【過去回】去っていくひまわり ミカエル視点
お前が俺の隣にいるのは、当たり前のことだった。その当たり前が唐突に終わるなんて、考えたこともなかったんだ。
ーーー
大勢の人が行き交うにぎやかなパーティー会場。その近くの閑静な庭園に俺たちはいた。
「ねぇ、ミカ……知らない人ばっかりで怖いよ、私戻りたくない……」
リリアは俺の服の裾を引きながら怯えた目で俺を見上げる。
「怖いなら無理する必要ねぇよ。このまま散歩してようぜ」
記憶にないほど昔から、こうやって2人で歩んできた。それはきっとこれからも変わらない。親父達はよく『このまま結婚かな』なんて話をしている。
……リリアのことは嫌いじゃないし、悪い気はしない。
「いつもありがと、ミカ。……私もそろそろ1人で回れるようにならないといけないのに」
「別に俺がいるからいいだろ」
「それはそうなんだけど……」
リリアは困ったように肩をひそめ、視線を噴水へ向ける。
その瞬間、まるで時が止まったかのようにぴたりとリリアが動かなくなった。
「リリア?」
リリアの視線を追った先にいたのは、1人の少年。サラサラと銀髪を揺らし佇むその姿は、まるで絵画のようだった。
「きれい……」
リリアは頬を赤らめ、熱のこもった声でそう呟く。
ーーーなんだよ、それ
ぞわりと、足元から何かが這い上がってくる。
そんな顔も、声も……見たことねぇ。
11年間共に過ごして、なんでも知ってるつもりだった。リリアのことは、全部。……でもそれは、あくまで"俺に見せる範囲"での話なんだと、俺はこの時思い知った。
ふらふらと吸い寄せられるように、リリアはやつに近づいていく。
あの、人見知りのリリアが。
心臓が、ぎゅっと掴まれたようだった。血の気が引く、手が震える。ずっと俺を見つめていたいちごのような赤い瞳が、いまは知らない男に向けられてる。まるで世界が反転したような気分だった。
リリアは数歩歩いてから、ふと立ち止まってこちらを振り返る。その顔は、熱を出した時のように真っ赤に染まっていて。
「み、ミカ……どうしましょう、私……えっと……あの人と、お話ししたいのだけれど……何を言っていいのか、わからなくて」
耳を溶かすような、甘い声。知らず知らずに噛み締めた奥歯が、ギリギリと音を立てる。
そいつと話す必要なんてない。お前には俺だけいればいいだろ。
喉まで迫り上がる醜い言葉達を、俺はぐっと飲み込んだ。
「……それなら、一緒に考えればいい。俺が、いるだろ」
今まで何度も言ったことのあるそのセリフ。そのはずなのに、声が震えて仕方なかった。
リリアはぱぁっと顔を輝かせ、俺の手を取る。
「ありがとう、ミカ!」
その顔は、まるで美しいひまわりの花のようで。
あぁ、これが初恋か。
そう気がついたのは、お前がいなくなった後だった。
お読みいただきありがとうございます!
✨ブクマとリアクションの合計数で番外編公開!✨
合計20→断罪執行前日 リリアとデービット
「僕はただ……お前に、愛して欲しかったんだ……」
彼の言葉は、リリアを繋ぎ止められるのかーーー
次回予告→これは、転生直前のとあるプレイヤーの物語




