幸福の下には、後悔が埋まっている メアリー視点
「私がいなければ、貴女は幸せになれたかもしれない」
自分が幸福であると感じるたびに、心の底で何かが囁く。
『それは、他人から奪いとったものだ』
『他人を不幸にして手に入れた幸せは、本当に幸せと言えるのか?』
……私は、未だに答えを探している。
ーーー
日も高くなったお昼時。お弁当を両手で持って、中庭へと顔をのぞかせる。
「あら、デービット様! 休憩中ですか?」
「あぁ。お前はまた迷子か?」
「違います。……3回連続迷子になってましたが、それはたまたまです」
迷子になる度にデービット様が現れて、私を助けて去っていく。これまで会った時は毎回そうだった。何度もそれが重なると、なんとなく、偶然とは思えなくて。
ーーー運命、かもしれないなんて。
「……先日、リリア様とデービット様の話をしました。『デービット様の婚約者で幸せです』って言ってて。少し、羨ましかったです。あんな風に一途に愛せるなんて、中々ありませんもの」
もしこれが運命でも、彼にはすでに婚約者がいる。それは、紛れもない事実で。そう思うたびに、胸がざわめいて仕方なかった。
「リリアは僕のことばかり考えてるからな。一途なのはいいことだが、過保護で若干息苦しい」
想定外の回答に、きょとんとする。
「そう、なのですか?」
「あぁ。すぐに僕のことを子供扱いするんだ。あと、僕の意見は全て肯定する。リリアが僕に言い返したことは一度もない」
呆れたよう目を細めるデービット様。
そこまで来るともはや依存にも近い何かを感じる。正直、あまりいい関係とは思えない。
「……たまに、リリアが何を考えてるのかわからなくて怖い時がある」
そう言ったデービット様の顔は、どことなく寂しそうで。
ーーーもし私が婚約者なら、こんな顔させないのに。
そんな言葉が頭をよぎったが、それを振り払うように眉間を抑える。
メアリー、流石に失礼よ。落ち着きなさい。
「きっと、リリア様はデービット様がいてくれるだけで嬉しいんですよ」
「それは理解している。だが……夫婦になるならば、話し合いも大切だからな」
『夫婦』という言葉に、ずきりと胸が痛んだ。
なんとなくデービット様の顔が見辛くて、俯いて視線を逸らす。
「それならば、リリア様に直接お話してみては? 聡明な方ですし、きっとわかってくれますよ」
「あぁ、そうするよ。……リリアももう少し意見を言ってくれるようになればいいんだが」
「人に何かを言うのって、苦手な方も多いですから」
どうしても、得手不得手があるものだ。リリア様は口下手な方ではないけれど、デービット様の前では緊張するのかもしれない。
「確かにそうだ。第二王子に向かって『仕事をサボるのは良くないと思います』とまで言える人間、中々いないだろうな」
「そっ、それはデービット様が『公務が嫌で散歩することが多いから、いつも会うのかも』なんていうからですよ!」
視界の端で、デービット様の肩がわずかに揺れた。
「メアリーは真面目だな。……お前に話してよかった、リリアと話し合ってみるよ」
そう言ったデービット様の声は、先ほどまでの重さが払拭されていて。真っ直ぐ響くその声が、耳に心地よかった。
「お役に立てたなら、何よりです」
心がふわりと温かくなる。
この人の隣にいるべきは、私ではない。そんなことはわかってる。
わかってるけれど……もし、そんな未来が来たら、なんて。そう、思わずにはいられなかった。
その願いが、あの人を不幸にするとも知らないで。
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