四十一話 殻を破る衣織ちゃん
あれから衣織ちゃんと適当なファミレスに入り、二人で昼食を食べた。
その後は映画を見に行く事にしたのだが、お目当ての映画は上映まで時間があるので、適当にブラブラとすることにした。
「それにしても、お兄ちゃんって罪作りだね」
「え?」
衣織ちゃんが呆れたような、そうでもないような感じで告げてきた言葉の意図を汲みかねる。
「あの人…端田さんだっけ、絶対お兄ちゃんに惚れてそう」
「それは勘弁して欲しい、さすがにあんな事があったってのに惚れられてもな」
まじで困るだけだ、やめて欲しい。
「でもあの感じはそれっぽかったよ、なんだっけ?変な男に捕まったとか何とか」
「まぁそんな感じだね」
一応衣織ちゃんにも事のあらましを話してある。
「そこでお兄ちゃんが颯爽と助けてくれたら、そりゃ惚れるって。仕方ないよ」
「えぇ…」
なんとも無理やりじゃありゃせんか?
だってあの状況なら誰だって助けに行くでしょーよ。
「小春ちゃんといい、あの人といい…ちょっと可哀想かもね。とくに小春ちゃんは」
「小春さんに関しては諦める気がないって本人が言ってたからなぁ…」
きっぱり振ってもあの調子じゃどうにもならない。どーしろってんじゃい!
「むむむ、このままじゃお兄ちゃんのお嫁さんがどんどん増えちゃうよ、私とお姉ちゃんだけにしてもらわないと」
「俺もそれが望みなんだけどね」
如何せんそう簡単には行かんのですよ。
まぁ端田に関してはイマイチ実感ないけどね。
「こうなったらもっと私とお姉ちゃんとイチャイチャしなくちゃねー♪」
そう言った衣織ちゃんは人目も憚らず抱き着いてキスをしてくる。めっちゃかわええ。
「お兄ちゃんは、誰にも渡さないから♪」
そう言った衣織ちゃんは、今までに見たことがないほどに妖艶だった。
思わず見とれてしまうほどに。
デートが終わり、今は家にいる。
「そういえば私ゲームとかあんまりやらないなぁ…」
「まぁ無理してやるもんじゃないだろ、興味があれば触ってみればいいさ」
夕飯を食べ、二人でお風呂に入った俺たちは、部屋でゆっくりしていた。
思えば衣織ちゃんとはゲームをしたことがない。
「じゃあ、お兄ちゃんがいつもやってるゲーム見せてよ!」
「それでいいの?一緒にやれるやつあるけど」
「そこはお任せ!お兄ちゃんの気分で!」
何そのシェフの気まぐれサラダみたいなノリ。
というわけで適当なソフトを手に取って、ゲーム機の電源を入れる。前に栞とやったやつだね。
「まずはお兄ちゃんのプレイを見よっかな♪」
衣織ちゃんはそう言って俺の膝の上に乗っかった。ちなみに俺はベッドの上だ。
しかし…。
「んふふ♪」
衣織ちゃんは凄く…積極的になってしまった。
「あのぉ…衣織さん?」
「なぁにぃ?お兄ちゃん?」
彼女はニヨニヨとしながら俺の膝上…というには深く座った場所で、グリグリとお尻を押し付けてくる。なんだか凄くセクシーになったなぁ…。
「…あんまりそんなことしてると、俺も手を出しちゃうよ?」
「アハ♪お兄ちゃんってば今更ー♪」
そう言って彼女は俺を押し倒す。
なんだかんだ我慢してたのだろう事は俺もよく知っている。
きっとそれが理由なのだろうが、凄く積極的になった衣織ちゃんと俺は、その関係が二歩も散歩も進んだのだった。
そうして次の日の朝。
「んぅ…お兄ちゃ…むぅ…」
「天使やなぁ…」
俺の隣で気持ち良さそうに寝ている彼女の寝顔を見た俺はそう独り言ちる。
その綺麗な頬をぷにぷにと突つくと彼女はモゾモゾと動いて俺の胸に頭を押し付けてきた。
「…ん…お兄ちゃん…?」
「おっ、おはよう衣織ちゃん」
衣織ちゃんは寝ぼけ眼を擦っているが、すぐにニコッと笑った。
今日も今日でのんびりの過ごした俺たちは、いつもよりベッタリとしていた。
「衣織ちゃん?これからご飯作るから離れておくれやす」
「むぅ…離れたくなぁいー」
「あぁ可愛い」
なんだこの子、思わず本音が漏れてしまうぞ。
いつもより甘えん坊になってしまった彼女に心を撃ち抜かれたが、ここは心を鬼にしなければ!
「じゃあ今日は出前でも取るか」
そうだよ!ここは出前でも頼んでしまえ!
「え、じゃあ離れるね。お兄ちゃんの料理が食べたいから我儘言わない」
「そうか、そういう事なら」
どうやら俺の料理の方が出前より好きみたい。
嬉しいこと言ってくれるねぇ!
「それに出前って高いからね、無駄遣いはよくないもん」
「なんて良い子なんだ」
衣織ちゃんは立派である。撫でてあげようね。
彼女の頭を撫でてやると気持ち良さそうに目を細めた。




