? これも合わせて試着してくるね」
じゃねーと手を振って試着室に向かう。行動も早い。上野君もうんうん頷く。なんだかいつのまにか親密度が上がっているようだ。
「上野君、篠崎さんと仲良くなった?」
「……みたいだな。ま、よかったんじゃね」
篠崎さんが試着している間に、ブレスレットとロングスカートを足してお会計する。
「……女子ってやっぱ服よく買うよな」
「宮もジャケット買ったじゃん」
「おう、だって格好よかったし」
確かに似合ってたけどね。やっぱり男の子の方が似合う服だと思うとちょっと悔しい。あのジャケット私が最初に目を付けたのに。
「けど篠崎の買う量のほうがすごいか」
「……ですね」
もう既に篠崎さんは大きい袋二つ。私と宮は中くらいの袋一つ。
……女子のお洒落にかける情熱ってすごいなぁ。
さくらんぼ餅って分かるかな……駄菓子なんですが。餅っていうより、グミに近いちんまいやつで、沢山入ってるやつなんだけど。ミックス餅が一番よく食べました。
とサブタイトルにつける駄菓子。ですがメジャーじゃないと伝わるか不安になります。なので爪楊枝つけるか悩みました。




