十話 もう一人の幼馴染
「何かあったら言いなよ?栞も、天美君もさ」
そう言ってくれた笹山は、見た目がギャルではあるものの根は真面目な女の子だ。
小学生の頃から俺たちの仲を知っている人物で、よく栞にこういう事を言っているのは知ってるが、俺に言ってきたのは初めてだ。
「ありがとな、笹山さん」
「ありがとね、小春」
仲間は多いほど良い。感謝の気持ちを、伝えることも含めて忘れないようにしないとな。
愛想を尽かされてしまわないように。
「あたしらもだよ!二人の事は応援してるんだから!」
そうだよ!と周りのメンバーもそう言ってくれる。
正直凄く嬉しい。いつもは外野から文句言われてばかりだったからな…。
「もう、好透!」
「え?」
栞が顔を真っ赤にしてる。なんで?
「その顔ダメって言ったじゃん!」
「え…」
確かににやけてたかも…。思わず口元を押さえる。
「……確かに今のはヤバイ…その微笑みはガチ恋ファン増えちゃうよ。天美君」
同じく顔を赤くした笹山が変なことを言ってきた。というか他メンバーも少し顔が赤い。増えるって何?元から誰もいねぇだろやめてくれ。
っていうかファンができるとかなら優親だと思うんだけど…それにさっき言ってたのって微笑んだってことなのね。
さっきもそうだが、にやけてたつもりだった。
「もーダメ!好透は私の!」
そう言った栞は俺の頭を思いっきり抱き締めてきた。柔らかい…幸せ…。
ちなみに先程から俺は栞の席に座っており、彼女は膝上に座っている。
「あはは、ごめんごめん。盗らないから安心してよ栞ぃ」
そう言う笹山の声色は、そこはかとなく寂しそうだった。
そんなこんなでお昼時。
今回は初めて栞の友人達と昼食をとることになった。
ちなみに優親もいるぞ!
「いやー、ホントにラブラブだね」
「そんなんじゃないぞ、俺と栞は幼馴染だからな、家族みたいなもんだ」
栞の友人から言われた言葉にそう返す。今日くらいは言いまくってやろうかしら。
「……本当は?」
横から優親が本音を聞いてきた。
「めちゃめちゃ大好きだが?」
本音を聞かれたのでストレートに返したら優親が吹き出しかけた。
栞は顔を真っ赤にして抱き着いてくるし、笹山含む他メンバーは黄色い声をあげている。
「二人はもう付き合ってるんだよね?」
「いやまだだよ」
笹山の問い掛けに栞が答える。
俺に抱き着いたままの栞が予想してなかったのか皆困惑している。俺もだが行動と発言が全く合っていないからな。
「もう少しだけこの関係がいいかなって、まぁ付き合うまで秒よm…いやなんでもない」
後半ほぼ言ってしまったのでそれを聞いた皆ら安心したように笑った。
「そかそかー、もう少しだけこのままねぇ…」
笹山がニヤニヤしながらからかってくる。勘弁してくれ。
ちなみに栞は顔を真っ赤にして「そっかー、秒読みかー」とボソボソ言っている。聞こえてんぞやめろ恥ずかしい。こら、優親までからかってくるんじゃない。
なんだかんだ優親はもちろん、俺も受け入れてもらえたのでとても楽しい時間を過ごせた。しっかし皆恋バナすっきやなー。
ちなみにABCは立場を失っていた。
どうやら先程クラスのグループチャットにて(俺は入ってないし、その気もない)今日の出来事が皆に知らされたらしい。
まぁ…そうなるな。
学校が終わって相変わらずくっつきながら下校。
その最中、もう一人の幼馴染と出会った。
「お姉ちゃん!お兄ちゃん!」
「あ、衣織。今帰りなんだ」
「そうだよ」
この子は栞の妹、衣織ちゃんである。
姉に似てヤバいくらい可愛い。ちなみに一歳下なので来年俺たちの高校に進学予定らしい。
中学の頃は一緒の学校に通っており、彼女とも必ず手を繋いでいた。
「こんにちは、衣織ちゃん。今日も可愛いな」
衣織ちゃんの頭を撫でると、嬉しそうに目を細めた。
「えへへ、ありがとお兄ちゃん!お兄ちゃんもカッコイイね!」
笑顔が眩しい、癒される。
ちなみに栞はぎゅむぎゅむとナニかを押し付けてくる。どっちかっていうとふわふわかも。
「あ、ありがと。なんか照れるな、そう言われると…」
照れていると衣織ちゃんは、俺の空いている左腕に抱きついてきた。
「お姉ちゃんばっかりずるいから、こっちもーらい!」
両手に花ァァァッ!
これがあれですか、夢見心地ってやつですか。あぁ…柔らかいぃ…。
「嬉しそうだねぇ、好透?」
「そりゃもちろん」
当然の事なので隠すことは無い。
「前から好透って衣織にはあれ、言わないよね」
「だって幼馴染の妹はその限りじゃないからな」
「何理論それ…?」
栞にジト目を向けられた。
なんとなく幼馴染キャラの妹相手の時って、あんまりそういうこと言わないイメージあんじゃん?そう思うの俺だけ?
「お兄ちゃん相変わらずだね」
衣織ちゃんがニコニコとしながらそう言った。まぁいつも通りなのでね!
「そういえば、今日お姉ちゃん、お兄ちゃんちにお泊まりに行くんだっけ?」
「そうだよ、月曜までお泊まりに行ってくるね」
何故かドヤ顔の栞、妹相手にマウントを取ろうとするな。
「羨ましいなぁ。ねぇお兄ちゃん、今度私も行っていい?」
「いいよ、おいで」
衣織ちゃんも大歓迎だ。
栞には悪いが正直どちらも蔑ろにしたくない。衣織ちゃんは学年も違うから、栞よりも一緒にいられる時間は少ないからね。
「やった!大好きだよお兄ちゃん!」
「今日からは私だからね、好透!」
二人してぎゅむぎゅむと力を入れてくる。
これはやべぇ。特にアレが。
「あ♪」
衣織ちゃんが色っぽさのある声を上げる。
「なんですか、衣織さん」
嫌な予感がして思わず敬語になってしまった。
「お兄ちゃん、嬉しい?」
「まぁ…」
「元気になってるもんね♪」
伊織ちゃんがとんでもない事を言ってきた。だってしょーがないじゃん!
やっぱ見られるよね…出来ればスルーして欲しかった…。
「えへへ、ごめんねお兄ちゃん♪つい気になっちゃった」
「もう、変なこと言わないの衣織。好透が困ってる」
ほんとーですよ。世の中には触れなくていい事もあるんです。
「えへへ♪反応してくれたから嬉しくって♪」
「まぁ気持ちはわかるけど…」
やめてくれ恥ずかしい。ちょっとした辱めじゃないですかこんなの。顔が熱い。
両手が塞がれているので隠すことも出来ず、二人して俺のソレに視線を向けながら、腕にもぎゅむぎゅむと柔らかいものを押し付けてくるので恥ずかしすぎる時間だった。
恥ずかしすぎて栞の家に着くまで三倍くらい長く感じたぞ勘弁してくれ。まぁ、嫌ってわけじゃないけどさ。




