よっちゃんいか
あのあとメールで大まかな計画をメールで送ってそれに対して質問を受け付ける形で色々説明した。
これもしかして宮と遊びに行ったって摘発するための証拠になるんじゃないかな、と思ったが。
グループのなかに篠崎さんも入ってるので告げ口すれば自分も道連れなので気にすることないな、という結論に至った。
うん、あとは香川に行ったときのこと……。
アレが邪魔になりそうになったら。そん時はそん時で対処しよう。
今色々考えてもしょうがないし、とぎゅっとトランクに荷物を詰めてため息をついた。
コロコロのキャリーバックを見に従え駅の改札口の柱の前にそっと立って身だしなみをそっと整えた。一応10分前についたけど。他の人はもうついてるかな……?と辺りを見回した。
あ、宮いる。篠崎さんも。アレ? 上野君は……?
駅の南口が一番バスの乗り場から近いので待ち合わせ場所にしたのだが、やっぱり普段使う駅とはいえ東か、西か、南か北かなんて気にしないのか役一名ちょっと迷った方がいらっしゃったが普通に切符を買うことができた。早めに時間を設定しておいてよかった……
ちなみにバス乗り場へ行くにはホテルへの連絡通路を使うのだが、これはいとこに教えてもらった。
前はもう1個先のバス停まで歩いていたのですごく楽になった。こんなところにあったなんて……と関心しきりだ。そして途中に高島屋のVIP入り口も通ったりする。宮は「別世界だな。てかホントにあったんだ」とびっくりしていた。まったくである。大金持ちさんのところには店から出向くってことなんしょうね。
チケットを私が代表して買ったので、それを三人に手渡した。
「なくしちゃダメだよ。最後降りるときに確認するから」
「「はーい」」「おう、てかなんか引率の先生みたいになってきてんな」
……確かに。
席順はバスのチケットに振られたとおりであり、ここは最初の駅から次々他の停留所で人を拾ってくので席は自由に変わることはできなかったりする。
なので四人でもめることなく座れてホッとした。
もし空いているときは話は別だが。今日はこのとおり週末なので多少混んでいる。
窓側の席に私。その隣に宮。宮の後ろが上野くん。通路を挟んで宮の隣が篠崎さん。
私と篠崎さんの間には宮がいて、梓にとっては格好の盾となっている。
私は個人的に車掌さんにお礼を言いたい気分だった……。大感謝だ。
「俺、香川行くの初めて」「私も私もー」「………おー。あ、ポテチちょーだい」
私以外の3人は旅ということで朝っぱらから元気だ。他の人に迷惑だから声なるべく落としてね、と注意するといい返事が返ってくる。……まぁとりあえず注意したしいっかとふっと息をついた。
そして私はというとすぐにイヤホンを耳に付けて目をつぶって窓に頭をコツンと当てて寝る態勢に入った、のだが。
一方……その梓の隣。
あ、ていうか寝るの早すぎ。んん?口もとが緩んでる。一体何聞いてんだ。
よっぽどお気に入りなのか……。ていうか俺置いてけぼりか!? つーか人身御供か?
今まで振りまいてた愛想どこいったー!?
と篠崎さんと奏とともに残され内心絶叫した宮であった。
そしてすぐに梓の肩に手をかけ耳元で「おーい。ちょいちょい俺置いてけぼりか」とぼやいた。
瞬間パッと梓が目を見開く。するとポンッと宮の両肩に手を置いて言った。まだ完全に寝付いたわけではなかったようである。
「朝は眠いよな?」
それはそうだけど……旅行だしっていうかコレ俺生贄だろ……と項垂れ答える。
「うん、私は眠いんだ」
いや、俺の話聞いてるか? と一応言ってみる。
「というわけで起こすなよ? てかお前も寝ろ。あとでいっぱい遊んでやる」
上から目線ですか。いやいやいや……。というわけにつながってねーよ。
とはいえ朝は梓は基本的に恐いので今回ばかりはそっとしておくことにした。
遊んでくれるってどんな風にだろ、ていうかまるで犬とかペットに対する物言いみたいだ、つーか何様…とは宮は思ったが忘れることにした。
「あれ、中原さん寝ちゃった? 早いねー」
「あぁ、朝早く起きて荷物チェックしてたから眠いんだってさ。多分バス無事乗れたから気ぃ抜けたんだろ」
「そっか、中原にほとんど俺らまかせてるからな。ちょっと悪いな」
「そこまで気にすることねぇよ。せいぜい楽しくなるといいな、ぐらいしか考えてないから、コイツ」
「う、うん。そうだね寝かせてあげよっか。」
その後俺達を乗せたバスは高速に乗り、トランプで馬場抜きをして、しかし香川って何があるんだろ…?なんて話をした。ていうか、どうやって俺と梓が仲良くなったかだの根掘り葉掘り聞かれ、俺が追いかけまくったエピソードに奏は納得。篠崎は意外そうに目を丸くした。
話が一段落して少しの静寂が流れる。
そしてふと、横にいる梓を見る。イヤホンはつけっ放しですうすうと寝息を立てている。
音かけながらよく眠れるな、と感心する。
悪戯心がわいて彼女の片方のイヤホンを取って自分の耳に当てる。コーヒーを出すような喫茶店で流れるようなジャズだった。トランペットやピアノの音が聞こえる。……つくづく最近の流行を気にしないやつである。寝るにはいいかもしれないが。
俺も昨日の夜急遽荷物を詰めたから眠いかも。……俺も寝よう。
「……俺も寝るわ。オヤスミー」
「えっ。うんオヤスミー」
「おー」
「……。なんか2人だけになっちゃったね」
「だな。俺達も寝るか?」
「あとちょっとだけお話ししたいな」
「そうか。俺もだ。でもまさか……」
「……だ、よ………似合わ……」
Side 梓
肩が重い。と思いつつ目を開けることもなく梓は思った。なんでだろうと疑問を感じ、隣にいるのは宮しか居らんだろと思い出す。……休憩所につくまで放っておこう、ともう一度本格的に睡眠に入った。
バスが止まった。意識がだんだん覚醒して浮上していく。しかしまだ肩の上に顔を乗せた宮は寝ていた。宮にトイレに行かなくていいのか? と聞くも、かすれた寝ぼけ声で「いー」となんとも気の抜ける答えが返ってくる。……ダメだ。これ起きる気ないな。
しょうがないので篠崎さんにコンビニで水を買って来る様に頼んだ。水分がないとバスという空気の入れ替えがあんまりなされない空間にずっといるのはキツイ。彼女が少し嫌そうな顔をする。少しだけザマミロと思った私は小さいかも。
宮を肩に乗せたまま座席にいる。バスの乗車客があらかた出て行ってしまって、残っている人はあと1人か2人というところだ。さっきとは異なり閑散とした雰囲気。
だからなのか余計に時間がゆっくり過ぎていく気がしてどうにも手持ち無沙汰だ。とはいえ暇つぶし用にもってきた文庫本を足の下にある鞄からだそうとしたら宮の頭が落ちる。
それはマズイな……と思いつつも宮を肩に乗せたままクラスメイトとバスに乗車した状態で。しかも何もせずにじっとしているというのは気がごりごりと削られそうである。
――そうだ、落としてしまえばいい。
と思い立ってそっと宮の頭に手をかけてそっとヒザに落とした。これでいっか。
屈んで本を鞄から取り出した。そのときヒザがゆれて「ん、……」と宮がむずがった。
上野君と篠崎さんが休憩を終えて一緒に帰ってきた。仲いいな。
私の膝の上をみて私の顔をみて上野君は喜色を浮かべ、篠崎さんは眉を吊り上げた様子が対照的であった。
なにしてっ……と癇癪声を上げかけた彼女に寝ている宮を示し、静にと目で睨みつける。
これくらいの報復は可愛いもんだろ。ずっとピリピリした敵意向けられてんだから。目が合うたびいちいち睨みつけられるとか結構来るんだからな。それ以上何もいうこともなく二人は席にもどった。
後ろの席からは目をキラキラさせた上野君がときどき前の席を覗いてくるというのは予想外だったが。
本が中盤に差し掛かった頃。物語の中では色々な謎が解けかけてきてどうにも気になるワードが出揃う。
だけどどうにも彼らの狙いがわからなくて、ううん…とうなっていると、コカコーラの大きな看板が見えた。その後栗林公園を経由。次が降車する駅なので私は宮を起こしにかかった。
「起きろ……でなきゃ。」何したらいいんだろう。鼻でもつまむ?
「……も、ついた?」
「すぐつく」から早く起きろ。あぁ、それと忘れ物ないかチェックしろよ。チケットも出しとけ。
「らじゃー。ん……」
さわさわと腰に宮の手が回り頬ずりされる。私は容赦なく肘を宮の脳天に落とした。
ゴツっといい音がする。
「……痛い」
「自業自得だ。目覚めたか?」
「……へーい」(膝に俺乗せたの梓の癖に)
バスを乗車すると、冷房が聞いていた車内とはちがってアスファルトからの熱気を否応なく受ける。
「あついなー」同感だ。私は溶ける。
ちなみに梓さんが聞いていたアルバムはHere's to You Charlie Brown: 50 Great Years
スヌーピーのサントラも入ったCDです。




