プロローグ
初投稿、処女作品ですので温かい目で見ていただければ幸いです。
「おのれ、勇者ッ!!我が部下、我が家族、我が同胞の仇!!今ここで貴様を明けぬ闇の彼方に葬り去ってやる!!!」
「すまないが、俺はここで死ぬわけにはいかない。全力で討たせてもらうぞ」
瞬間、夜をも呑み込む深い闇と光さえ貫く閃光が混じり合った。訪れる一瞬の静寂。直後広がったのは最終戦場であった魔王城すら半壊させるほどの衝撃波。ぶつかり合って全てを飲み込んだ二つの光が霧散した後、その場に立っていたのは少々目つきの悪い1人の青年だけであった。
***
俺、篠崎慎がエレルザーゴ王国へ勇者として召喚されてからおよそ3年が経った。最初は身に覚えのないところへ連れ去られ訳もわからないまま魔王だの勇者だの騒がれて、平凡な生活を送っていた身からすると幻覚でも見ているようだった。実際、金欠すぎて大学生活とアルバイトの複数掛け持ちによる過労で猫がピンクの像に跨ってタバコをふかしている、夢だか幻だかわからないものを見てしまったからこれは幻覚だ、とすんなり考えられたんだろう。
まぁ、実際は本物の異世界で魔王とやらを倒すことになってしまったのだが。魔王を倒すためには勿論レベリングが必要だし、何よりこの世界の人たちに甚大な被害をもたらしている魔物や魔族を退治しなければならない。元の世界では生き物どころか虫の一匹すらまともに駆除出来なかった俺にとって、飛び散る肉片と流れる真っ赤な血溜まりを己が手で生み出したという現実はとんでもない精神的苦痛であった。初めは一匹殺すごとに吐いては悪夢を見ての繰り返しで一睡もできず、スタミナポーションで無理やり体力を回復しどうにかこうにか戦っている状態だった。
しかし悲しいかな、人間とは適応する生き物である。半年もする頃には命を奪う罪悪感より、いかに効率的に多くの魔物や魔族を殺せるのかを考えるようになっていた。その日々を思い返すとなんとも言えない気持ちになる。俺はいつの間にこんなに非道な人間になったのだろう。血に塗れた両の手を握っては開いてを繰り返し、戦いの最中に俺た剣を拾いながら後ろで倒れている少女を見やる。
「悪いな。俺個人としては恨みはないのだがお前を倒さなければ俺は元の世界に帰れないんだ。魔王、シアン・ルクフェリス。お前とお前の同胞の死は俺が一生背負ってやる」
半壊し、壁がなくなった城は風通しがよく、さらりと柔らかな風が頬を撫でた。
「こんな穏やかな風は今は感じたくなかったなァ……」
悪を滅ぼしたはずが、俺の心は未だ嵐のように荒んでいた。




