…… ―― 、。
タイトルの意味は文章表現における《間》です。
私は音読する事を前提に文章を書いているので、これに非常にこだわります。
「兄貴のオレが言うのもなんだけど、一見の価値あり、だぜ」
上記は自作小説《はじまりの炎》のシェヴィンの科白ですが、意味を伝えるだけなら
「兄貴のオレが言うのもなんだけど一見の価値ありだぜ」
で不都合はなく、わざわざ読点をいれる必要はありません。でも私の頭の中に響いてくるシェヴィンの声は『一見の価値あり』の前後に一瞬の間があります。更に言うなら「だぜ」のところで語尾があがっています。そこでお茶目にウィンクしてる雰囲気かな?
こういう雰囲気を文章で伝えるのってすごく難しいと思います。これが芝居なら役者さんの個性や演出家の腕が光るところなんでしょうけどね。私のヘボ日本語力では頭抱えてのたうちまわるしかない。
読点ひとつとっても「いれるか? いれないか? どこにいれるか?」と悩みはつきない訳です。
でも科白はともかく地の文であまり読点が多いのも鬱陶しいかなと思うので、地の文の読点は最初書いてあってもUPする前に削る事が多かったりします。
ここまで私と同じリズムを強要する事もないか、と。あ、この『……か、と。』みたいな書き方もよく使っている気がします。「訊くだけ無駄、か」「影、ね……」 みたいな。
間といえば「……」と「――」。私の小説にはこれが多いです。
「みっともない……ですよね?」
「失敗を……繰り返す……」
考え、考え、口に出している感じ。
「――まいったな」
「――ずるいですよ、そんなの」
相手の言った言葉にショックを受けて、瞬間呆然とした後、口を開いた感じ。
(充分だ――。あなたはもう充分苦しんできた)
――のところで感極まって、次の言葉を探すのに手間取った感じ。
「違う! 僕は……」
話し始めた時には頭の中にちゃんと科白があったはずなのに、口を開いたとたん何を言えばいいかわからなくなってしまった。
をそれぞれ表しているつもりなんですが、前後関係もあるから個々の科白だけ抜き出してもわかってもらえないかなァ(ってゆーか、小説読んでもらっても伝わってなかったりして)
あと今まで話題にしてきた間とはちょっと違うけど……と――を使う事で追加すると
「馬鹿な事を……!」
これに続くのは「したもんだ」とか「するんじゃない」あるいは「言うな」とかになるのは想像してもらえるんじゃないかな? こんな風に私のキャラ達は言葉をはしょる事が多いんですよ。
「――で?」(「それで、これからどうするんだ?」)とか、
「おまえは一体……」(「何者なんだ?」「何がしたいんだ?」)とか、
「ったく……」(「まったく、何を考えてるんだおまえは?」とか「まったく、やってらんないぜ」とか色々)。
もうひとつ間を表すもの。スペース(空白)と改行。
くらい
つめたい
おもい
で始まる自作小説《奈落》の冒頭部分は間だらけです。
「くらい」「つめたい」「おもい」それぞれの間、実時間で何十日か、あるいは数年ある感じを伝えたかったので最初三行ずつあけて書いて、でも冒頭でそれはあんまりかな、と一行おきに訂正しました。
書籍なら一ページの真ん中に一行ずつにしたいくらいですが。
昔々、オリジナルの異世界小説を自前のホームページで連載していた時に書いた短文です。
ホームページ掲載時には以下の文章も一緒でした。
思いっきり尻切れトンボですが、どうして長々とこんな事を説明したかって言うと、この無理矢理読者に《間》を感じさせようとする試みを『鬱陶しい』と感じる方もいるんじゃないか、という迷いもあるから。
わざわざこんな風に書く事で自分がやっている事の意味を再認識して「大丈夫、アンタはちゃんと考えてやってるんだ。その努力をわかってくれる人だっているさ」と自分を励ます必要があったから、かな?