09 不敵な笑み
数日後、ブライトネスは冒険者ギルドに招集された。
どうやら緊急の依頼があるらしく、メンバーはギルドマスターの部屋に入った。
「よくぞお越しくださいました、ブライトネスの皆様」
「そういうのは良い。それより早く用件を」
「はい」
ブライトネスのメンバーが椅子に座ると、ギルドマスターは今回の依頼の説明を始めた。
「二日前、新しいダンジョンが発見されました。場所はヴェルディスタ王国北東部です」
ギルドマスターは新ダンジョンの発見場所を指差した。
そしてその指が差された場所を見てブライトネスのメンバーは驚愕した。
「ここって…」
「ああ…最近魔族の侵攻が盛んな地域だな」
この世界には魔族という種族が存在する。
主に大陸北部に生息しており、魔人や魔獣に分類される。
彼らは人間と対立しており、もし見つかりでもすればすぐに標的になってしまう。
何より魔族は魔法適性が非常に高く、高ランクの冒険者でもかなり手こずってしまう。
そんな魔族の侵攻が及んでいる地域の新ダンジョン。
どう考えても危険すぎる。
だがそれがわかっていてもブライトネスのリーダーはカッコつけたがってしまうので。
「構わん。全員私が屠ってやろう」
「ゼスト殿下…!!」
ゼストが胸を張って鼻を高くしていると、ギルドマスターは嬉しそうに彼の顔を見上げて。
「お願いします!このダンジョンを攻略してください!!」
「任せろ!!」
というわけで、現在ヴェルディスタ王国の北東部にやって来ている。
そしてギルドマスターの言っていた座標まで辿り着くと、そこには禍々しい魔力を放つダンジョンの入り口があった。
「おお…これはなかなか」
「一体どんなボスモンスターがいるのやら」
ダンジョンの強さはボスモンスターの強さによって決まる。
もしボスモンスターがS級であれば、そのダンジョンはS級に認定される。
そして今回のダンジョンも、確実にS級だろう。
直感的にそう思ってしまうぐらいにダンジョンからは莫大な魔力が溢れ出ていた。
(いやこれ無理だろ…)
少し緊張しつつ足を進めるメンバーに対し、後ろでノアはそのように感じていた。
「おい!早くしろ!お前が先頭を歩くんだよ!!」
「はい、わかりました」
だがノアにそれを伝える権利はなく、ゼストに強く言われて渋々先頭を歩いた。
そしてダンジョンの中に入ると、早速モンスターが目の前に現れた。
「ノア!さっさと倒せ!!」
ゼストは荒々しく声を上げてノアに命令する。
その言葉に従い、ノアはモンスターを倒した。
「おせぇんだよ!さっさと歩け!!」
なんか、今日はゼストからの当たりが強い気がする。
先日のことを根に持っているのだろうか。
(ま、仕方ないか…)
あれだけの無礼を王族に働いたのだから、当然と言われれば当然のことか。
そのように諦めたノアはそれからもモンスターを一人で倒して行った。
そしてダンジョンの深くまで入り、モンスターを一人でを倒していくうちに、ノアはあることを感じ取った。
(おかしいな…モンスターが弱すぎる…)
普通はダンジョンの深層部まで行くとモンスターは強くなるもの。
しかもこのダンジョンはS級に匹敵する。
冷静に考えて、ノア一人でここまで攻略できるはずがないのだ。
(なんかあるな、このダンジョン)
ノアは一層警戒心を強めつつ、ダンジョンを攻略して行った。
そしてダンジョンに入ってから二時間後、早くもブライトネスはボス部屋の扉に辿り着いた。
「思ったより簡単だったな」
「ノア一人でも攻略できるのなら、せいぜいB級のダンジョンだったというわけですね」
「はっ、拍子抜けだな」
ブライトネスのメンバーは油断に油断を重ねつつ、ボス部屋の扉を開けた。
「さーて、どんな雑魚が出てくるのかn__!?」
「「っっ!!!???」」
(やっぱ、おかしいよな)
ボス部屋の中にはS級、いやそれ以上の強さを持つであろうモンスターが姿を現した。
(まさか、ここまでとはなっ)
ノアはボスモンスターを見て少しだけ笑みをこぼした。