恋敵候補と、迫り上がる嫉妬心 リリア視点
「人のものに手を出すなんて、いいご趣味をお持ちですのね」
本当はあの時そう言ってやりたかった。でも言葉に出したら、全て崩れてしまいそうで。
結局崩れるのなら言えばよかったなんて。今更後悔しても、遅いのに。
ーーー
「リリア様、書類の確認をお願いします」
「ありがとう、メアリーさん。仕事が早くて、とても新人だとは思えないわね」
「そんなこと……リリア様の教え方が上手なので、上達も早いみたいです」
「ふふ、そう言ってもらえると教え甲斐があるわ」
書類に目を通しながら、他愛もない会話をする。
特にミスはなさそうね。優秀な後輩がいるとこちらとしても心強いわ。
「そういえば……この前、デービット殿下にお会いしたんです。リリア様の婚約者、なんですよね?」
紙を捲る手が、ぴたりと止まる。
「え、えぇ……そうですわ」
声が、微かに震る。嫌な予感が胸の中を掻き乱した。
「この前、迷子になっていたところを助けてもらって……お優しい方ですね。リリア様が、羨ましいです」
伏せられた目と、ほんのりと頬にさす紅。温かなそれとは対照的に、私の心に冷たい風が吹き荒れる。
ーーーいえ、デービット様は素敵な方ですもの。好意を持つのは当然ですわ。それにこの前『そんな簡単に揺らがない』と仰っていたもの。それすら信じられないなら、婚約者なんて名乗れませんわ……!
喉まで迫り上がる不快感を飲み下して、口角を無理矢理押し上げる。
「えぇ、素敵な方でしょう。私、あの方の婚約者でとても幸せですわ」
でてきたのは、どことなく張り詰めた声だった。こんなことさえ取り繕えない自分に嫌気がさす。
デービット様はこの子と出会って、何を思ったのだろう。自分にはなくて、彼女は持っている何か。もしもそれがデービット様の心を掴むことがあったならば。
そう考えるだけで、自分でもゾッとするようなどす黒い悪意が心の底から這い上がってくる。
……やめなさいリリア、はしたないわ。
そう自分に言い聞かせる。しかし、デービット様とメアリーさんが出会ったことは、紛れもない事実で。
そう考える度に、暗く冷たい何かが、胸の奥を蝕んでやまなかった。
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