三十二話 両親ブチギレ
「どうしようか、少なくとも端田さんの言い分は潰しにくいよ」
そう始めたのは優親、確かに彼女は教員の間でも信頼があるようだ。
「でも、あれだけおかしなこと言ってるんだもん、せめて服の繊維とか調べて貰えれば好透君の無実が分かるんじゃない?」
確かに小春の言う通りだが、そもそもソレが大きな課題なのだ。
調べて貰うまでの壁が高すぎる。
「許せない…好透にあんな事した挙句に嘘まで…」
栞は怒り心頭と言った感じだ。
「そう言えば、好透は親に連絡するって言われたんだよね?」
「だな、何もビビる事なんかないから勝手にしてくれって所だが」
ウチの両親が聞いたら確実にブチギレるだろうな。
「少なくとも私たちは味方だし、高畠君と佐藤さんも信じてくれてると思うけど…」
問題は教員たちだ。生徒指導の教員、葛本は俺を一方的に責め立てていたが他はどうだろうか。
俺が端田を襲おうとしたから、抵抗した彼女に突き飛ばされ怪我をした。
そういう筋書きだが、物事には信憑性というものがある。
俺と端田、つまり男と女がどちらも同じだけの信用があるとすれば、女側に味方する人は多そうだが、今回の件は端田の服を調べて貰えば済む…とはいえ明日になって服を変えられればおしまいだ…なんならもう着替えてるかもしれない。
あまり状況は良くないな。
結局 良い案が浮かばず、三人は帰ることになった。
どうすればいいのだろうか…。
その夜、父さんから電話が掛かってきた。
学校から連絡があったのだろう。
『もしもし、好透』
「もしもし」
元気そうではあるが、少し声が硬い。
『今日、学校から連絡があったんだけど、女の子に手を出そうとして怪我をしたって』
やはりと言ったところだ、しかし俺はやっていないので素直に答える。
「ハメられたよ、その人に呼び出されたと思ったら言ってくるのは悪口ばかりだから、アホらしくなって離れようと背中を見せたらドン…ってね」
『なにやら階段から落ちたとか…その時気を失ってる間にやられた訳だね』
「そういうこと」
事実は伝えた、後は父さんたち次第だが…。
『わかった、信じよう。お前は昔からやっかみを買うからね、今回もそういうことか。でもなんで女の子からなんだ?』
確かに、普通に考えれば俺は栞と距離が近い上、彼女はモテる。
パッとしない俺が学校のアイドル的存在とベタベタしていたら恨みも買うだろうが…それは基本男子が多いし、それならここまで陰湿なことはしない。
「俺が優親と仲良くしているのが気に入らないんだとよ。自分は振られたのに、どうして俺ばっか仲がいいのかってね。その上 栞とベタベタするなとも言われたよ…ようやく付き合えたのにさ」
俺たちはあくまで平和な日々が過ごせれば良い。
なのにそれを邪魔する者たちがいる…厄介な事だ。
『なに?ふむ…そういうことか、完全に八つ当たりじゃないか』
あっ父さんキレた、俺知らないよ。
すると父さんの電話を奪ったのであろう、母さんの声に切り替わる。
『話は聞いたわ!そういう事なら許せないね、全力で抵抗してやりましょ!』
「そりゃどうやって?やられた証拠もないけど、やってないだなんて悪魔の証明じゃない?」
もしも完全に教員全員が端田の方に付いたらどうしようもない。
『あら、その時は教育委員会に突撃してやればいいじゃない、人の恋路を邪魔するようなヤツには、蹴り飛ばす馬が必要でしょ?』
母さんが恐ろしいことを言うが、その通りである。
『大丈夫よ、私たちが何とかするわ。あなた、すぐに日本に戻りましょう!』
え、そんなにすぐ決めていいの?
仕事は?
『なに、私たちの事なら気にしないで。今は自分の身を心配しなさいね』
「わかった、取り敢えず停学処分になったから、暫くは家にいるよ」
そう言うと母さんの声がぴたりと止まる。
『あら…そんな話聞いてないわね…どういう事かしら?あなた、聞いたわよね』
奥から『あぁ、聞こえたよ』と小さく聞こえてきた。
『その事についてもちゃんと学校と話をしないとね、とにかくすぐに戻るから待っててね、好透!』
「りょーかい、じゃあ気を付けてね」
そう言って電話を切る。
取り敢えず今日起きたことはノートに纏めた。
他三人も同じようにしているはずだ。
何としてでも無実を証明してやる。




